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【剣も魔法も】ヘヴィファンタジーTRPGスレ【重厚】 [転載禁止]©2ch.net

1 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 19:29:39.54 0
重厚なファンタジースレです。
楽しく、積極的にいきましょう!

2 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 19:31:26.12 0
キャラクタテンプレート

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:
種族:
職業:
性格:
利き手:
魔法:
特技:
武装1:
武装2:
武装3:
武装4:
防具:
他所持品:
容姿の特徴・風貌:
将来の夢(目標):
簡単なキャラ解説:

3 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 19:41:06.42 0
名前:レヴィ・エリスタ・ヤコンネン
年齢:19
性別:女
身長:189cm
体重:76kg
スリーサイズ:114/79/102
種族:ライカンスロープ(狼人間)
職業:傭兵
性格:丁寧、しかし戦闘中は変わることも
利き手:右
魔法:氷の遠距離系、補助魔法などまんべんなく
特技:グングニル(氷の魔法と投げ槍のあわせ技)
武装1:鋼鉄の長槍
武装2:ジャイアントクロスボウ
武装3:氷魔法の大剣
武装4:鋼鉄のガントレット
防具:鋼鉄の全身鎧、軽装ビキニ鎧、兜
他所持品:薬草、発火剤
容姿の特徴・風貌:狼人間だが、普段はほぼ人間。月を見ると完全に狼と化す。
将来の夢(目標):平和な世界にする。
簡単なキャラ解説:真面目系な狼少女。フル装備に身を固めている。かなり北の方の出身。


【一緒に戦ってくれるお仲間を募集します。】

4 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 19:55:28.70 0
ヘヴィファンタジースレ ルール

・重厚な世界観でファンタジーがしたい方歓迎です!
・世界観は中世風のファンタジー世界です。金属武器と魔法の文化が非常に栄えています。
・キャラをする方は必ずトリップを付け、自己紹介をすること。世界観を投下する方もそうです。
・長く空ける場合、抜ける場合は必ず報告しましょう。(最低限の報告は【】付きで)
・sage進行、荒らしは徹底無視。過度な設定の押しつけ合いなどは自重すべし。
・鎧とか白兵戦や魔法を主流に戦うが、多少は過激な描写もありとします。
・ギスギスするのが好きな方は歓迎。展開によっては容赦はいりません。
・ここがヘヴィファンタジースレである意味を考えてください。
・敵役も募集しています。
・越境は禁止です。
・ストーリーのみを投下できるのはキャラハン、もしくはスレで認められたトリップ付きのGMのみ。
・避難所については現在のところ検討中です。
・ほのぼのした展開よりシリアスに。
・展開は多少速くても構わないが、あくまで空気を読む感じで。

5 :レヴィ ◆6aWspnxs8w :2015/11/10(火) 20:02:09.45 0
導入部分

――ここは…鉄と魔法の王国。
資源には恵まれているが環境は悪く、王国は軍事力をもって今まさに海へと支配地域を伸ばそうとしている…。

あなたたちは今、王国から離れた街にいる。
気候は王都に比べればだいぶ暖かいが、決して豊かな大地ではない。
王国軍の動向、海と豊かな大地はあなたたちにとって非常に興味深い内容だ。

さぁここに武器と魔法はある。戦力は揃った。
酒場が併設された冒険者協会が、スタート地点。
物語が、始まる…――


レヴィは兜を脱ぐと、重厚な鎧のまま酒と飲み物を注文した。
さて、今日はどんなお仲間が来るのだろう。

6 :名無しになりきれ:2015/11/10(火) 20:16:48.92 0
良いぞ
部位破壊とかのシステム取り入れてハクスラ要素入れると尚よし

7 :名無しになりきれ:2015/11/10(火) 21:53:03.40 0
>>1-5
お前ユリウスだろ?

8 :名無しになりきれ:2015/11/10(火) 21:53:45.80 0
http://goo.gl/pDuxLY
http://goo.gl/t41ywY

9 :名無しになりきれ:2015/11/10(火) 22:55:01.11 0
>>7
ユリウスはもっと文才あるし
設定組む才能持ってる

10 :名無しになりきれ:2015/11/11(水) 01:22:14.56 0
こりゃ俺が指揮を取るっきゃねーな!

11 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/11(水) 01:22:18.02 0
名前:ラウテ・パユ
年齢:14歳
性別:女
身長:142cm
体重:37kg
スリーサイズ:74-52-75
種族:人間
職業:吟遊詩人
性格:いつも眠たげではあるが、音楽を奏でるときは人が変わる
利き手:右
魔法:音楽魔法
特技:楽器演奏と歌、踊り
武装1:魔笛「アムドゥスキアス」
武装2:二振一対の聖属性ダガー
武装3:何本あるか分からない投げナイフ
武装4:煙玉数種
防具:簡素で軽さを重視した軽鎧
他所持品:使い込まれたリュート
容姿の特徴・風貌:腰まである銀髪に紅眼、まだあどけない風貌の少女
将来の夢(目標):宮廷楽師
簡単なキャラ解説:旅を続ける吟遊詩人の少女。魔笛の力で動植物を操る事が出来る。

12 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/11(水) 01:23:42.77 0
「聞いたか、リュースの港の話。沖に巨大な海魔が出たんだってよ」

「軍か冒険者が追い払うまで船は出せないらしいな。今度はどれくらい掛かるんだか」

街はざわめいている。不穏な噂と憶測が渦巻いているのを感じた。
この国の王は近年では辺境の開拓と海洋への進出を狙っているらしいが、あまり芳しくないらしい。
辺境はそもそも開拓の旨みがないから開拓されなかった訳だし、海には強大な海魔が住んでいるのだ。
藪を突いて何とやらとはこの事だ。王国軍ははっきり言って無駄に疲弊していた。
辺境に住み着いていた亜人種達の縄張りを荒らすのもまた、その原因のひとつだろう。
国王が開拓だ何だと言い出すまではそこそこ平和だったのが、今じゃ火種だらけだ。
そのうち国が転覆するんじゃないかと、まことしやかに囁かれているのが現状である。

ラウテはそんなざわめきをすり抜けながら、冒険者協会を探して歩いていた。
この街は賑やかだ。フロンティアラインに位置するここでは、様々な文化が入り混じっている。
ここなら楽師としての仕事も捗りそうだし、冒険者向けの案件もあると思われる。
冒険者としてはまだまだ駆け出しのラウテだが、腕に覚えがない訳ではない。
使い手を選ぶ魔笛「アムドゥスキアス」に選ばれるだけあって、そこそこ腕は立つのだ。

「ふあぁ……ねぇおじさん、冒険者協会……どっち?」

などと、欠伸混じりに道を尋ねているのは、もちろん彼女が迷子だからである。
この街は彼女にとって少々賑やか過ぎる。もっと皆のんびりしていればいいのに。
そんなことを思いながら道を尋ねること五回、ようやくラウテは冒険者協会に辿り着いた。
古めかしいスイングドアを通り抜け、彼女はまずカウンターに陣取りマスターに一言。

「……ミルク」

とりあえず喉が渇いていたのだ。もちろん幼い彼女は酒を注文したりはしない。
少なくとも16になるまでは酒を飲んではいけないと、親に諭されているからだ。
そういえば両親が死んで一年、墓があるあの村からはどれだけ離れた事だろう。
幸いにももしもに備え一人で生きていく術は教わっていた。
それを正しく実践出来たのは、彼女が聡明故である。そして、何より音楽の才に秀でていた。
運ばれてきたミルクを一息に飲み干すと、ラウテはマスターに「ここで演奏して良いか?」と尋ねる。
演奏は大した儲けにはならないが、彼女は新しい街では必ず演奏で日銭を稼ぐ事にしている。
より人々の心に響く演奏を会得し、やがては舞台を任される楽師に、そして宮廷楽師にまで上り詰めるのが野望である。
まぁさすがに宮廷楽師は無理にせよ、著名な演奏家になれれば良いと彼女は思っていた。

「んじゃ……一曲弾くね」

背負っていた古いリュートを取り出した瞬間、ラウテの表情が変わった。
色素の薄い彼女の風貌は、まるで深窓の令嬢の如く人々の目に映ったはずだ。
リュートを奏で、小鳥のように澄んだ声で歌い始める。
店内の空気が変わるのが肌にはっきりと感じられる、そんな演奏だった。
やがて演奏が終わり、店内は静まり返る。その静寂を破ったのは、割れんばかりの拍手喝采だ。
美しい演奏と歌声への賛美の言葉を浴びながら、彼女は深々と礼をした。

【よろしくお願いします】

13 :名無しになりきれ:2015/11/11(水) 08:01:15.07 0
オォォォォ…!!

酒場でギリギリと鎧をこすりあわせながら、重装備の冒険者たちがラウテに拍手喝采を送る。
彼らは日頃の戦闘や鍛練で目が血走っている。珍しく軽装の彼女を珍しそうに見ている。

「コフタ…いや、キョ、キョ、キョフテを彼女に」
キョフテと呼ばれるご当地料理がラウテの前に運ばれた。

14 :名無しになりきれ:2015/11/11(水) 08:02:29.38 0
オォォォォ…!!

酒場でギリギリと鎧をこすりあわせながら、重装備の冒険者たちがラウテに拍手喝采を送る。
彼らは日頃の戦闘や鍛練で目が血走っている。珍しく軽装の彼女を珍しそうに見ている。

「コフタ…いや、キョ、キョ、キョフテを彼女に」
キョフテと呼ばれるご当地料理がラウテの前に運ばれた。

15 :名無しになりきれ:2015/11/11(水) 15:09:09.81 0
キョフテ
トルコ料理か

16 :名無しになりきれ:2015/11/12(木) 01:14:02.06 0
支援

17 :名無しになりきれ:2015/11/12(木) 07:59:39.54 0
>>13
カチャ…



バン!
(キョフテ野郎がいきなり射殺される)

これでゴミが一匹減ったな…

18 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/13(金) 01:01:21.84 0
歌も演奏も評判は上々だった。客たちは盛り上がり、ラウテの差し出した箱に銅貨が溜まっていく。
演奏も一区切りつき客席で一息吐いていると、目の前に料理が運ばれた。
湯気を上げる美味しそうなキョフテだ。しかし、こんなものを注文した覚えはない。
ふと横を見ると、彼女の演奏に聞き入っていた客の一人が手を振っていた。

「…おじさんがくれたの? ……ありがと、いただきます」

ラウテはありがたくキョフテを頂くことにした。冷めてしまっては勿体無い。
この地方のキョフテとは挽肉を練り、焼いたものだ。早い話がハンバーグのようなものである。
一口食べると、口の中に肉汁とスパイシーな味と香りが広がる。
お子様味覚なラウテでも、美味しく食べられる料理だ。
彼女は一心に、しかし非常にゆっくりとキョフテを食べる。

そんなのんびりと食事を楽しんでいた最中、一発の銃声が空気を凍らせた。
振り向いてみると、先程キョフテを奢ってくれた冒険者が脳天に銃弾を受け死んでいた。
撃ったのは、何事かぶつぶつと呟きながら立ち尽くす一人の男だった。
よく見ると目が血走り、顔色は青褪めている。薬物中毒の症状だ。
王都で出回っていた新型の薬物が、ここまで流通しているのだ。
薬物を摂取し続けるとやがて精神が崩壊し、狂人となってしまうらしい。
しかしそんなことは一切知らないラウテは、怒りに身を震わせていた。

「いい人だったのに……殺すなんて、ひどい。報いを受けるがいい!」

彼女が腰の革製の筒から取り出したのは、緻密な模様が彫られた白銀の横笛だった。
それを構え、流麗な音色をほんの一節だけ奏でる。
一瞬の静寂。それを破ったのは、店内を黒く染め上げる暴風の群れだった。
否、暴風のように思えたのは、店に飛び込んできた鴉の群れである。
鴉の一群はまるで完璧な統制を持って銃を持った男に襲い掛かり、押し倒す。

「痛い? 苦しい? …でも殺さない。一生後悔して」

襲い掛かられた男の悲鳴が響く。しかし、鴉たちは意に介さず男の全身を突き続ける。
やがて男の顔に群がっていた二羽の鴉が高々と掲げたのは、男の両の眼球だった。
それを床に吐き捨てると、鴉たちは店から潮が引くように出て行った。
すべてはほんのひと時の事だった。圧倒的な現象の前に、冒険者たちは身動きひとつ取れずにいた。
両目を抉られて悶え苦しむ男だけが、その場に残されていた。

「…殺人の現行犯。もう安全…だから、コレはどこに引き渡せはいい…?」

19 :名無しになりきれ:2015/11/13(金) 07:57:26.44 0
>>18
カチャ…


ガチン…




パァン!
(男がかろうじて探り寄せた銃を手に取ると
自分の脳を撃ち自殺)

20 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/13(金) 13:29:39.89 O
名前:ドラクマ・ヴァン=グリオン
年齢:38才
性別:男
身長:190cm
体重:120kg
種族:人間
職業:酒場の用心棒(バウンサー)/元アーマーナイト
性格:豪快
利き手:右手
特技:力づく。痩せ我慢
武装1:はがねのつるぎ
武装2:ナイトランサー
武装3:戦斧(ハルバート)
武装4:戦鎚(ウォーハンマー)
防具: 鋼の兜、鋼の重鎧(ヘヴィアーマー)
他所持品:
容姿の特徴・栗毛、ベビーフェイス、カイゼルヒゲ
風貌:渋い筋肉質の巨漢
将来の夢(目標):明日の飯の種。小銭を手に入れること。
簡単なキャラ解説:脳筋体質。「かかる困難は力づくでぶっ飛ばす!」がモットー。
田舎貴族の出。国軍に属する超重騎士団の一員だったが、嫌味でムカつく上司が天下りで赴任した際にも力づくでぶっ飛ばしてしまった。(物理的)
お陰で国軍を追われ、今では怪しい酒場の用心棒。
かつては妻子もいたようだが、現在は不明。。知り合いの間では例の事件の際に逃げられたのではないかと噂されている。
勘違いしないよう予め言っておくが、ベビーフェイスでカイゼルヒゲのおっさん。アゴヒゲはもじゃもじゃ。
けっして主役を張れるような男ではない。
正義漢ではなく小悪党。
思考回路はむしろ敵サイド。
痩せ我慢が得意で大物ぶったやたら偉そうな口をきく。
何も考えてなどいないので非常に楽観的。
酒をたしなむ。酔うと豪快さが増す。
ただし、酒が切れてくると荒れ狂う難儀なおっさん。
小悪党なので即死ぬ予定。

21 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/13(金) 14:34:43.52 O
吟遊詩人の彼女がジャンキーの両目をえぐり>>19が自決した瞬間店内に野次が飛んだ。

「いいぞー美人のねぇちゃん!」「景気いいねぇ」「やるねぇ!」「俺にもヤらしてー」「ヒューヒュー!」

無責任な賑やかしが数人煽りを入れた。
だが、それだけだった。それだけですぐにまた酒場の賑やかな喧騒が戻ってきた。
それは彼らにとって些細な日常の出来事の範囲内だったからだ。
だが、ゴリゴリと金属が床を擦るような音がしてきたとたん、辺りは瞬く間に静まりかえった。
誰かが唾を飲む声がした。
床をゴリゴリと擦る金属音は暫く続き、店の奥から太い金属の棒を握った巨漢が黒服を纏い現れた。
―――開口一番。

「困りますなぁ吟遊詩人のお嬢さん。店内でこのようなゴミを散らかされたままでは……」

190cmはあろう黒服の巨漢は床を引き摺ってきた自分の倍の長さはある巨大な戦槌(ウォーハンマー)を金属の擦過音をさせながらゆっくりと持ち上げ肩へと背負った。
黒服の巨漢はこの店の用心棒兼雑用係だった。

「掃除するのが大変じゃねーかよっ!」

「フンガッ!」
巨漢は栗色の顎髭を左手小指で弄ると戦槌(ウォーハンマー)を両手で持ち直す。
かざしたハンマーヘッドをゆっくりと頭上で振りかぶる。
すると死体に向かって容赦なく叩きつけた。
固い金属に死体が骨ごと潰され、血や肉片が辺り一面に飛び散る。
巨漢は構わずそのまま二度三度と叩き続け、しまいには死体を元の形も分からぬ程にグシャグシャの肉塊へと代えてしまう。
そしてそのまま箒と塵取りを使い、袋詰めにしてしまった。

―――これには流石に遠巻きで見ていた荒事に馴れてる客たちもひき気味だった。
なぜかといえば、この店の肉には死体のミンチが使われてるという噂が絶えずあったからだ。

【短い間でしょうがよろしくお願いします。ドラクマは出落ちキャラなのですぐに倒されても構いません。
むしろ隙あらばすぐにでも殺っちゃって下さい。】

22 :名無しになりきれ:2015/11/13(金) 18:30:32.25 0
明日にでも支援するわ

23 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/13(金) 21:51:14.42 0
鴉たちに両の目玉を抉られた男は、あろうことか自らの銃で自殺してしまった。
まぁ、ジャンキーな上に目も潰れてしまっては、今後の生活はままならないだろう。
その苦労を思えば、自殺はある意味彼にとって救いだったのかも知れない。

「…つまらない、せっかく奪ってあげたのに」

歓声の中、ラウテはそう呟いてため息をついた。
さて、この死体をどうしようかと思案していると(犬でも召還して食わせようかと悩んでいた)店の奥から一人の巨漢が現れた。
その男は手にした戦槌で死体を肉塊にまで押し潰し、それを片付けてしまった。
なるほど、そういう方法もあるのかとラウテは感心する。非力な彼女では思いもしない方法だったからだ。
男の作業がひと段落付いたところで、彼女は男に声を掛けた。

「店、汚してごめんなさい。……掃除、手伝う」

そう言ってラウテは、置いてあったモップを手に取ると床の血を掃除し始めた。
掃除の手際はあまり良くない。というより、明らかに緩慢だった。
基本的にラウテは音楽と戦闘以外では器用な方ではない。それに、お腹一杯で眠い。
それでも何とか掃除を済ませ、彼女は深々と礼をした。

「…ラウテは、ラウテ。おじさんは?」

そう名を尋ねる。どうやらラウテは巨漢の彼に興味を持った様子だ。
荒くれ者の集う、冒険者協会が擁する酒場の用心棒だ。さぞ腕も立つのだろう。
彼女は冒険者として仕事を引き受ける際は滅多に一人では戦わない。
前線で戦う事も可能だが、彼女の能力を生かせるのは後衛についたときだ。
魔笛アムドゥスキアスは悪魔を封じた横笛、その能力は既に示したものと、あと一つの能力を持つ。。
しかしその絶対的な力と引き換えに、演奏中は無防備になりやすいと言う欠点を抱えている。
だからこそラウテは後衛で援護に徹する事を望む。優秀な前衛がいれば心強いのだ。

「…ラウテ、仕事欲しい。出来ればおじさんと一緒に…駄目?」

冒険者協会は彼ら冒険者に仕事の斡旋をし、統括する事を目的とした組織だ。
仕事の内容はモンスター退治や用心棒など、基本的に戦闘を伴うものがほとんどである。
仕事は難易度からランク付けされているため、身の丈に合った仕事を探す事が可能だ。
ラウテはその中から主にA〜Bランクの仕事を人数次第で引き受けている。
銀貨十枚以上の報酬が見込めるため、相方には事欠かない。まぁ腕の立つ者しか引き入れないが。
身の丈に合わない仕事を引き受けた者は勝手に死ぬだけだろう。
今回もラウテは、そういった仕事を引き受けるために冒険者協会へ来た次第だった。

24 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/14(土) 13:25:42.76 O
「吟遊詩人の少女よ。殊勝であるな。感心感心!」
(ふん?物好きな小娘だ。……まぁいい。俺の手間も省けるしな)

―――モップ掛けする少女を一瞥するドラクマ。
少女は危なっかしい手つきだが気にはならない。
何故ならドラクマ本人も充分不器用だからだ。

―――ひとつ、いい忘れてたことがある。
ドラクマには周囲に聞こえる声で呟く奇妙な癖があった。
会う者は皆、本人の考えが声に出てるのだとは気付かず、単なる嘘のつけぬ正直者だと思い込む。
結果、誰も癖を指摘をしないので本人は全く無自覚のままなのであった。

―――暫くして、ラウテから仕事の誘いがきた。

「そうか少女よ。ラウテというか。
正体をばらすつもりはなかったのだが、先に名乗られた以上は仕方あるまい。
礼を尽くされれば礼として返さねばならぬ。
俺は今、黒服の用心棒風情に甘んじておるが、これは世を忍ぶ仮の姿!」

「何を隠そうっ!俺さまは誉れある国軍が誇る超重騎士団がひとりっ!
アーマ-ナイト、ドラクマ・ヴァン=グリオン本人であるっ!」

「ガーッハッハッハッ!
初対面で俺さまの実力を見抜くとは面白いぞ小娘っ!実に面白いっ!
連日連夜、酒と薬に溺れた弱き者の相手ばかり……ちょうど退屈しておったところだ。
俺さまと組みたいと望む気持ち、わからんでもない。
いいだろう……ただし、条件が2つある!」

「まず、ひとつめは……」

「俺と戦えっ!ひと太刀なりとも浴びせてみろっ!
見事、力づくで俺さまを認めさせてみるがいいっ!」

いうが否や、友好的な態度で油断していたラウテの腰に腕を回しいきなり抱え上げる。
セクハラではない。
そのまま客席に向かいブン投げたのだ!
「てやっ!」

―――無防備な少女を投げるなどおよそ正気の沙汰ではない。
だが、荒事に馴れ親しんだドラクマからすれば武器を使わぬだけ優しい計らいといえよう。
客席に投げつけたのも椅子やテーブルは当たれば壊れるのでショックが和らげると思っての配慮だった。
無論、ここで基準となるのは頑丈な身体をもつ自分本位である。
相手がか弱き少女の身であることや、他に客が居ることすら全く考慮してない辺りが脳筋野郎である所以と言えよう。
―――いつ客を巻き込んでも仕方のない、危険な状況ではあった。

25 :名無しになりきれ:2015/11/14(土) 14:45:16.24 0
今からでも参加おkかな

26 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/14(土) 15:11:20.97 0
>>25
【どうぞどうぞ。順番は私の前と後ろ、お好きなほうでどうぞ】

27 :名無しになりきれ:2015/11/14(土) 15:42:00.51 0
今からテンプレ等を用意するので
後を希望しておきます

28 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/14(土) 15:47:17.89 O
>>27
【亀レスですが私も了解です。よろしくどうぞ!
あと最初にも言いましがあなた方の演出上、御必要ならドラクマはどのような残酷な目に合わされても結構ですからね
すぐに殺しちゃってくれても構いませんので】

29 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/14(土) 16:31:36.72 0
「……面白い」

ドラクマに投げられる瞬間、ラウテはそう呟いていた。
そして投げられながらも空中で姿勢制御、見事にテーブルの上に着地をした。
その両手にはいつの間に取り出したのか、二振のダガーが握られている。
聖なる紋章が刻まれたそれは、モンスター退治に特化した代物だ。
大抵のモンスターは聖属性に弱いため、この手の武器は重宝されるのである。

ラウテはそのダガーを構え、勢い良くドラクマの懐に向かい駆け出した。
重鎧全盛期の今日において、あえて脆弱な軽鎧を纏うのは彼女の戦闘スタイル故である。
決して筋力的に着る事が出来ないという訳ではなく、スピードと回避に重きを置いている為だ。
そのスピードはまさに疾風の如し、一瞬でドラクマの懐へ潜り込む。

「…っ!」

初撃は分厚い籠手によって阻まれる。しかし、その場で宙返りをし顎に一撃蹴りを入れる。
よろめいたところを更に追撃するが、決定打には至らない。
だが、ラウテのラッシュには別の意味が隠されていた。
ダガーの柄にはボタンが付いており、それを押すと蓋が微かに開くように出来ている。
その隙間から零れ落ちたのは、小さな植物の種。これといって何の変哲もない。
それが撒かれたのを確認したラウテは、再び牽制の蹴りを入れて距離を取った。

「…これで決めるわ。お願い、アムドゥスキアス」

素早く持ち替えられていた魔笛を静かに吹く。変化はすぐに現れた。
床に撒かれた種が急速に発芽成長し、丈夫な蔦となってドラクマに襲い掛かったのだ。
蔦は意思があるかのように彼の手足に絡み付き、その自由を奪う。
彼ほどの筋力を以ってしても、その蔦を引き千切ることは不可能だった。
魔笛の魔力により、その蔦は強化されているのだ。
やがて完全に身動きの取れなくなったドラクマにラウテはゆっくりと近づくと、ダガーを喉元に当てる真似をしてみせた。

「これでチェックメイト。…ラウテの勝ち、で大丈夫?」

ラウテは再び笛を吹くと、蔦は瞬く間に枯れてしまった。

「……ラウテは強いんだよ、きっと力になれる…」

そう呟くように言うと、彼女はドラクマに握手を求めた。

30 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/15(日) 06:06:18.13 0
名前:ヴィクトル・シャルフリヒター
年齢:25
性別:男
身長:154cm
体重:61kg
種族:エルフ
職業:元処刑人/現魔女狩り
性格:八方不美人/皮肉屋
利き手:訓練による両利き
魔法:主にサバイバル用
特技:魔女狩りの戦闘術/拷問
武装:瑞鉄(みずがね)の細剣
   瑞鉄の戦鎚
   瑞鉄の弓
   瑞鉄の盾
防具:瑞鉄の帷子/肘当て/膝当て
他所持品:矢筒と矢
容姿:恵まれたエルフの容姿/ドブ川のような眼つき/長いコート
将来の夢:決して自覚はしないけど幸せになりたい

簡単なキャラ解説
王国が辺境の開拓を進める際のいざこざに紛れて誘拐され、奴隷化されたエルフ
の産んだ子供。つまり正確にはハーフエルフ。その事を指摘されたら命のやり取りになる
エルフらしからぬ低身長は幼少期の生育環境が悪かった為
流石の王国も亜人達の奴隷化は推奨していない為、彼を所持していた奴隷商はやがて捕まり死刑になった
際してヴィクトルはその刑を執行した処刑人の養子となり、20歳まで育てられた
だが故あってその家から遁出
以後は魔女(ここでは魔法を犯罪に用いる者全般を指す)狩りを主な収入源として生きている

31 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/15(日) 06:09:54.91 0
「……店主、ビールを二つ」

酒場のカウンターの隅、類稀な美貌とドブ川のような眼を備え持つ男が呟いた。
どう見ても大酒飲みといった風貌ではない。
ろくでもない事を考えているのは明白。

だが店主は何も言わず錫製のジョッキを二つ差し出した。
こういう時に制止を掛けて自分が被害を肩代わりするほど損な事はないからだ。

男はそれを両手に取って立ち上がると、背後を振り返り――まずは黒服の大男に一つ、投げつけた。

「頭は冷えたか、この馬鹿野郎め」

その行為に、憂さ晴らし以上の意味は無い。
彼――ヴィクトル・シャルフリヒターは粗野な男が大嫌いだった。
己の過去の境遇を思い出させるからだ。

ヴィクトルの手中にはジョッキがもう一つ残っている。
彼はそれを目の前の少女へ向けて――軽く放った。

「お前もだ」

容器と、ぶち撒けられた液体が彼女の視界を占めるように。
そして――銀光が閃く。

レイピアの鋭い切っ先がジョッキを貫いて、少女の目の前に突き付けられていた。

「いいか、二度と酒場にあの薄汚い鴉共を招き入れるんじゃない」

ヴィクトルは潔癖症と言うほどではないが、汚れた空間が大嫌いだった。
それもやはり、己の過去の環境を思い出させるからだ。

「次同じ事をしてみろ。疫病の蔓延を目論む魔女として処刑してやる。
 お前があの男にしたように、両の眼を抉った後でな」

そう命令するヴィクトルの言葉は、ただの虚仮威しではない。
彼は魔女狩り――魔法を犯罪に用いる者を問答無用に処刑する権利を有している。
気に食わない人間を殺してから、この者は魔女だったと主張する権利も。

しかし彼は偏屈な男だったが、その腕前は一級品と言えた。
剣閃は鋭く、初動の隠し、足捌きも洗練されている。
加えて彼が手にしている細剣は、瑞鉄と呼ばれる金属特有の光沢を帯びていた。

瑞鉄は特殊な鍛造法を用いる事で、複数の形を与えられる金属である。
鍛造の際持ち主となる者の血を混ぜる事で、その者の意思に呼応して形を変化するようになるのだ。

その性質上、瑞鉄を用いた金属器は完全な特注品となる。
瑞鉄自体も希少な金属である為、ただの魔女狩り風情が手に出来る品ではない。

つまり――彼は訳ありだし偏屈だが、仕事の連れ合いとしては悪くない。

32 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/15(日) 16:29:47.74 O
―――少女の体重は非常に軽く、まるで小石を放ったような感覚だった。

投げた瞬間。少女の体が激突し壊れたテーブルや椅子を弁償することを想像して、一瞬思わず頭を押さえる。
だが、その心配はすぐに杞憂と消えた。
少女の体はテーブルに叩きつけられず、空中で円を描きながら猫のように器用に着地を決めたのだ。
―――思わず、ほくそ笑む。

「面白いっ!そうでなくてはなっ!」

―――だが瞬間、少女の体がテーブルの上からいきなりかき消えた。
いや、違う!テーブルを蹴り、こちらへ向かって一足跳びに翔んできたのだ。

「させんっ!」

―――抜き打ち気味に懐刀を薙ぎ払う。
迫る少女にカウンターで合わせたのだ。
狙いはドンピシャリ!
少女の体を鋼の刀身が捉え……る事はなかった。
代わりに、何故か籠手から金属を弾く音が聞こえた。

「な……にィッ!?」

―――抜いた筈の刀身が……消えた?
いや、違う。これは相手の思わぬ素早い反撃に対し、体が無意識に反応してしまっただけの事。
最初から帯剣などしていなかったのだ。
それすらうっかり忘れていた。うっかり忘れる程の速度だったのだ。
反射的に前に踏み込もうとしたその瞬間!全身に鞭のようなものが巻き付いてきた。

「!」

―――気付けば全身拘束され、喉元へと刃が向けられていた。
思わず顎髭から汗が滴り落ちる。
少女が得意げに勝利を語る。

―――少女は知るまい。アーマーナイトは喉元にも鋼鉄製の防具を付けていることを。
―――少女は知るまい。アーマーナイトは蔦をも引き千切り、前進する剛力をもっていることを。
―――少女は知るまい。アーマーナイトは致命傷をおってさえ尚、前に進む気力を誇ることを。

―――なので、敗れたなどとは微塵も思ってはいない。
だが、己れがアーマーナイトでなければ敗北を認めていただろう事も確かだ。
そのことが妙に小気味よかった。
気が付くと自然と口許が緩んでいた。
「クックックッ……!」

「ガーッハッハッハッ!面白い……気に入った!
いいだろう。ラウテ。お前の仲間になってやってもいい!」

「ただし、もう1つだけ条件がある。……それはだな……」

―――その瞬間だった。水を掛けられたのは。
【続く】

33 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/15(日) 16:51:11.83 O
―――リアルな意味で水を注された。
そのおかげでやっと、ここがどこで、自分がどういう立場なのかをやっと思い出した。
ここにいるのは自分とラウテだけではないのだった。
見るとひとりのエルフの客自分たちに向けて非常に立腹している。
だがドラクマには、このエルフが腹をたてている理由がさっぱりわからなかった。

(???……何を言っとるんだコイツは?)

―――自分はこの酒場の用心棒の黒服だ。
なんとか客の苦情処理をしないといけないだろう。
見るに、他の店員たちは客たちの苦情処理に追われている。
それに、「手のあいてる奴ァ、猫でも使え!」がここの糞店主の口癖の1つだ。

―――ドラクマはエルフに向かって何かを言いだしそう……もしくは既に言ってたのかも……を察知し、目の前に手を出しラウテを静止する。

「待て待て!今のでお前さんの実力はわかった。
だが、ここは俺さまの店。
客の小娘なんぞの出る幕じゃねぇ!
ここは俺さまに任せて大人しくひっこんでな!」

「それにちょうどいい!華麗なるプロの苦情処理能力ってもんを見せてやろうではないか!」

―――そういうが否や、エルフの前に立つ。
心理的に先ほどの敗北を引き摺っていたので、ここらでいいところを見せ付け少しでも優位に立ちたかったのだろう。
本人には全くそういう意識はなかったのだが。

「―――失礼ですがお客様?うちの店に何か糞文句でもおありで?
糞不味い水がお口に合わなかったんですかい?」

―――そこまで言ってから、首を傾げる。

「―――ふむ?しかし、妙な話だ……」

「先ほどうちの糞店主が、すかした田舎者のエルフ野郎の飲み水にカエルのしょんべん混ぜといてやった!とか言って、裏でゲラゲラと笑い転げてやがったんだが……?」

「エルフ野郎は森に住む田舎者だからカエルが好きなんだよなぁ?
まさか口に合わないなんてわけ……ねぇよなぁ?」

―――ドラクマは客のエルフの顔をじっと覗き込んだ。
しかしそれは、ふと疑問に思ったからであり、客を小馬鹿にする意図では決してなかったのだが……。
正直といえば正直だが、聞いてる方がどう思うかまでは全く考慮していない。
困った事に、そういう細かなことには一切気が回らないのが脳筋体質の特徴なのだ。

34 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/15(日) 22:30:14.18 0
戦いの中で、ドラクマが明らかに手を抜いていたことは気付いていた。
だが、これは殺し合いではない。本気を出す理由もないという訳だ。
もちろんラウテもまた、本気で戦っていた訳ではなかった。
蔦で絞め殺すもよし、剣技のスピードを更に上げて圧倒する事も出来たはずだ。
しかし彼にも、また酒場やそこに集う人々にも怪我をさせる訳には行かない。
かくして、ラウテとドラクマの戯れのような戦いは幕を閉じたのである。

二人が戦いを終え互いの協力を結んだそのとき、思わぬ方向から水を差す者がいた。
妙に小柄なエルフの男性だ。長身な者が多いエルフの中では珍しいと思われる。
どうやら酒場で暴れていたのが気に食わない様子で、ラウテに剣を向けてきた。
……素早い剣捌きだ。決して見切れない速さではないが、ビールの幕でうまく隠している。

>「いいか、二度と酒場にあの薄汚い鴉共を招き入れるんじゃない」

しかし、本気でないのは見て取れた。それでもドラクマにビールをかけたのは許せない。あと鴉。
文句をつけようと一歩踏み出そうとしたのを、ドラクマ本人に制された。

>「それにちょうどいい!華麗なるプロの苦情処理能力ってもんを見せてやろうではないか!」

「…プロ? ところでおにいさんは、鴉嫌いなの? …可愛いのに」

まだ血が昂ぶっているのだろう、ドラクマはエルフの男に挑発をし始めた。
稚拙ではあるが実に効果的な挑発をラウテは聞き流しながら、ひとり思案に耽っていた。

「…鴉、可愛いと思うのにな。目とか羽根とか、黒くてつやつやで…」

あの鴉たちは、ラウテが魔笛の力で契約を結び、使い魔として召還出来るように仕立てたものである。
離れていてもいつでもすぐそばの空間に召還出来るため、準備さえ怠らなければ非常に便利なのだ。
彼女は旅の途中で出会った野生動物を片っ端から使い魔に仕立てているため、その数は膨大だったりする。
動物を可愛がる事に目がないラウテにとって、この能力は非常にありがたいものなのだ。
ちなみに制限として、モンスター系の生き物の契約は非常に難しい。
戦って怪我をなるべくさせず打ち負かした上で、双方の合意の上契約を結ばなければならないためだ。
ごく小さな動物たちなら、戦わずとも契約するのは容易いのだが。

さて、エルフの男に安っぽい挑発を仕掛けているドラクマを、そろそろ止めねばならないとラウテは考えていた。
ここで喧嘩になるのは、少なくともエルフの男にとっては好ましくないだろう。
でなければ他人の喧嘩に口を挟むような真似はしないはずだからだ。

「ふわぁ…二人とも、そこまで。それ以上はラウテ、許さない……」

あくび混じりでの宣言ではあるが、既に魔笛を構えている。
魔法でこの場を収めようという意思表示に他ならない。きっと騒ぎになるだろう。

35 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/16(月) 14:57:30.89 0
>「―――失礼ですがお客様?うちの店に何か糞文句でもおありで?
  糞不味い水がお口に合わなかったんですかい?」

「あぁそうだ。ついでに虫ケラ同然の脳みそしかねえ用心棒も気に入らないし、知恵足らずのガキも俺は大嫌いだ」

>「―――ふむ?しかし、妙な話だ……」

>「先ほどうちの糞店主が、すかした田舎者のエルフ野郎の飲み水にカエルのしょんべん混ぜといてやった!とか言って、裏でゲラゲラと笑い転げてやがったんだが……?」

>「エルフ野郎は森に住む田舎者だからカエルが好きなんだよなぁ?
  まさか口に合わないなんてわけ……ねぇよなぁ?」

大男の告発に、しかしヴィクトルが取り乱す事はない。
奴隷の時分、小動物や昆虫の類は貴重な食料だったのだ。今更抵抗など覚える訳もない。
もっともその忌まわしい過去を思い出させられた事に、眼光の険を更に深めはしたが。

「心遣いには深く痛み入るが、生憎生まれも育ちもこの国なものでね。
 まぁ、気にするなよ。鎧も着てない重装騎士ドン・キホーテ様にまともな認識なんざ求めてないさ」

ヴィクトルは大男の呟きを挑発と捉え皮肉を返した。
が、その言葉は奇しくも、大男に自らの悪癖を気付かせるものではなかった筈だ。

「だが……口は災いの元だ。なぁ、アンタもそう思うだろ」

ヴィクトルが店主を振り返る。
右手の細剣を手慰みのように緩やかに振り回し――銀閃。
店主の口端が切り裂かれた。

実戦を考慮して得物を選ぶ際、細剣の優先順位は決して高くない。
速く振る事は出来ても切断力に欠け、防御に用いる事も出来ないからだ。
そもそも元は護身用、決闘用の武器だ。

斬撃は言うまでもなく、刺突も急所を突かなければ、殺傷力を発揮出来ない。
腕のない者同士の決闘では、全身が刺傷と刃傷だらけになった挙句、失血死による相討ちになる事が多かった。

だが裏を返せばそれは、上手く使えば相手に最大限の苦痛と恐怖を与えられるという事だ。
逆に一瞬の内に、苦しみを感じる時間すら与えず命を奪う事も。
それはまさしく、処刑人の剣だった。

大男の言葉が冗談や嘘の類であるかは、ヴィクトルには関係なかった。
不快な思いをしたから憂さ晴らしをした。彼が人を傷つける理由など、それだけで十分なのだ。

36 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/16(月) 15:06:05.96 0
「そして災いを呼ぶのは、つまり魔法だな。処刑の対象だ」

言葉と同時、ヴィクトルが再び身を翻し――細剣の切っ先を大男へ。
彼の剣速は、お客様対応の気分で反応出来るものではない。

見据えるは頭部――大男の両眼が剣閃に撫でられ、血飛沫を散らした。
切断されたのは彼の眼球――ではない。瞼のみだ。
だがその事を的確に認識出来る者は、例え戦闘者であっても一握りだ。
大抵は痛みと出血から、眼をやられたと思い込む。

両眼を切られたと錯覚させ、然る後に改めて本当に切り裂く事で、二度の恐怖を与える処刑人の技法である。
そしてその「二度目」までに、どれほどの、致命傷には成り得ない手傷を負わせるかはヴィクトルの気分次第だ。

>「ふわぁ…二人とも、そこまで。それ以上はラウテ、許さない……」

精緻を極める切っ先が――剣閃と化して迸る直前、少女が警句を発した。
口元には――魔笛。

「許さない?何をどう許さないつもりだ。そのチャチな笛を吹く暇があると思っているのか?
 知らないなら教えてやるよ、クソガキ。魔女狩りに裁判は必要ないんだぜ」

ヴィクトルは少女を睥睨し――しかし苦虫を噛み潰したような表情で剣を下ろした。

「……だが、ここでお前を殺しちまったら、報告の為に時間を取られる事になる」

見逃してやるよと言って、ヴィクトルは細剣を鞘に収めた。

「おい、店主。最近この辺りで良くない『噂』が囁かれているそうじゃないか。
 デカい『仕事』があるんだろう?話すんだ。お前が、その口でな」

口の端を切り裂かれた状態で言葉を述べるのは言うまでもなく苦痛を伴う。
食事の際に嫌でも動かさなくてはならない関係上治りも遅い。
ヴィクトルが好む傷つけ方の一つだった。

37 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/17(火) 02:04:22.00 O
―――ここは不法のまかり通る天下の裏街道辻。
この狂人の集う界隈に住まう者に、まともな神経の者など皆無。
人死にがでようが何をしようが、外界とは違い、気にする者は誰もいない。
異端審問官……たしかに風変わりで面白い逸材なれど。
外界では、彼を怖れ憎む者も多いであろう。
だが、ここは異常者の吹き溜まり。
野次馬たちは怖れることも逃げだすことも、まして痛みで転げ回る店主を助けることすらせず。
ただただ、怠惰に。そして無責任に、賭け事に興じていた。
賭けの対象は、次は誰が死ぬかだった。
真っ先に槍玉に挙げられたのは酒場の店主、次に両瞼を切られたドラクマ、三番目がラウテだった。ヴィクトルは不人気。
しかし、思った程圧倒的大差というわけではなく、なぜか僅差であった。

―――不意に、原因不明の鋭い痛みとともに、真っ暗闇に閉ざされたドラクマ。

「……う゛ッ!?」

―――思わず悲鳴を声に出しそうになるのをぐっと堪える。
痛いものは痛い。
だが、決して痛いとは口にしない。
そう訓練されていたからだ。
そして、場違いでユーモラスな声を出す。

「何だ、こりゃあ?蚊でもとまったか?」

―――昔っから痩せ我慢だけは得意だった。
貴族とはいえ田舎者である彼が、エリートである超重騎士団に抜てきされた大きな理由のひとつだ。
だが、部隊の一員になってからの訓練や実践を経て、その傾向はより顕著となった。

―――彼の属していた超重騎士団は、常に前線に立つことで有名な部隊。
数ある騎士の中でも、特に分厚く頑丈な鎧を着込み、自ら攻撃の矢面に立ち背後の味方を護るのが主な任務。
彼らは通常より重い鎧を身に纏うことから、重(ヘヴィ)、もしくは、超重(スーパーヘヴィ)と分類される鎧の騎士だ。
要は、味方を護る堅固な壁役である。
剣技などは二の次。
鎧の中の者には、何よりも頑丈さと精神の忍耐強さが必要とされた。

―――なので、ドラクマは確かに慌てはしたが、大したパニックには陥らなかった。
訓練により一般人よりも幾分か恐怖に対して耐性が高かったのだ。
それに生来より彼は、非常に大雑把な性格なのである。
自身の命にせよ、怪我にせよ、関心薄いのは同じ事。
それは彼が、既に人生の大半を戦場で過ごしてきた事にも由来していた。

38 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/17(火) 04:07:16.47 O
―――ドラクマは思った。どうやら先程の自分の声は、緊張でか細かったらしく、誰にも聞こえてはいなかったようだ。
ちょっとホッとした。
今やっと気付いたのだが、聞かれてたらエルフにとどめをさされていた所だった。
―――それにしてもひとつだけ疑問がある。

(アイツ、今なんで俺を切ったんだ?わけわかんねぇ……)

―――実は彼にはまだ、エルフが何故怒ったのかが今ひとつ理解できていなかったのだ。
何故なら、ドラクマは田舎生まれの田舎育ちで、騎士時代には、「臭い田舎者風情が生意気いうな!」と都会育ちの同僚によく褒められていたからだ。
何故かそのうち誰も言わなくなってしまったが。
それにカエルも、自分の田舎の名物食材で、騎士時代には、野戦で転戦し野宿も多かったドラクマにとっては手軽にとれるたんぱく源のひとつであった。
カエルのしょんべんも泥水すするよりはよっぽど綺麗だったから場所によっては飲み水にしてた。どっかの国では高級な香水の材料だとの噂まで聞いたことがあるので、かなり清潔なイメージだ。
これらの事を踏まえても、困った事にまるでエルフの客が怒った問題点が見つからないのだ。

(まぁ、誰に聞いても、大概、エルフは気難しいっていうしな。突然キレても別に不思議は無ぇか……)

―――自己完結したところで、声が聞こえた。
どうやらラクテに庇われたらしい。
心の中で感謝はしたものの、同時に、あんな年端もいかない小娘に庇われたという屈辱感の方が大きかった。

―――先程のエルフはというと、店主の脅迫へと興味が移ったようだ。
取り敢えず先程から手で触ってみて、瞼を切られた事に気付いてはいたので何とかしなければと思う。

(取り敢えず消毒か。消毒さえすれば何とかならーな!)

―――エルフに気取れぬよう、小声でラウテのいるであろう辺りを予想し囁く。
店内の広さはだいたい把握してるし、先程聞き耳を立ててたお陰でどこに誰がいるかはだいたいわかるのだ。

「おい、小娘。いや、ラウテ。こっちだこっち!」

「悪いが。そこらに酒のボトルが転がってんだろ?
うるさ方のエルフの客には内緒で、一丁こっちに持ってきてくんねぇか?大至急頼むわ」

39 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/17(火) 15:59:10.81 0
敵役として参加したいと思います。
街に蔓延っている、正気を失わせる危険な薬物(>>18)を振りまいている魔女、というキャラです
問題ないでしょうか



名前:リタリン・(剥奪済)・フェニデート
年齢:21
性別:女
身長:162cm
体重:46kg
スリーサイズ:80-58-77
種族:ドルイド
職業:無職
性格:自堕落でとても胡散臭い女
利き手:左
魔法:形容魔法(対象に別の性質を付与させる魔法。Ex."鉄塊"と形容→鉄の硬度と重量に。低燃費)
    普通の魔法(魔導書をカンニングしながらの魔法。強力だが時間がかかる。高燃費)

特技:ハーブの栽培と調合と使用(意味深)
武装1:モーニングスター(普段は魔法の杖に偽装)
武装2:魔導書(様々な魔法が記載され、未習得者でも時間さえかければ発動可能)
武装3:吹き矢(各種ハーブ毒完備・主に狩猟用)
武装4:薬草袋(自家製ハーブとその調合道具一式)
防具:ローブ(ドルイド伝統。濃緑で鎖帷子を織り込んである)
   とんがり帽(古典的な魔女風帽子。防刃性があり、小物を隠しておける)

他所持品:ハーブ栽培セット、魔法使いギルド会員証
容姿の特徴・風貌:半眼で儚げな顔立ち。長い黒髪を両肩のところでおさげにしてある
将来の夢(目標):今度こそバレないようにハーブの販路を確保する

簡単なキャラ解説:
『堕廃の魔女』。かつて里を追放されたドルイドの成れの果て。
彼女の里は伝統として他の人里に見習いを派遣し、魔法を福祉に役立てることで修行と外貨の獲得を両立する習慣があるが、
怠け者故の効率化を極めた結果、皆を幸せにするには不安がなくなるハーブと気分が高揚するハーブを振りまくのが一番と考え実行。
村一つを廃人の巣窟に変えてしまい、通報を受けた魔女狩り達に堕廃の魔女として討伐される。
その煽りで出身の里までとんでもない風評被害に晒され、両親からも絶縁状を叩きつけられた。
しばらくの社会奉仕と恩赦によって釈放されてからは、里にも頼れず怪しいハーブ売りとして各地を転々としていた。
当局に面が割れているのでまっとうな職にありつけず、出入りできる街が年々減っているのが悩み。
魔法についてはまともに修練を積んでおらず魔導書をチラ見しながらでないとまともに呪文も唱えられない。
ついでに魔力も少ない為、常用できるのは燃費の良い形容魔法ぐらい。
その為魔法使いらしからぬ肉弾戦闘(杖を強化して物理で殴る)を強いられている。
また自家調合したハーブでよくラリっている。
好きなものは焼いた獣肉とよく冷えたエール。
嫌いなものは魔女狩りと定職に就いてないことを説教してくる連中。

40 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/17(火) 23:22:13.02 O
――私個人と致しましては、早期参入ちょっと待ったと言いたいですね。
GMもいない現状。タイミングを図らず、次々と新規さんが参加なさるとなると、話がグダグダになりそうで怖いのです。
新規キャラがひとり加わればプレイヤー環境も結構変わりますしね。
具体的には書く順番が替わりそうだ待ち時間が長くなります。
場合によっては、設定も変えねばならないだろうし、書き溜めも廃棄しなければなりません
なので新規参入なさるならば、シーンが変わる時か話の区切りになる場面がよろしいのではないでしょうか?

むろん、私は>>1さんではありませんので、あなたに強制は致しません。
他の参加者の方もこれとは別の御意見を御持ちならば、それも考慮の上、尊重致しますよ。

41 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/17(火) 23:47:09.56 0
過程はどうあれ、とりあえずはとりあえずエルフの男が剣を引っ込めた事に安堵する。
店の被害など知った事ではないが、せっかく見つけた”壁”をこれ以上傷付けさせる訳にはいかない。
ラウテも傷を見て目をやられたのではないかと思ったが、ドラクマの様子からして瞼を浅く切られたらしい。
とりあえず治療をと思った矢先、そのドラクマから呼び止められる。

>「悪いが。そこらに酒のボトルが転がってんだろ?
>うるさ方のエルフの客には内緒で、一丁こっちに持ってきてくんねぇか?大至急頼むわ」

酒、と聞いて理由を瞬時にはじき出す。傷の消毒をしたいのだろう。
ラウテは辺りを見渡すと、先ほど死んだ男のテーブルにまだ酒が残っているのを見つけた。
この種類はかなりきつい酒だ、消毒には十分使えるだろう。
酒を回収しとてとてと近づいたラウテは、エルフに悟られぬように酒瓶を渡した。

「…あとこれ、血止めの軟膏…」

小さなケースに入った軟膏だ。数種の薬草を粘りが出るまですり潰したものである。
戦場において止血の手段は必ず必要になる。かと言って、いちいち包帯も巻いてはいられない。
そんなとき便利なのがこの軟膏だ。ちょっとした刀傷程度なら、これで何とかなる。
これはただ止血するばかりでなく、傷に良い薬草を混ぜる事で治癒効果も望める。
失血による戦闘不能を回避出来るこの薬は、冒険者の間では必需品であった。

酒と軟膏を渡してエルフの男の様子を見ると、店主に仕事がないか聞いている様子だった。
それならばいくつか心当たりがある。ラウテは店主に代わり語る事にした。

「…仕事の話、いくつかある、ラウテ知ってる。ひとつ、海魔の討伐…」

海魔とは海によく出没する巨大生物の事だ。
巨大なイソギンチャクにも似たそれは船の運航を阻害するため、出没したら討伐が最優先される。
ただしこの案件は少人数で挑むものではない。数十人規模のパーティを募って行われる大捕り物だ。
実際に海魔を討伐するのが目的ではなく、とりあえず追い出す事が出来ればそれで良い。
多人数による仕事のため正直なところ収入は期待出来ないが、今募集されている最も大きな仕事だった。

「…ふたつ、森に現れた抵抗民族の排除…」

こちらはもっと分かりやすい仕事だ。
王国が国土を広げるに当たって邪魔になる少数民族、部族を蹴散らす事である。
村を焼き、女を捕らえ、その土地のすべてを乗っ取る。実に分かりやすい。
報酬とは別に捕らえた女を売り捌いたりも出来るので、収入はかなり期待出来るだろう。

「……そしてみっつ、街に蔓延する危険な薬の販売元の調査、討滅」

実はこの案件はあまり良いとは言えない。この街のダークサイドに触れる事になるからだ。
公然の秘密ではあるが、この依頼をしたのは街を裏から取り仕切る連中によるものだ。
連中にとっては、シマで好き勝手商売をされてはたまらないのだろう。
薬を派手に売りながらも巧妙に姿を隠し続けているのは、相手が魔法使いだからとも言われている。
確かに古典的な魔女なら薬を作る事も可能だろう。そして身を隠すことも。
少々厄介な仕事なため引き受ける者は非常に少ないが、成功報酬はおそらく最も高いだろう。

「お勧めは薬売り探し。仕事をするならラウテたちと一緒は、どう…?」

【仕事のお誘い、誘いに乗るかはご自由に】
>>39よろしくお願いします。私としては任意のタイミングで構わないと思います。空気を読んでくださるなら】
【問題なければGMを引き受けても構いませんが、どなたか我こそはという方はおりますか?】

42 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/18(水) 00:55:34.59 0
俺としては一緒に遊びたいと言ってくれる奴を歓迎したいし長く待たせるのは心苦しいと思う

ドラクマが警句を発したのは恐らくリタリンが「敵役参加」だからだろう
単純に四人目の参加者と言うなら、丁度今仕事の話が始まろうとしている
参加するタイミングとしては問題ないし、待ち時間も……まぁ俺は許容出来る

だが敵役参加となると少し事情が違ってくる
自堕落で怠惰な魔女が、自分が狙われているかどうかの情報収集をちゃんと行うだろうか
脅威に対して先手を打とうと暗躍しようとするだろうか。あまり期待は出来ないな
つまり、状況がリタリンを持て余し気味になってしまう可能性が高い

それは誰にとっても不幸な事で、だからこその待ったなのだろうと俺は察した

それともう一つ、TRPGにおいて、敵役というのは物語の主導権を握りがちだ
これは決してリタリン嬢を見くびる発言じゃないんだが
途中乗車のプレイヤーに主導権を委ねるのはやはり不安が残る

敵役が「海の向こうに黒幕配置したから」と言ったのなら
敵の敵たる俺達はそれを倒しに行こうと努力するか……或いは一人のプレイヤーを切り捨てる決断をしなきゃならない

それもやっぱり誰にとっても不幸な事だ
空気を読んで欲しいというのは、そうなる事を避けたいが故だろう

つまり……結局言う事はラウテと殆ど変わらないな
アンタの事を心より歓迎するし、参加するタイミングはいつでも構わない
が、俺が勝手に想像したドラクマの意図も少しは汲む余地があるだろうから、それについて一考してもらえれば最高だって所か

43 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/18(水) 05:04:32.16 0
「おいどうした。早く喋れよ。俺の言う事が聞けないのか?えぇ?」

カウンターを飛び越え、内側で痛みに転げ回る店主を見下ろし、ヴィクトルは尋ねる。
無論、答えなど求めてはいない。彼はただ他人を責め、傷つける口実が欲しいだけなのだ。
狭いカウンターの内側で、しかし細剣の切っ先は自在に瞬き、店主を切り刻む。

「まさか……喋れないのか?傷のせいで声が出せない?」

ふと、ヴィクトルは静かな――穏やかとすら言える声音を発した。

「加減はしてやったつもりだったが……少し深く切り過ぎたか?」

店主と目を合わせ、依然静やかな声で尋ねる。
その眼には未だ怯えの感情が浮かんでいたが――それでも縋るように、彼は何度も頷いた。
ヴィクトルはその様を見て、ふっと笑うと、

「そうか……そりゃつまり、俺の腕が悪かったと、そう言いたいんだな?」

言うや否や、細剣が酒棚を通り抜ける。
幾つかの酒瓶が切断され――その中身が店主へと降り注ぐ。
高濃度のアルコールが彼の全身に刻まれた刃傷を舐める。
けたたましい悲鳴が上がった。

「なんだよ、声出るじゃねーか。人を騙すのは魔女の典型的な特徴だが……」

ヴィクトルの眼光と細剣の切っ先が、店主の首を睨み――

>「…仕事の話、いくつかある、ラウテ知ってる。ひとつ、海魔の討伐…」

しかし視界の外から少女の声が聞こえた。

>「…ふたつ、森に現れた抵抗民族の排除…」

店主に代わってめぼしい仕事を述べ始める少女に、ヴィクトルは眉を顰めた。
彼とて異端審問所に募られた『密告』を元にこの町を訪れたのだ。

密告とは即ち、殆ど仕事の依頼のようなものだった。
魔女狩りは、かつては教会が執り行っていた。
だが魔法を犯罪に用いる、卑しくも賢しらな者達と渡り合うには、討滅者もまた外道に足を踏み入れる必要がある。
その戦いは名誉からかけ離れていて、神に仕える者には相応しくないものだった。
故に、やがて異端審問所は教会から独立した組織となり――『密告』さえあればどんな仕事でもこなす狩人の集いと化したのだ。

44 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/18(水) 05:05:41.47 0
>「……そしてみっつ、街に蔓延する危険な薬の販売元の調査、討滅」

ともあれ、ヴィクトルは細剣を店主の服で拭うと、少女を振り返った。
店主への嗜虐心は既に冷め切って、失われていた。
彼の『憂い』は己の人生、生命そのものに対して抱かれている。
故にどれだけ憂さ晴らしを重ねても晴れる事などなく――彼も半ば無意識に、その行為の虚しさを知っているのだ。

>「お勧めは薬売り探し。仕事をするならラウテたちと一緒は、どう…?」

その提案に、ヴィクトルは改めて少女と大男を品定めするように睨んだ。
少女の魔法と身のこなしは先程も目撃している。
大男の方も、巨大な戦鎚を何度も振り回しながら、その体幹にはまるでぶれが無かった。

「あぁ、俺もその仕事が目当てでここまで来たのさ。弾除けが増えるのは大歓迎だ」

結果、傍に置いて損はないと判断――少女の提案を受け入れる。

「ただし、報酬は俺が半分、残りの半分がお前達だ」

付け加えた条件に関しては、彼の慢性的な憂さ晴らしの意味合いが強い。
と言うのも彼はそもそも異端審問所に所属している。
つまり仕事をこなせば、そちらから報酬が得られるのだ。
二重取りを禁じる規約はないが、特別金に固執する必要もない。
単純に、不公平な分配率を吹っ掛け、相手を不快にしたいだけだった。



【一つ言い忘れた事があるんだが……ラウテ嬢のGMを正式なものとする事も俺は歓迎する】

45 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/18(水) 11:52:10.77 O
【私は、前言通り、他のお二方の御意見を尊重しますね。
リタリンさんの任意のタイミング、“早期”での御参加をお待ちしております。】

【ヴィクトルさんの私の意見に対する考察は、大筋において正しいです。
あの時点でこのスレにはGM不在でした。
そこに敵役で参入し物語を引っ張っていくとなると、準GMとも言うべき存在となりますよね。
リタリンさんがGM宣言をなさるのであれば何ら問題はありませんでした。
木に枝葉がたくさんあるのはよいのですが、幹はひとつの方が望ましい。
つまり、そういう事(=考えすぎ)です。】

【準GMといえば、このスレを最初期から引っ張ってこられたラウテさんがそんな立ち位置でした。
個人的にGMをやるのに一番相応しいのはスレ立て主の>>1さんで、その次に理想的なのは悪役だと思います。
しかし、それ以上にGMに相応しいのは、やはりやる気のある方でしょう。
私も、ラウテさんのやる気を尊重します。
否定する理由は全くありません。こちらこそよろしくお願いしますね。
(しかし、どうしてもやりたいという風でもないですので、同時にリタリンさんGMも推薦しておきましょう)】

【白状します。実は私は、ドラクマがヴィクトルとパーティを組む理由が見つからずに悩んでいました。
なので仲間となる為の仕込みに入る予定でした。
そんなタイミングだからこそ、待ったをかけたわけです。
つまり、ヴィクトルさんが仰るほど私の考えはクリーンなどではなく、少なからず私のエゴも入っていたわけですね。
誤解せぬよう言っときますが、これは既に私の中では既に解決した事案ですので、いっさい気にしないで下さい。
寧ろ、ごめんなさい。】

【それと私は、ラウテさんとヴィクトルさん、お二方のシナリオアイデアも見てみたかった。
その為に必要なのが、1〜2ターンの猶予でした。
それも私が待ったをかけた理由のひとつです。(=結局、考えすぎ)
魔女キャラが気に入らないとか、そんな理由でないのは確かです。
個人的には寧ろ、強くて悪い魔女、大好物ですので。
リタリンさんは、好きにはっちゃけちゃって下さい。
ドラクマを本気で潰しにかかって下さるとありがたいです。
参加に際し、初めからケチをつけてしまったようで申し訳ないです。
これからの一層の御活躍、期待しております。】

46 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/18(水) 13:16:24.51 O
―――揺れる液体の音がする。ラウテが酒瓶を差し出したのだ。
それを手探りで受けとめる。

「おうっ、恩にきる」

―――受けとるや否や、蓋を開けるのさえもどかしく、テーブルの端に叩き付けて割り、一気に目の傷口辺りにぶちまける。

「――――ッ!!」

―――声にならない悲鳴を必死で抑えつける。
どうも度数が高い酒だったようで、染みるというより傷口が灼けた。
切られた時よりもよっぽど痛い。
だが声には出さず、無言で呻きながらのたうち回る。

―――渡された軟膏を大雑把に塗った。
それから、ゆっくりと薄目を開ける。
そう重い傷ではないのは指で触れて解ってはいたが、見えてホッとする。
するともう、目の事は頭の隅から消えた。

(そういや、あのエルフ野郎はどこいった?
小娘は?)

キョロキョロと店内を探ると、どうやら奥の方で誰かが話してるようだ。
どうやらラウテが、エルフ野郎を仕事へと勧誘しているらしい。
正直なところ、仕事の内用はどうでもよかった。
どうせ何処に行っても自分のやる事はひとつだけなのだ。

>「あぁ、俺もその仕事が目当てでここまで来たのさ。弾除けが増えるのは大歓迎だ」

(なんだぁ?アイツ、俺さまの事を誉めてやがんのか?)

>「ただし、報酬は俺が半分、残りの半分がお前達だ」

そこで、ラウテの前にしゃしゃり出る。

「―――ああ、俺さまはそれで構わん。金額なんざ最初ッから期待してねーからな。
俺さまは飯が食えて、酒さえ飲めりゃいーんだ。
明日の小銭さえ入りゃ、文句はねぇ」

―――実はドラクマは、細かな計算が苦手だった。全く出来ないわけでもないのだが。
金の支払いはいつも誰かに任せてた。
騎士団時代には付き人もいたし、妻もいた。
田舎では一応貴族の子息だったので、召し使いにやらせてた。
それで今まで何の問題もなかった。
それに何より、生来より大雑把な性格なのだ。

―――次いで、憐れなボロ雑巾と化した店主を見下し、冷ややかな目で一瞥。

「ちょうど職場も無くなったとこだしな。断る理由なんざねーよ。
……だが、ひとつきいてもいーか?」

「お前、さっき何で俺にキレた?……あ、別に言わなくていーや。
どうせ賢い奴の説明なんざ、聴いても耳が痛くなるだけだ」

47 :名無しになりきれ:2015/11/18(水) 19:38:58.82 0
避難所立てたほうがいいと思う

48 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/18(水) 22:50:08.11 0
>「あぁ、俺もその仕事が目当てでここまで来たのさ。弾除けが増えるのは大歓迎だ」

「目的が同じなら共闘、歓迎……ラウテはラウテ、よろしく」

>「ただし、報酬は俺が半分、残りの半分がお前達だ」

「…それじゃ割に合わない。6対4、それ以上はまけられない」

正確には分割して3対3対4、およそ現実的な数値だと思われる。
実のところラウテには、そこまで焦って金策に走る理由はない。
食べるだけなら吟遊詩人の仕事だけで賄える。
……冒険者として仕事をするならもう少し掛かるが。
だが、仕事のパートナーとなる相手と立場の差が広がり過ぎるのは良くないことだ。
パートナーとは助け合うのが習わし、立場の差はそこに亀裂を生む事になる。
潤滑に仕事を進めるためには、出来るだけその差を埋めたかった。
ドラクマは彼の配当に不満はないようだが……まぁ、駄目なら駄目でそのとき考えればよい。

今まで仕事を共にしてきた連中には、色んな者がいた。
調子に乗る者、自信過剰な者、勇猛な者……皆死んでいった。
生き残るのはいつも、冷静な者か臆病な者だけだ。
そう考えると今回のパーティはちょっと微妙だが、最悪自分だけ生き残れればそれで良い。
ラウテが冒険者になって最初に覚えたのは、逃げる事だった。
危機的状況を察し、息の続く限り逃げ続ける。生きるためには必要な事だ。
魔笛の悪魔が必要な事を教えてくれたが、悪魔が教えるのは専ら魔法の使い方だけだ。
むしろ持ち主を殺すため、狡猾に騙そうとする事すらある……ラウテは他人を信じない事を学んだ。
だが今回の仲間だけは、不思議と信じて良いような気がした。
力強く頼りがいのあるドラクマ、冷静で狡猾なヴィクトル……うまくやれると良い、そう思う。

「とりあえず必要なのは情報…どこで聞くが良い?」

ラウテが知るのは、街で聞いた噂話程度の知識……冒険者向けの求人情報だけだ。
これから街で情報収集をして売人を特定するとなると、相当な時間が掛かると予想される。
こんな事ならジャンキーの男から情報を……そこまで考えたところで、ラウテは思い出した。

「あ、ちょっと死体に聞いてみる…ドラクマのおじさん、さっきの死体、出して」

取り出すは魔笛。死体を目の前に、厳かな旋律が流れる。
その音色に呼応して空間に小さな歪が出来て、中から小さな毛玉……のようなものが現れた。
毛玉は死体に取り付くと、その死肉に食らいつき始めた。

「…これはネクラファジー、死体の声を届けてくれる…教えて、薬はどこで買ったの?」

「キィ! ニニニ西区画ノノ裏路地!ジ!ジ!23時ジジジ! キキィ!」

ネクラファジーはその名の通り、主に人間の死肉を主食とする小型のモンスターだ。
その副産物として、死体の生前の声を真似する事が出来る。ある程度の意思疎通も可能だ。
基本的に人間に懐く事がないので飼い慣らすのは不可能だが、魔笛の力があれば別である。
ラウテはネクラファジーが十分に食べたのを確認してから、再び笛を吹き帰らせた。

「たぶん正確な情報……待ち伏せ、する?」



【ではあくまで代表として行動しようかと思います。避難所は必要ですか?】

49 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/19(木) 03:41:45.00 0
【ご意見ありがとうございます。ではラウテさんの動きに合わせる形で敵役をやらせてもらいます。】
【あくまで最初の小ボスみたいな感じでいきます】

西区画、ここはこの街でもとくに治安が悪い。
人口の実に八割がごろつきで、残りは浮浪者とその子供だ。
街役場の帳簿上に記された人数よりも遥かに多くのもの達が、決まったすみかも持たずに不法滞在している。
そんな西区画においても、特に危険な場所というのが存在する。
街灯の光も届かぬ、裏路地だ。

路地に入ってまず目につくのが、道端に倒れこむ人影とその異臭。
見開かれ光を失った双眸は死体か生者か判別がつかない。
辛うじて胸が上下しているので生きてはいるのだろう。
ある者は虚空を見つめて微動だにせず、あるものは幻覚にうなされてまともに発音できない言葉を垂れ流している。
ある者はニタニタ笑いながら失禁し、路上に落ちている明らかに人間のものと思しき糞尿を野良犬が狂ったように貪り食っている。
これらは、最近この街のごろつきの間で流行っているハーブに侵された者達の症状だった。
ごり、ごりと石をすり合わせる音が路地の奥から響く。
闇の中、灯りも着けずに一人の人影が机に向かっていた。
机=作業台の上には乾燥したいくつかのハーブと水差し、それをすりつぶす薬研が置いてある。
玉のように額に汗しながら薬研を擦りあわせているのは、黒髪に儚げな線の細い顔立ちをした若い女だ。
濃緑のローブにトンガリ帽、闇のように艶のない黒の長髪は、物語の世界から這い出てきたような古典的な魔女。
傍にある水差しの中身を薬研に注ぎ、ついでに自身の唇にも添えて白い喉を鳴らして嚥下する。
休憩とばかりに汗を拭うと、図ったように足音が近づいてきた。

「り、り、り、リタリン・・・!またあのハーブくれよ・・・切れちまって汗が止まらねえんだよぅ」

やってきたのは禿頭に痩けた頬の男だ。
目の焦点があっておらず、なめらかな頭頂部から滝のように汗をかいている。
リタリンと呼ばれた女は半眼で愛想笑いを返した。

「あいよぉ〜、毎度あり〜。一袋で銀貨一枚だよぅ」

差し出された袋を男は引っ手繰るようにして奪い取ると、代わりに一枚の銀貨を落とした。
袋から粉状のハーブを一摘み、手の甲に乗せて鼻から吸い込む。
粘膜に刷り込むように鼻をつまんでしばらく、男の汗が止まって目に光が戻ってきた。

「フゥ〜生き返ったぜ。ったく、毎回一袋なんてケチくさいこと言わずにまとめ買いさせろよリタリン」

「ごめんね〜。みんなにハーブ試してもらいたいからね」

嘘である。本当は大量購入して転売でもされたら商売上がったりだからだ。
リタリンは販路の確保に慎重だった。
彼女にとってハーブは金儲けの手段に過ぎない。

「そういや聞いたか?この街に今凄腕の"魔女狩り"が逗留してるんだってよ。
 酒場でいざこざを起こしてるのを仲間がみかけたらしいが・・・。
 もしかしてあんたのお客かい?あんた魔女なんだろ」

ごろつきの話を聞いた途端、リタリンはつっかけた靴の中に毒虫の潜んでいたような叫びを上げた。
その白すぎる首筋には、いつもローブで隠しているそこには、奇妙な文様が刺青で施されている。
これは烙印だ。逮捕歴のある、つまり前科者を識別する為に魔女狩り当局が捕縛した魔女に刻むのである。
何を隠そう、このハーブ売りことリタリン・フェニデートは魔女だった。
それも、四年くらい前に一回魔女狩りに遭って捕縛され、実刑判決を受けいる。
人呼んで【堕廃の魔女】。それが魔女狩り当局によって認定された魔女としてのリタリンの銘だ。
その後刑罰をくらって釈放されたが、フダ付きの魔女に世間の風は冷たかった。
まともな職に就こうと様々な門戸を叩いたが、誰もが首筋の烙印を見ると態度を変えた。
時には街からも追い出されること数度、やむなく露天商の真似事をして今日を生きながらえている。
この街は、そんなリタリンがようやく安定して顧客を確保できた最後の砦なのだ。
フロンティアラインに位置するこの街には活気があり、多くの若い働き手が地方からやってくる。
しかし人が集まれば、悩みや問題も発生する。
リタリンはそこに漬け込んで、精神を侵すハーブを売りつけることで生計を立てていた。

50 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/19(木) 03:42:28.95 0
「やばいよぉー。どこでアシ着いちゃったのかなあ。慎重にバレないようにやってるつもりだったのになあ」

リタリンはここでの商売に細心の注意を払ってきた。
地元の裏稼業従事者達とは商圏がかぶっているからいざこざは避けられない。
だから表立って商売は行わず、移民のごろつきを中心に口コミだけでやってきた。
少しでも嗅ぎ回られている気配を感じたらすぐに場所を移したし、魔法で姿を隠蔽したりもした。
ごろつき達も地元の裏組織から高い金を払って薬を買うよりもリタリンのハーブの方が安い為、
喜んで秘密を守り情報共有にも協力してくれた。WINWINの関係だったのである。
ことここに至って、ベストな判断はとっとと荷物を纏めて街を去ることだ。
魔女狩りと言えども街の出入りまで監視し続けることはできまい。
夜中のうちにこっそりと抜け出せば見つからずに脱出することは可能だろう。
しかし、ここを出てどこへ行くというのか。
築き上げた販売ルートも人脈も一度に失えば、生活基盤を取り戻すのには大変な困難が伴うだろう。
もう一度やりなおす体力や気力が自分にあるとは思えなかった。
ならば次善策をとるしかあるまい。それはすなわち、迎撃だ。
リタリンは心配そうにこちらを見下ろすごろつきに、歪んだ笑みを見せながら言った。

「ハーブもう一袋あげるからさ。ちょっと頼まれてくれない?」

しばらくして、ごろつきが帰ってきた時、彼は5人の男を連れて来ていた。
体型はばらばらだが、一様に柄の悪い、いわゆるごろつきの仲間達である。
冒険者崩れらしく、それぞれ剣や槍などで武装している。

「言われたとおり集めたぜリタリン。こいつらに何をさせたいんだい」

「ハーブ売り、つまり私のことを嗅ぎまわってる連中がいたらね。
 二、三発小突いてもう近づきたいと思わないようにしてあげてー」

リタリンは私兵を雇った。
報酬はもちろん彼女が売り歩いているハーブだ。
既に依存症になりかけていたごろつき計6人は諸手を掲げて快諾してくれた。

「あ、ちょっと待ってその剣貸して」

リタリンはごろつきから武器を借り受けると、自分の杖で刀身を叩いて呪文を唱えた。

『形容する――"豪炎"と』

すると大振りである以外なんの変哲もない蛮刀が熱を帯び、空気中の塵を燃やして炎を生じた。
これは彼女が得意とする『形容魔法』。
対象を他のものに形容することでその性質を付与する、エンチャントに属する魔法だ。
火の玉や稲妻のような現象を喚起するものではなく、既存の物品を媒介とする為、
魔力消費が少なく長持ちするのが特徴だ。こうして他の者に貸し与えるという使い方もできる。
リタリンはそれを鞘に納めると、持ち主へと差し出す。

「鞘から出して空気に触れたら熱くなるから気をつけて。他の人の武器にも魔法かけるね」

差し出された6つの武器に、リタリンはそれぞれ豪炎、氷雪、稲妻を2つづつ付与して貸し与える。
このような魔法武器は、即席でないちゃんとしたものを一揃え入手しようとすれば、
カジノで一晩勝ち続けなければならないぐらい高価なものだ。
リタリンのものは一日しか保たないインチキみたいなものなので話は別であるが。
報酬のハーブを約束された6人のゴロツキは、息巻いて酒場街の方へ繰り出していく。

「さあて、迎え撃つ準備をしないとね・・・まずは魔導書を引っぱり出さなきゃあ」

濃緑の衣を翻して、リタリンは再び路地裏の闇の中へ消えた。

51 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/20(金) 04:12:20.59 0
>「―――ああ、俺さまはそれで構わん。金額なんざ最初ッから期待してねーからな。
俺さまは飯が食えて、酒さえ飲めりゃいーんだ。
明日の小銭さえ入りゃ、文句はねぇ」

「……金勘定も出来ねえのか」

ヴィクトルは顔を顰める。
大男は粗野で、乱暴だが、その事を自覚もしていないし、故に微塵も厭うていない。

>「お前、さっき何で俺にキレた?……あ、別に言わなくていーや。
  どうせ賢い奴の説明なんざ、聴いても耳が痛くなるだけだ」

「そう言うなよ。簡単な話だぜ。お前が馬鹿で、俺は馬鹿が嫌いだからだ」

彼とは大違いだ。彼は生まれと環境に歪んでしまった自分を知っている。
こんな自分になりたくなかったと思う自分がいる。
その自分から必死に目を背けている自分がいる。
そして無意識の中には、その自分を自覚している自分がいるのだ。

だから彼は、自分よりも気楽な――幸せな馬鹿が嫌いだった。

>「…それじゃ割に合わない。6対4、それ以上はまけられない」

「おっと、六割も持って行っちまっていいのか?……冗談だよ。荒んだガキは嫌いだぜ」

それだけではない。
彼は賢く冷静な者を見れば、真っ当な自己を保っていられるその精神を嫌う。
純粋な子供を見れば、自分が決してなり得なかったその姿を嫌う。
そうでない子供を見れば、かつての自分を思い出しかねないその存在を嫌う。

彼は何もかもを嫌っていた。
そうしていないと、もう二度と正常な形には戻らない自分の人生を思い出してしまうからだ。

>「とりあえず必要なのは情報…どこで聞くが良い?」

「蛇の道は蛇……なら冒険者の仕事は、冒険者だ」

ヴィクトルは酒場の面々を見渡す。
魔女狩りは実入りのいい仕事だ。目をつけるのがたった三人と言うのは、幾らなんでも少なすぎる。
面倒な裏があるとは言え、冒険者は危険を冒すから冒険者なのだ。
最終的に手に余るかどうかが確信出来るまで、試しに踏み込んでみようという者は必ずいる。

ならば話は早い。
まずはそこらにいる冒険者の足を切り裂き、そして善意の協力を求めるのだ。
仮にその男が魔女狩り自体に興味はなくても、それなら魔女狩りに興味のある者を聞き出せばいい。
それすら知らないと言うなら、最近酒場に顔を出さなくなった者を聞く。
独自の調べものをしているであろう者をだ。

先ほど、逃げるように酒場から去っていった男がいたのをヴィクトルは見ていた。
銃声や喧嘩が原因ではない。自分が魔女狩りである事を示唆した直後の事だった。
少なくともあの男の情報は得られる筈――

>「あ、ちょっと死体に聞いてみる…ドラクマのおじさん、さっきの死体、出して」

「……なんだと?」

先ほどの男がいた席の周囲を見回していたヴィクトルが、怪訝そうな顔で少女を見た。
少女は笛を吹き――空間が歪む。召喚魔法の前兆だ。
現れたのは――手のひらほどの大きさの毛玉のような何かだ。

52 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/20(金) 04:13:23.23 0
>「…これはネクラファジー、死体の声を届けてくれる…教えて、薬はどこで買ったの?」
>「キィ! ニニニ西区画ノノ裏路地!ジ!ジ!23時ジジジ! キキィ!」

「……お前が眼を抉って死に追いやったその男が、尋ねたくらいで真実を吐くのか?」

>「たぶん正確な情報……待ち伏せ、する?」

「まぁ……嘘なら嘘で、その情報には意味がある。いいだろう、確かめに行くぞ」

ヴィクトルがコートの裾を翻し出口へと向き直り――同時に、その扉が勢いよく開かれた。
押し入ってきたのは、都合六人のごろつき達。
彼らの視線が酒場の中を見渡し、そして自分を捉えた所で止まるのを、ヴィクトルは見た。

魔女狩りの服装は、魔法を相手取る関係上、軽装である事が多い。
そして軽鎧すら身に纏わない冒険者など、殆どいない。
彼が魔女狩りである事をこの場において察するのは、薬物に侵された脳でも難しくなかっただろう。

「……その前に追加の情報源がやってきたみたいだな。今度は「俺向き」だ」

ごろつき達は各々の武器を抜いて、ヴィクトルを睨む。

「手出しするのは自由だが、せめて二人は生かしておけ」

彼は不遜な口振りと態度で、目の前の男達を見下すように目を細めた。

「それにしても……その格好、元冒険者か。惨めだな。
 ろくに仕事もこなせず、軟弱な心を一人前に病んで、薬に溺れ……
 そして走狗に成り果ててここに戻ってきたって訳だ」

そして嘲笑うように彼らを詰る。

「薬で縮んじまった脳みそで少しでも考えられなかったのか?
 冒険者になり損なったお前達が、俺達のような「本物」に勝てる訳がないだろう?
 困るぜ。俺は報酬さえ良ければ大抵の仕事には手を出すが、無償で社会の寄生虫を駆除する趣味はない――」

その粘着質な声に堪えかねて、一人の男が爆ぜるように動いた。
紫電を帯びた槍による刺突。

言うまでもなく、剣と槍では間合いが違う。
槍の長さは、剣の届かない遠間から相手を一方的に攻める事が出来る。
だが――それは双方の使い手の実力が同等ならばの話だ。

重心移動が明け透けだったその突きを、ヴィクトルは体を半身にする足捌きのみで躱した。
そして、細剣を左手に持ち替え、切り払う。

剣と槍では間合いが違う。
しかし攻撃を放つには敵へと踏み込み、更に得物を持つ手を前に伸ばす必要がある。
槍ならば、左手を大きく前に――精緻極める斬撃は、その指を狙い過たず斬り落とした。

剣を持ち替えたのは、半身の状態になる事で自身の間合いを大きく伸ばせるが故だった。

つまりその一撃は、殆ど上半身の動きのみで放たれていた。
下半身は半身の姿勢を取る為に極僅かな動きを取っただけ――まだ大きく動く余地がある。

ヴィクトルが床を蹴り、大きく一歩踏み込む。
そして剣閃――指を斬り落とした男と、もう一人、殆ど同時に膝の腱を切り裂いた。
薬物による痛覚の鈍麻が働いていようとも、構造的に動けなくなれば足掻きようもない。

「おっと、もう二人確保出来ちまった。やっぱり殺していいぜ、コイツら」

53 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/20(金) 04:14:15.86 0
【俺としては避難所の必要性はさほど感じていない。あくまで現時点では、だが。
 それと、改めてよろしくリタリン】

54 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆RSR/QIrjbxbW :2015/11/20(金) 12:22:58.81 O
>「そう言うなよ。簡単な話だぜ。お前が馬鹿で、俺は馬鹿が嫌いだからだ」
「そうかぁ?ガーッハッハッ!
お前それ、誉めすぎだろ!照れるじゃねーか」

―――ドラクマは思った。コイツ、案外良い奴だなと。
エルフは何やら目を潜めたが、照れたのだろう。

―――その後、エルフとラウテが仕事の打ち合わせに入ったようで何やら言い争っていた。
最初こそ話合いに参加しようとするが、すぐ諦めた。
仕方ないのでそこらの椅子を引き腰を掛け、適当な酒を気付け薬がわりに軽く引っ掛ける。
椅子から足を伸ばし、時々組み換えたりしつつ、ぼんやりと聞いていた。
そのうち、話の余りの退屈さに睡魔が刺し、思わず欠伸をし、指で鼻をほじりそうになったタイミングでラウテから声が掛かる。

>「…ドラクマのおじさん、さっきの死体、出して」

「おっ!おう。さっきのてーと、あの“元お客さま”のだな」

―――ドラクマは慌ててそこらのテーブルの下に転がしてあった“ずだ袋”を引き摺り出した。
中身は死体……というか、2、3度しかハンマーで叩いてなかったから一部形状は残っているものの、既にミンチ状態で折り畳まれてはいたが。
まぁ、半分潰れてるとはいえ死体には違いない。
ドラクマが血肉の詰まったずだ袋を床にぶちまけると、得も言えぬフローラルな薫りが辺り一面に拡がる。
この店に日頃から常備されている、“元お客さまを処理する用”の、臭み止めの香水の匂いだ。

「うげぇ!コイツだけは慣れねぇや。ゲロ吐きそうな香水の匂いがプンプンしやがる」

―――思わず眉をしかめ鼻を摘まむ。過度な香水の匂いは嫌いだ。あの時の妻を思い起こすから。
嗅ぎ慣れてるぶん、死体の匂いのがよっぽど好きだった。

―――死体を目の前にラウテが笛を奏でだす。
吟遊詩人としての実力はあるようだ。思わず聞き惚れてしまう。
そしてラウテが弔いでもしてるのかと思い込み、珍しく空気を自ら読んで、目を瞑り片手を腹に添え頭を垂れた。
暫く黙祷していると、カサコソと妙な音がする。
思わず薄目を開けると、死体に何やらたかっているではないか。
思わず目を疑う。
だが、似たのを何度も見たことあるのを思いだし、自己完結で納得する。
―――精霊か悪霊、もしくは東方の小鬼の類いか何かなのであろう。
【続く】

55 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/20(金) 13:23:43.47 O
>「…これはネクラファジー、死体の声を届けてくれる…教えて、薬はどこで買ったの?」
>「キィ! ニニニ西区画ノノ裏路地!ジ!ジ!23時ジジジ! キキィ!」
「???……よくわからんが、よく見ると愛嬌あるよな……コイツら」

>「たぶん正確な情報……待ち伏せ、する?」
―――今のはどうやら何かの情報だったらしい。
適当に頷いておく。

>「まぁ……嘘なら嘘で、その情報には意味がある。いいだろう、確かめに行くぞ」

―――その時いきなり、派手に店の扉が開かれた。
と同時に、エルフがコートの裾を翻し出口へと向き直るのを見た。
まるで、それを予知していたかのような動きだ。
押し入ってきたのは、都合六人のごろつき達。
―――ドラクマは見た。
彼らの視線が酒場の中を見渡し、そしてエルフを捉えた所で止まるのを。
コイツら、異端審問官であるエルフを狙っているなと、直感的に感じた。
ラウテの方を見ると、一瞬目が合う。
思い込みかもしれないが、その様子から、どうやら彼女もその事に気付いているように見えた。

―――ごろつきどもが一斉に駆け出す。
二人のごろつきがエルフに向かうのを見た。
しかし、他の奴らはなぜかこちらに襲い掛かってきた。
エルフと一緒にいたので仲間と勘違いされたのだろう。
まぁ、これから仕事仲間となる予定だったのだから間違いでもあるまい。
手助けするのは構わないが、とりあえず実力的にエルフは放っておいても大丈夫そうだ。
ラウテも本当は助けが必要無いんじゃないかという気もするが。まぁいいだろう。
とりあえず契約したも同然なので庇うことに。
―――ドラクマは咄嗟にラウテの前に滑り込み、腰を落として両腕の籠手をクロスさせ二人同時の剣を下から受ける。
さらに、受け止め身動きできない間、脇から二人同時に刺し込んできたごろつきどもの剣は黒服の下に着込んだ鋼のアーマーで受ける。
派手に破ける黒服!響き渡る金属の反響音。
瞬間!二人の頭をそれぞれの手でわし掴みにし、胸の前で容赦なくかち合わせた。
頭の骨と骨がぶつかる冷酷なる響きが辺り一面に冴え渡る!
ふたりのごろつきの身体はそのまま力を喪い床に崩れ落ちる。
すぐさま立ち上がり、ラウテを護るべくそのまま壁となって待機!
それはまさに、一瞬の出来事であった。

56 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/20(金) 13:48:50.12 O
【―――閑話休題―――このレスは、最後までヘヴィ本編の物語には一切関係ありません。
中の人の個人的な呟きですので、興味ない方は飛ばしちゃって下さい。】

【まず、>>54は酉間違えちゃいました。ゴメンなさい。原因はコピペでなかった為です。】

【ラウテさん。ヴィクトルさんの言うように、避難所の必要性は感じられませんね。
私が言うのも何ですが。
あっても無くても、どちらでも構いませんよ。】

【リタリンさん来て下さってありがとうございました。私からもよろしくお願いしますね】

【皆さんには、私の長文が過ぎたが為にスレが見苦しくなっていた事をお詫びしておきますね。】

【私ごとですが……ネットに書き込んでたツールであるガラケーが遂にぶっ壊れちゃいました。
その後、何とか中古で同じブツを手に入れたんで現状書き込めてはいますがね。
一時は、皆さんにお別れの挨拶もできずにいきなりFOしてしまう危機でした。】

【前兆はあったんですよ。書きながら携帯から火花音がバチバチいってましたからね。
私がドラクマを早く殺したがっていたのはその焦りからです。】

【今のガラケーも中古品でそう状態が良いわけでもないので、先に言っておきますね。
今後私がいきなりFOしたりしても、アイツ逃げたなと思う前に、まず同じ要因を疑って頂きたいですね。
その時が来たら、同僚の皆さんには、決して焦らず、ドラクマを壁役として利用するなり、いつの間にやら話からFOさせたり、最悪、殺してちゃっも構いません。
残りの皆さんでスレを続けて頂ければこれ幸いです。】

【まぁ、びっくりさせたかもしれませんが私には今のところFOする予定はありませんので。とりあえず、心配しないで下さい。】

57 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/20(金) 22:21:19.53 0
「…殺し屋…じゃない、でもラウテたちを襲いに来たのね」

都合六人もの男たちが、店内へと武器を掲げて押し寄せてくる。
握った武器にはある者は炎を、ある者は紫電を纏わせている。
魔法によるエンチャント、インスタントの形容魔法に違いない。
魔法を扱う者として、ラウテには簡単な魔法に対する知識があった。
そうでなくても、戦いの中で悪魔がラウテに色々な情報を囁いてくれる。
悪魔に授けられた膨大な知識は、彼女にとって頼れる武器となるのだ。

簡単な魔法であるのなら、ラウテもそれなりには使える。
魔法の知識のない相手が振るうエンチャント武器、それなら対策は簡単だ。
ラウテが吹き鳴らした音色は、空間の魔素を固定する魔法だった。
それにより何が起こるか……振り回した武器のエンチャントが、空中に張り付いたかのように剥がれる。
本来は飛来する魔法を防御するための魔法なのだが、そういった使い方もあるのだ。
ただし音楽魔法は、音色を奏でている間しか発動しない。
空間に固定されたエンチャントは、笛の音が止むと共に床に落ちて消えた。

「これで大丈夫……ラウテも戦えるよ」

笛を仕舞い取り出したのは一対のダガーナイフ。それを構えると、ラウテは駆け出した。
相手の攻撃を文字通り体で受け止めたドラクマの小脇を滑るように潜る。
一瞬で懐に潜り込んだラウテは、それに反応される前にダガーを振るった。
正確に心臓を刺突された男が、声を上げることもなく床に崩れ落ちる。
それを見届けもせずに、ラウテはもう一振りのダガーを投げつけていた。
その刃を喉に受けた男もまた、悲鳴を上げることも出来ないまま息絶える。

ラウテはゆっくりと二人の男に刺さったダガーを回収し、血を相手の服で拭った。
斬撃より刺突に特化したダガーは、力のない彼女でも簡単に扱うことが出来る。
ただし一度刺してしまうと抜くのに力が必要とされるため、隙の多い武器でもある。
だからラウテは、確実に仕留められる相手にしかダガーを振るわない。
念のために複数の小さな投げナイフを懐に忍ばせているが、威力が低いのが難点だ。
だから彼女は一人ではあまり戦わない。仲間の援護があってこそ、その真価が発揮されるのだから。

戦いもあっという間にかたが付き、一行はヴィクトルの捕まえた男に尋問を行う事にした。
ネクラファジーに死体から情報を聞き出すのは、生憎ネクラファジーがお腹一杯な為不可能だったりする。
まぁ、知性の低いネクラファジーを用いるより、生きた人間に情報を聞き出すほうが遥かに効率的だ。
拷問に最適なモンスターにあてがない訳でもないが、ここは手馴れているヴィクトルに任せたほうが良いだろう。
何故手馴れているのか……そんな疑問を覚えながら、ラウテはカウンターを乗り越え使えない店主をまたぎ、ミルク瓶を探すことにした。

58 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/20(金) 22:23:24.72 0
【避難所に関しては現時点では必要ないと判断しました。必要なら声を掛けてください】

59 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/21(土) 04:53:10.05 0
「……略式ではあるが、これより異端審問を開始する」

生け捕りにした二人を椅子に縛り付け、酒場の中央に配し、ヴィクトルはそう宣言した。

「お前達は魔女ではない。だが魔女の齎す大罪をその身に受け入れ、溺れ、神より賜りし魂を穢れさせた。
 その穢れは到底、この現世においては拭い去れるものではない。
 お前達を清め浄化出来るのは地獄の炎に他ならない。故に、死罪が相応しい」

宣告と同時、細剣が閃く。
縛り上げられた男達の脚の皮膚が削ぎ落とされる。
薬物によって多少は痛覚が鈍化しているとは言え、耐え難い痛みが二人を襲う。

と、ヴィクトルがコートの内側に左手を潜り込ませた。
潜ませてある余剰分の瑞鉄が拷問器具を形作る。
首を完全に固定し、同時に口を強引に開かせる為の器具だった。

ヴィクトルは二人にそれを取り付けると、削ぎ落とした皮膚を細剣の先で掬い上げる。
そして何が起こるかを察して藻掻く二人の口へと押し込んだ。

「よく味わうんだな。これがお前達の最後の晩餐となる」

細剣は更に男達を切り刻み、皮膚を削ぎ、その口へと押し込んでいく。
二人は必死に吐き出そうと抵抗をするが、首を固定されていてはそれにも限界がある。
下手に逆らっても、より多くの皮膚を口に詰め込まれ、息を詰まらせる事になるだけだった。

「さぁ、次はどこを食べたい?さっき斬り落とした指か?
 目玉か?それとも陰部か?慌てるなよ、全部食わせてやる」

男達は初めはヴィクトルに対して憎しみと怒りの視線を向けていた。
だがすぐに、それらは恐怖によって塗り潰された。
やがては懇願――殺してくれとせがむような目で彼を見つめるようになる。

「おっと、すまない。肉に火を通してやるのを忘れていたな」

しかし、ヴィクトルはそれすら許さない。
エルフは魔法と狩りに強い適性を持った種族である。
彼は左手に炎を灯すと、細剣の刀身をそれで炙る。

そして二人の傷口にそれを押し付ける。
喉の裂けるような悲鳴と、肉の焼ける音がして――傷口の止血が完了した。
痛みは倍増し、しかし死という逃げ道は塞がれた事になる。

「……恨むなら、お前達を誑かした魔女を恨め。これは浄化であり、仕事だ。
 お前達は虫ケラだが、だからこそ、俺だって虫ケラの手足をもいで楽しむ趣味はない」

嘘である。彼は人を甚振る事に静かな愉悦を覚えている。
だがその嘘には意味があった。

拷問は更に続いた。
男達は既に声にならない呻き声と共に、涙を流してすらいた。

「……いいか。もう一度言うぞ。恨むなら、魔女を恨め。
 下らん薬物でお前達を冒険者から飼い犬に貶めたのは、堕廃の魔女だ」

と、不意にヴィクトルが彼らの口枷を外す。
そして男達の前に膝を突き、彼らの眼を見据えてこう続ける。

「犬になるべきは奴の方だと、そう思わないか?」

60 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/21(土) 04:54:07.26 0
稚児のように泣いていた二人が、呆けた表情でヴィクトルを見返した。

「俺の目的は堕廃の魔女だ。決してお前達じゃあない。
 分かるか、俺はお前達を殺そうが生かしておこうが、どっちでもいいんだ。
 お前達はどうだ?……堕廃の魔女がどうしても生きていないと困るのか?」

親が子を諭すような穏やかな声音だった。

「違うだろう。お前達は薬が欲しいだけだ。だから選ばせてやる。
 魔女の犬としてここで死ぬか。それとも俺達に手を貸して、魔女をお前達の犬にするか」

剣閃――二人を拘束する縄が切り落とされた。

「勿論、最終的には俺が魔女を殺す。それは決定事項だ。
 だが……その前にお前達が、魔女に何をさせるのかは自由だ。
 過労死するまで薬を作り置きさせてもいいし、製法そのものを吐かせてもいい」

提示されたのは、死か、薬物か。
極大のデメリットと、無限のメリット――男達がそれを受け入れない理由はなかった。
そして――



「――おおい!リタリン!リタリン!帰ってきたぞ!約束のハーブをくれよ!」

西区画の裏路地で、魔女狩りに屈した男達が魔女の名を呼ぶ。
彼らは姿の見えない彼女に見せつけるように生首を掲げている。
少女に胸を刺され死んだ男のものだ。
炎で炙られ、一見しただけでは同一人物だとは分からないよう偽装されている。

ヴィクトルは路地を形成する建物の屋上に位置取り、魔女が動く瞬間を待っていた。
もし魔女が現れたなら、男達は彼女を取り押さえようと動くだろう。
もし魔女が現れなかったのなら――それは即ち、魔女の動きを制限出来ているという事だ。
それならそれで、やりようはある。

61 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/21(土) 05:34:17.74 0
「魔法武器で武装した6人が・・・全滅・・・」

酒場での攻防の一部始終を監視していたリタリンは背中にびっしりと汗をかいた。
覗き込んでいるのは杖の先端に配置された水晶球。
索敵用の千里眼の魔法で、ごろつきの一人の視界を投影しているのだ。
送り込んだ私兵たちは、冒険者として大成できずこの街で燻っていたごろつきだ。
一線で活躍する冒険者や正規の兵士、魔女狩りのような法執行者には練度において比べるべくもない。
しかし彼らとてその辺の魔物程度なら始末できる技量はあるし、なにより今回は武器が違う。
インスタントとは言え、エンチャントのかかった魔法武装を全員が装備。
さらに人数比で言えば実に倍する戦力で襲撃をかけたにも関わらず、ものの数秒で片づけられてしまった。

「魔女狩りって一人だけじゃなかったのね・・・」

敵は三人。そのいずれも恐ろしく手練だ。
レイピアを装備した短足エルフはいち早く襲撃を察知し、言葉巧みに挑発して相手に抜かせて後の先をとった。
己よりも遥かにリーチに長じる槍を相手取って、手指を切り落とすその剣閃は精緻にして無比。
重装甲の大男に至っては物理攻撃がまるで通用しちゃいない。それは単に鎧が分厚いからというだけが理由ではない。
自身のどの部位がどんな種類の攻撃をどこまで耐えられるかを把握し、信頼し、適切なダメージコントロールが不可欠。
何も考えていないように見えて、その立ち振る舞いは戦闘センスの塊だ。
そしてなにより厄介なのが一味で最も小柄な若い少女。おそらくかなり高度な魔法使いだ。
未熟とは言えリタリンの最も得意とするエンチャント魔法を容易くディスペルし果せたあの笛魔法は脅威の一言。
その上乱戦の中で投擲した短剣を喉笛という小さく動き回る的に二度も正確に命中させた。
昔魔女狩りに遭ったときは、すぐに投降した為攻撃されることはなかったが・・・
あのとき徹底抗戦を選んでいたら、今頃あの世でハーブでも栽培していたことだろう。

「迎撃とか言ってないでまじに逃げたほうがいいかもねこりゃ」

真面目に夜逃げの算段をたてていると、水晶の中の景色に動きがあった。
短足エルフが私兵の生き残りを拘束して拷問を始めたのだ。
たまらず一人、禿頭の男が悲鳴じみた声を上げる。

『は、話が違ぇぞリタリン!こんなに強くて残虐な連中が相手なんて聞いてねえ!
 ハーブ一袋なんかで割に合うか!おいどうせ魔法で聞いてんだろリタリン!おい!』

「げえっ!お馬鹿・・・!」

逆上したごろつきが怒り心頭と言った様子でリタリンの名を呼んだ。
まあ彼からしてみれば裏切られたも同然なので気の毒ではあるが、こちらも冗談じゃない。
魔法、特に呪術に長ける者は相手の名前だけでも呪いにかけることができると言う。
転じて索敵の魔法や探査の魔法においても、個人名は重要な手がかりになり得る。
魔女狩りなんて人探しの専門家みたいなものだから、その手の魔法を習得していても不思議はない。
そうでなくとも、リタリンという名を知る者を芋づる式に手繰れば早晩彼女まで辿りつく。
一刻もしないうちにこの隠れ家を見つけ出すだろう。これで逃げ果せるという線はなくなった。

「落ち着くんだよ・・・防衛戦なら守るほうが有利・・・」

『わかった!話す、なんでも話す。雇われたんだ、あんたらを襲えって・・・。
 頼んだのはリタリンっていう魔女だ。西区のスラムでハーブ売りをやってる。
 苔みたいな色のローブと死神みたいな黒い髪をした冴えない女だ。肉付きも悪い。
 なあ、これだけ話したんだ、もういいだろ帰らせてくれよ――』

ごろつきが好き勝手べらべら喋るのを水晶越しに聞きながら、リタリンは陣地の構築にとりかかった。
拠点となるのは裏路地を30メートルほど行ったつきあたりに位置する廃屋だ。
二階建てで、少し前まで無許可の私娼が客としっぽりする為のヤり部屋だった。
流れ者の冒険者が持ち込んだ性病が流行って娼婦は壊滅してしまったが、その時の名残で家具などは残っている。
その二階に上がったリタリンは、杖で半径3メートルはある巨大な魔法陣を描いた。
何年も開いておらずすっかり黴臭くなった魔導書を開き、目的のページを探し当てる。
ろうそくのおぼつかない灯りの下、呪文を訥々と読み上げる。

62 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/21(土) 05:34:45.47 0
「えーと・・・『黄昏の中に在りし凍える不幸よ、形となりて願う。
 汝の力、要塞を持って愚かなるものに罰を与えよ。我は従う。汝の力による制裁を。
 ――城塞と化せ、我が封土』」

魔法陣が昏い輝きに満たされ、魔力の線が無数に床を奔って廃屋を覆っていく。
ひび割れた壁は鉄板に覆われ、窓は鉄格子と有刺鉄線を纏い、屋根には無数の棘が生える。
内装も『城塞』として再構築され、吊り天井や落とし穴のような罠が生み出されていく。
極めつけは、裏路地の入口から廃墟へ向かう人影へ自動で発射されるクロスボウだ。
これが五段十列の計50発が生成され、接近者へ文字通り矢の雨を降らして撃滅する構えである。
さらに路地の道中には触れると爆発する魔法が無作為に敷き詰めてある。

「つ、疲れたぁ・・・」

軍隊が遠征に出た際に現地で防衛拠点を構築する為の『城塞化』の魔法。
本来なら従軍魔導師が数人がかりで行う大魔法だ。
廃屋一つだけとは言えもともと多くないリタリンの魔力は殆ど空になってしまった。
しかしこれは絶対に負けられない戦いだ。彼女も奥の手を使う。
ローブの中から取り出した、小さな袋に入ったハーブの粉。
リタリンはそれを親指の爪の上に耳かき一杯分ほど取り出して、鼻で吸い込んで投与した。

「あ"あ"ー効いてきたああああああ」

肩をぶるぶると震わせながらリタリンはうめいた。
今摂取したのは一時的に魔力を引き上げる効力を持ったハーブだ。
向こう何日かの魔力を前借りする形になるので、効果が切れた後はしばらく無能になり下がる諸刃の剣。
だがこうでもしなきゃまともに戦えないのがリタリンであるし、この一戦で魔女狩り連中を撃滅してやれば問題ない。

「『冷たき闇を滅する縋るものよ、この音に応え従う。我は願う。汝の力による安らぎを。
  ――獣よ、汝の疾走を歓迎する』」

召喚の魔法。
呼び出したのは身の丈2メートルを超す人型の妖獣、狼にも似た頭部の下は闇色の無音甲冑。
宵闇に紛れ、その鼻で獲物をどこまでも追跡し音もなく狩り殺す地獄の猟犬だ。
艶消しで染め上げられた弩と山刀を持ち、近遠双方に対応可能な先兵である。
名を『黒狼』。
そこまで準備を終えたところで、路地の外に動きがあった。
ごろつきが帰ってきたのだ。

>「――おおい!リタリン!リタリン!帰ってきたぞ!約束のハーブをくれよ!」

二階の窓からバレないように外を伺うと、禿のごろつきが生首を手にこちらを呼んでいた。
首はご丁寧に顔を焼いてあり、人相の区別がつかないようになっている。
偽装工作が見え見えだ。騙される堕廃の魔女ではない。
リタリンは自堕落な女だ。自堕落故に、二度手間という非効率の極みが許せない。
首検めなどしなくとも、魔法で監視すればちゃんと仕事してきたかどうかは瞭然だ。

(陽動・・・かな?どこかから監視してるとすれば、下手に顔出すのは下策・・・)

魔女狩りと言えど本人確認するまでおいそれと殺しはできないだろうから、狙撃の心配は薄い。
非殺傷系の魔法が飛んでくるかもしれないが、曲がりなりにもリタリンは魔女、魔法耐性には自信がある。
まずは敵の狙いを確認する必要がある。そこで、黒狼に取りに行かせることにした。
地雷魔法に引っかからないルートを歩いて妖獣がごろつきへと近づいていく。
屋根に偽装された50連クロスボウは廃屋から離れていく者には反応しないようになっている。
黒狼には前進しながら索敵を指示してある。怪しい人影を見つけた瞬間、禿を無視してそちらに弩を放たせる。
敵は三人、相手取るには三重に策を弄さねばなるまい。


【書き溜め中に投稿があってびっくりしましたが、軌道修正なしでいけそうです。】
【魔法での監視は書き溜め範囲内だったので、ヴィクトルさんの策が不発になってしまう形になりすみません・・・】

63 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/21(土) 10:37:58.89 0
>>62
単純に三人が動いた後に敵役が動く、の構図の方がリタリン、ラウテ共にやりやすいだろうと思ったんだ
勿論俺自身も
だから素早く済ませて「勘違い」って事にするつもりだったんだが――面食らっちまったならすまないな

64 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/21(土) 12:01:11.68 O
―――ドラクマの目の前で、エルフが生け捕りにした二人を手早く椅子に縛り付ける。見事な手際だ。
「手伝おうか?」
―――一応言ってはみたものの、言外に却下された。
異端審問官さまには異端審問官さまなりのやり方があるのであろう。
だが、二人を酒場の中央に配する際には少々手伝う事となった。
椅子やテーブルの配置換えには、明らかに人手が必要だったからだ。
運んでる最中、ドラクマとしては珍しく、少々エルフの様子に疑問点を感じた。
何故なら、これまで見てきた異端審問官らはみな、独りきりでは行動していなかったからだ。
それは異端審問官さまは、職業柄、大掛かりな残酷ショーを大衆に見せ付けるためで、町から町へ、大掛かりな拷問器具などの仕掛けを運ばねばならないという事情のせいであった。
道具を運ぶ為には、最低でも助手が1人は必要な筈だ。
独りでいる異端審問官など前代未聞のこと。
だが、その疑問は処刑が開始されるや否や、頭の隅から綺麗さっぱり吹き飛んだ。

―――エルフの異端審問官さまが処刑開始を宣告する。
ドラクマは、以前から異端審問官さまの仕事には興味津々だったもので、これは一瞬足りとも見逃せまいと、テーブルと椅子を配置し、観覧を決め込んだ。
少し手伝ったせいか、仲間と認めたからか、はたまた単に面倒なだけなのかは知らないが、エルフの異端審問官さまは、決して現場からの観客の退出を求めなかった。
騎士団で転戦を繰り返していると、自然とあちこちに行く事となる。
ドラクマの騎士人生に於いて、異端審問官に出くわした事は一度や二度どころではない。
だからこそ、ドラクマは心の中で思った。

「異端審問官さまってのは、どいつもこいつも目立ちたがりしかおらんのか?」

―――騎士道の慣習で、自分が座るよりも先に椅子を引き、少女に着席を勧める。
レディファーストっていう奴だ。

「よぉ小娘!飛びっきりの残酷ショーの特等席を用意しといてやったぜ。よけりゃあ座んな。
店員連中は逃げちまったようだから、ちゃんとした飯は出せんがな。
なぁに、酒とつまみならたんまりあるさ」

―――一瞬、どこからか奇妙な視線を感じた。
だが、それが何を意味するかまでは解らないし、取り敢えず殺意は無いようなので、特に気にせず放っておく事にした。
【続く】

65 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/21(土) 14:25:04.64 O
「懐かしいな、おい。
かつて俺さまも、戦場で敵にとっ掴まり手酷い拷問をうけたものだ。
それも、一度や二度ではない。
中でも印象的だったのはだな……」

―――視線を感じる。
今度は流石に、その視線が誰ので、そして何を意味するかに気付いた。
目の前のエルフがこちらを、殺意を込めた目付きで睨んできたからだ。

「うむ、申し訳ない。不粋な水を差したようだな。
愉しいショーはこれからだってのに、この場を追い出されては敵わんからな。
……以後、大人しく観覧に徹することを、我が騎士道にかけ誓おうではないか」

―――騎士の儀礼に乗っ取り、胸に手を当てエルフに一礼をするドラクマ。

―――何だかんだで、エルフの異端審問官さまによる拷問ショーが始まる。
エルフは二人に拷問器具を取り付けると、肉を切り削ぐ音と共に二人の口へとグイグイ押し込んでいく。
受刑者の、声にならぬ悲鳴があがる。

「うげぇー!痛そうだ。あんなの見ちまったら、食事もろくに喉を通らんぞ」

―――と、手にした食料をバクバク食いながら、椅子から出した足を組み換え、感想を述べるドラクマ。
拷問を見るのに夢中な為に、何を手にしてるか口に入れるまでは本人ですら判らなかった。
……かと思えば、

「おい、小娘!蜂蜜酒がお奨めだぞ。甘いし、喉に良いそうだ」

「おい、小娘!火ねずみのジャーキーが意外とイケるぞ。騙されたと思って食ってみろ」

―――と、ラウテに立て続けに食い物を薦めたりした。

―――そうこうしてるうちに、エルフの拷問ショーは突如終わりを告げた。
急に優しい声音になったエルフの異端審問官さまが、二人に何やら語りかけるや否や、ロープを一刀両断し解放してしまったのだ。
酒場からふらふらと出ていく二人の受刑者。
それを見て思わず椅子から立ち上がってしまうドラクマ。

「―――お、おい貴様!あれで良いのか?せっかく捕まえたのに。
このままではあやつら、みすみす逃がしてしまうぞ」

―――すぐ、エルフに質問を投げつける。
それはドラクマからすると、至極まともで当然な、疑問の帰結点だった。

【遅ればせながらラウテさん。
暫定的とはいえGM就任おめでとうございます。
どういった形になるか私には全く予想できませんが楽しみにしてますね】

66 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/21(土) 21:12:56.64 O
―――魔法を使えぬドラクマとしては、新たに仲間となったエルフとラウテに、ただ、ついていく他はなかった。
それはまさに、究極の受け身行動。
だが、一見そうは見えぬ。
ドラクマは見栄っ張りで自己主張が激しいので、そうは見えぬのだ!

―――それは実によくある話だった。
騎士団の形を成しているとはいえ、超重騎士はあくまで敵の攻撃を引き受けるための人の盾。
国からすれば、超重騎士団は、いつ死んでも構わぬ人材ばかりを集めた、ある意味、人材の墓場なのである。
魔法を使える貴重な人材など、基本的に団内には居やしない。
味方の……他の騎士団の同志や、外部の魔法使いや聖職者の魔法や加護を受け、行動する。
それは超重騎士団の基本理念であり、実に当たり前のことだったのである。

―――前に、ドラクマが言った、馬鹿は誉め言葉という意味。
それは単に彼がトロいからとか、脳筋だからとか、それが理由ではない。
仲間同士でお互い馬鹿と呼びあうことは、古くから超重騎士団内で徹底されてきた慣習だったのである。
彼ら全てに知恵が無いわけではない。
騎士団内では余計なことは考えぬことこそが美徳とされてきたのだ。

―――超重騎士団に求められるは、タフさと腕力、それと覚悟と忠誠心のみ。
賢さは隊長格だけが持っていればよい。
それも最小限、作戦を遂行するに値するレベルで十分。
何故かと言えば、頭の良い輩は敵わぬとなったら絶望して逃げだすからである。
それでは最後まで人の盾は務まらない。
ならば賢くて尚、死にたがりの奴等に任せればよいと思うかも知れぬが、そういう輩は死ねと言われれば無駄に特攻し自らさっさと散ってしまう。
国からすれば、それでは長く使えない。せっかく金と手間暇かけて訓練してもコストの無駄なのだ。
人の盾が至上任務である超重騎士団としては、少しでも長持ちし人を庇い続け得る人材を常に求めていた。
だからこそ、大した根拠もなく自分は無敵で死なないと本気で信じ込んでいるような勇猛果敢馬鹿野郎や、命よりも金が大事な俗物馬鹿野郎、命令は聞くが後は何も考えない本物の馬鹿、のようなだいぶ欠陥人間の方が騎士団内で尊ばれたのである。
……ついこの間までは。
ドラクマもそうだったのである。
だが既に、ドラクマはその騎士団の一員ではないのだ。

67 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/21(土) 22:17:53.22 0
ラウテはドラクマと共に椅子に腰掛け、ヴィクトルの行う拷問の様子をのんびりと見物していた。
なるほど、なかなかの手際である。ここに至ってラウテは、彼が異端審問官であることを把握する。
魔法による罪を裁く者。旅の途中で何人か見かけたが、そのいずれもヴィクトル程強そうには見えなかった。
敵に回せば苦労するだろうが、味方であれば安泰だ。対魔法使いとしてはうってつけだろう。
ジョッキに注がれたミルクをちびちびと飲みながら、ラウテはそんな風に思考を巡らせていた。

>「おい、小娘!蜂蜜酒がお奨めだぞ。甘いし、喉に良いそうだ」

「…ごめんなさい、お酒はお母さんに止められているの。まだ若いからって…」

>「おい、小娘!火ねずみのジャーキーが意外とイケるぞ。騙されたと思って食ってみろ」

「そっちは欲しい……はぐ、おいしいね」

そんな具合に、ドラクマはラウテに次々と食べ物を薦める。
ラウテは思った、この人は私を太らせて食べる気なのだろうかと。
そんな事を思いつつも、薦められるがままに食べ物を口にするラウテ。
そろそろお腹一杯になってきた頃に、ヴィクトルの拷問のほうに動きがあった。

>「違うだろう。お前達は薬が欲しいだけだ。だから選ばせてやる。
>魔女の犬としてここで死ぬか。それとも俺達に手を貸して、魔女をお前達の犬にするか」

その言葉と共に、連中を拘束していた縄が断ち切られる。
拷問の最中に解放されたのだ。驚いたが、ラウテにはその意図がすぐに理解出来た。

>「―――お、おい貴様!あれで良いのか?せっかく捕まえたのに。
>このままではあやつら、みすみす逃がしてしまうぞ」

「ううん、あの人は連中を駒として使うつもり…だから逃がしたのね?」

その答えは的中していた。ヴィクトルは男たちに、死んだ男の生首を焼いて持たせている。
おそらくは囮として使うつもりなのだろう。もし騙せなくとも、相手の戦力を計る駒にはなるはずだ。

「それじゃあ、ラウテたちも行こう…。待たせるのも悪いものね」

三人が目指すのは、闇の蔓延る西地区の裏路地。
リタリン、と言ったか。彼女はおそらく逃げられない事を悟り、陣を構えて待ち伏せているに違いない。

68 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/21(土) 22:19:36.71 0
位置を悟られないよう生首を持った男を尾行し付いて来た一行。
ヴィクトルは屋根の上から、ラウテは地上から追跡していた。
闇深き路地なら、隠れる場所には事欠かない。追跡は実に容易であった。

>「――おおい!リタリン!リタリン!帰ってきたぞ!約束のハーブをくれよ!」

男は大声で魔女の名を呼ぶ。目的地は裏路地の行き止まりにある建物だろう。
傷だらけの足を引きずるように歩く男の前に現れたのは、漆黒の鎧を纏う狼のような怪物だ。
あれは黒狼だ、と魔笛が囁く。魔法により生成される召還獣の一種だ。
戦闘力は大したことはないが、魔法生物の特徴としてなかなかにタフらしい。

ラウテの用いる召還魔法と、一般の魔法使いが用いる召還術は根本から異なる。
連中が用いるのは多元世界より魔力で構成された生物を招く召還術であるが、ラウテは全く違う。
ラウテが召還出来るのは、自ら刃を交えた野生のモンスターだけだ。
彼女はこの数年間で膨大な数のモンスターを狩って来た。そして契約を行うのだ。
契約を交わし魔笛の力で配下となったモンスターは、それ単体を自由に召還出来るばかりではない。
そのモンスターの子々孫々に至るまで、契約は有効となるのが特徴なのだ。
今はまだ殖えたモンスターは少数だが、時が経つにつれて無限のモンスターを使役出来る恐ろしい魔法である。

そんなモンスターの中から、ラウテは一匹の一つ目蝙蝠を召還した。
もちろん笛の音は極力抑えた上でだ。この程度の芸当は簡単である。
一つ目蝙蝠は戦闘能力は皆無だが、索敵能力と魔法の解析に優れた能力を持つ。
相手が魔女であるなら、何らかの工作をして待ち伏せているに違いない。
それを見越した上での召還だった。早速周囲を飛び回らせ、魔法の気配を探知させる。

「…この辺り一帯、魔女のテリトリになってる……むやみに近づくのは危険かも」

城塞の魔法を解呪する方法は、今のところこれといって策はない。罠をひとつひとつ潰すのも面倒だ。
推定される相手の魔法は何であるか、彼女は考える。迎撃の魔法か、それともトラップか。
いや、今最も優先されるのは黒狼の対処だ。おそらくこっちの居場所が見つかるのも時間の問題だろう。

「黒狼の視界を一時的に潰すね……あとは何とか倒して」

そう言ってラウテが投げたのは煙玉だった。発するのはただの煙ではない。
目や鼻に作用する刺激性の強い薬草を混ぜ込んだ煙幕だ。
煙として視界を覆うことはないが、吸い込む事で効果を発揮する。
それを吸い込んだ黒狼は、悲鳴を上げてもがき苦しむ。
それを見届けたところで、ラウテは小さく風を起こし突撃の道を作り出した。

【投稿順を変えたい場合は、前以って申告をお願いします。私としては特に順序を変えても構いません】

69 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/21(土) 23:15:44.34 0
【>>ヴィクトルさん  ターン回りどうされますか?元の順番で私の番にしますか?】

70 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/21(土) 23:37:45.74 0
【いや、俺に先に行かせて欲しい
 無断で先行したのは重ねて申し訳ないと思っているが
 GM→敵役→その他の順番が今後もスレを続けていく上で一番やりやすいんじゃないか……と俺は思っているんだ。すまないな】

71 :リタリン♯1456:2015/11/22(日) 00:09:04.48 0
>>70
【仰る通りだと思うのですが、
それだとGM様→私→各PL様という順番になりませんか?
 つまり次が私ということに…】

72 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/22(日) 00:12:22.07 0
【……その通りだ。悪い風邪でもひいたんだろうか。
 傲慢なエルフの渾身のギャグだったと思っておいてくれ。先にお願いする】

73 :リタリン♯1456:2015/11/22(日) 01:57:42.23 0
【了解いたしました】

74 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 01:59:49.59 0
>>73
酉、割れてる割れてる

75 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/22(日) 02:40:52.59 0
【すみません!こうですね】

76 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/22(日) 05:29:20.76 0
「来た。・・・使い魔による斥候だねえ」

水晶に描かれる新たな魔力の反応をリタリンは確認した。
『城塞化』はいくつかの魔法を複合したパッケージになっており、
外壁強化や迎撃兵装の生成と並んで範囲内の反応を探る索敵の魔法も標準搭載されている。
ちなみに籠城用に拠点居住性を上げる浄水や煮炊きの魔法も一揃い配備済みだ。
とりわけ軍用魔法というのは特定の状況における要求事項を包括的に自己完結できるようなデザインが主流だ。
その分魔力消費も大きいのだが、開発した王都の才気溢れる宮廷魔導師にそのあたりの配慮を求めるのは酷であろう。
御託が長くなったが、つまりリタリンは戦闘前の情報戦において遅れをとっていないということである。
警戒網が捉えたのは小型の飛行型使い魔・・・存在構成が召喚獣のものではない。在野の魔物を調伏して使い魔とするタイプか。
索敵魔を飛ばしている以上、迎撃装置については看破されていると見ていいだろう。
しかしタネが割れているのと無効化されているのとは別問題、おいそれと近づけない現状に変わりはない。

黒狼が禿のもとへ辿り着く。その瞬間。
警戒範囲外の物陰から何か小さな物体が黒狼の前に投げ込まれた。
それは小気味いい音を立てて破裂すると、薄い煙のようなものを吐き出した。

「しまっ・・・煙幕!」

いや、それにしては色が薄い。
しかしそれを吸い込んだ黒狼が激しくむせて苦しみ始めた。
催涙作用を持つ煙のようだ。黒狼はもがきながら一歩後退。
その動きを迎撃装置が『接近者』として感知し、クロスボウが一発屋根の下から発射された。
それは黒狼の肩口を掠めて禿の持っていた生首に突き刺さり、男の手から弾き落とす。
頭蓋骨を矢で貫かれた生首。禿は悲鳴を上げて後ずさる。
抜け目なくエンチャントされていた炎熱魔法により脳味噌が沸騰しピーっと吹きこぼれた鍋のような音を立てる。
あたりに肉の焼ける匂いとも違う、脳漿の蒸発した汚臭が漂った。

「でも・・・居場所はわかった!」

眼と鼻を潰された黒狼であるが、まだ耳がある。
更に禿にかけた千里眼の魔法と組み合わせてリタリンが手動で指示を与えることも可能だ。
そして、この攻防で煙玉の出処、すなわち敵の潜伏位置はわかった。
息を止め眼を閉じることでなんとか動けるようになった黒狼に行動の指示を送る。
煙玉の出処に対し装備した弩で射撃しながら音を頼りに接近して山刀での斬撃。
もちろん黒狼の装備にはそれぞれエンチャントが仕込んである。
まず弩の矢には触れたものを凍らせる氷雪の魔法。
これは仮に的を外したとしても突き刺さった地面を中心に凍らせ、敵の足を止める効果がある。
矢へのエンチャントは明らかに笛使いの少女への対策を意識している。
ディスペルされるまえに撃ち放ってしまえば問題ないという考え方だ。
そして山刀の方には稲妻の魔法をエンチャント。
これは鎧男への対抗策。鎧で防御しようとも、あるいは回避しようとも、鋼は稲妻を集めて通す性質がある。
加えてあれだけの重装甲、動くだけでも音が出て黒狼には戦いやすい相手だろう。

黒狼を突破されても、まだ地雷の魔法と49連となったクロスボウの迎撃装置は健在だ。
しかしリタリンは未だ敵の全容を把握できていない。
黒狼の索敵器官を潰されたことで、認識外の伏兵――例えば短足エルフの所在は分かっていないのだ。
敵方の索敵魔も優秀らしく、こちらの警戒網を把握し察知できないぎりぎりのところに潜んでいる。
追加で索敵魔法を使う余裕は、リタリンにはなかった。

77 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/22(日) 06:18:05.05 O
【まず、私の番では無いのにここに私的意見を投下した事をお詫びします】

>>75リタリンさん、>>74さんが酉割れてると騒いでらっしゃるのは、悪意ある“成り済まし”が出る可能性があるからですよ?】

【トリップは名無し掲示板での、所謂、国民マイナンバーや、銀行の暗証番号のようなものです。
悪用される可能性も考慮して下さい。あなたは如何にも無防備過ぎます】

【実は昨夜、私もROMりながら気付き、あなたに忠告しようか悩みました。
ですが、御自分で既に気付かれてる場合、変にプライドを傷付けてしまうといけないと思い黙ってました。】

【次にあなたがレスをするまで様子を見ようと思ってるうちに眠ってしまい、名無しの親切な方に(良い意味で)先を越されてしまいました】

【同僚なのに、気付いていたのに、早めに指摘せずにごめんなさいね。
出来ればあなたのトリップは早めに変えた方が良いと思われますが、如何でしょうか?】

78 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 07:14:16.98 0
…避難所建てれば?

79 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 09:48:00.28 0
なんでこう高圧的な言い方しか出来んのかね
【】内でもなりきりしてるなら感じ悪くなってるだけだよ

80 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 10:36:07.72 0
はい、続きはマボダイでどうぞ

81 :リタリン:2015/11/22(日) 13:26:57.89 0

>>77ドラクマさん
ご忠告ありがとうございます
たしかに仰る通りですね…
携帯からの投下に慣れていなくて焦ってしまいました
シャープを打ってるのにトリップが発動しないんですよね
次パソコンから書き込む時にトリップキー(シャープの後の文字列)を変えておきます
お気遣い痛み入ります


82 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 13:52:10.59 0
シャープが全角なだけ、半角で打て

83 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 14:05:42.31 0
全角と半角を打ち間違えただけでここまで言われる野なw

84 :リタリン ◆UIxKy8r6BM :2015/11/22(日) 14:26:45.59 0
【出来ました!ありがとうございます!!】

85 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 14:36:20.50 0
出来てねぇwwww

86 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 17:09:25.79 0
いや酉変えたんだから正解だろ

87 :名無しになりきれ:2015/11/22(日) 17:13:38.92 0
>>リタリンさん

もう一度トリップ変えてみてください
上のは騙りです

88 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/22(日) 17:39:19.04 0
【すみません、あまりスレ汚しになってはいけないのでこれを最後にします
 そもそもトリップキー(シャープの後の文字列)を間違えていたみたいです
 パソコンの方は自動で保存されるので自分で覚えていなかったのが原因です
 本当のトリップキーは秘密のままなのでこれを使用します
 大変失礼致しました!】

89 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/23(月) 00:19:36.01 O
【リタリンさん。あなたを謝らせたりしてごめんなさい。
あなたは別に悪くありません。
ですからどうか、頭をおあげ下さい。
あなたはただちょっとしたミスをし、通常の対応をしただけの事。
あなたは何も悪くはないのです。
今回誰かが悪かったとすれば、それは間違いなく私でしょうね。
私はあくまで善意のつもりでしたが、後から考えると結構あなたに酷い仕打ちをしたのですね。
酉を間違えるぐらい誰でもよくある事だというのに、私は必要以上に騒ぎ立て、上から目線の講釈を……しかも長文で、一気に垂れ流してしまいました。
お恥ずかしい限りです。
そのせいで、リタリンさんには、本来不要な、罪の意識まで持たせてしまった……同僚としてはあるまじき行為でした。
最初からあなたを迷う事なく信じるべきでした。
というか、それ以前に、決して騒がず見守るのが最良の策でしたね。
場をかき乱し、変な空気にしたのは完全に私がテンパったせいです。
重ね重ね、ごめんなさい。
私はあなたに嫌悪されても仕方がない立場ですが、できればこれからもともに物語を作っていく仲間でいて下さると、嬉しい限りです。】

【それと、名無しの方たちへ。
まずは、丸く納めようとして下さった名無しの方。
あなたの面目を私が即効潰してしまったようで申し訳ありません。
私は鈍いので、その事に後から気付きました。
あとは全て、あなた方の仰る通りです。
返す言葉も御座いません。
どう考えても、私が全面的に悪かったです。
ごめんなさい】

【そういうわけですので、同僚の方々、ごめんなさい】

【皆さん、手前勝手かもしれませんがこの件に関しまして、これで手打ちとさせて頂ければ有難い限りです。
決して強制は致しませんが、納得頂けるならば、この場での更なる返レスの類いは不要ですので、どうか御了承の程を】

90 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/23(月) 00:32:10.97 0
ごろつきの呼びかけに、魔女が応える気配はない。

「遠見の魔法か……まぁ、想定の範囲内だな」

ヴィクトルは瑞鉄で長弓を形成し、矢を番え、その鏃の先にごろつきを捉える。
短期かつ簡潔に仕事を済ませる術として採用した男だったが、こうなっては不要だ。
大した戦力にもならない不確定要素は排除してしまった方がいい。
屋根の上から射掛けられた矢は、取り落とした生首に怯み硬直していた男の頭部を貫く。

糸の切れた人形のように倒れた男の更に奥に、甲冑を身に纏う『影』が見えた。

「……召喚魔法に、迎撃装置か。足止めのつもりか、それとも迎え撃つ気か」

恐らくは後者だろうと判断。
異端審問所は教会から独立しているが、その威信までもを失った訳ではない。
魔女狩り達は教会からの――あくまで暗黙の了解ではあるが――指示、認可の下で異端審問を行っているのだ。
その気になれば交通の封鎖くらい容易く話を通せる。
一度異端として魔女狩りの世話になっている魔女がそれを知らない訳はあるまい。
野党や魔物が跋扈する荒野へ、一人きりで、ろくな準備もなしに飛び出すのは、それこそ自殺行為だ。

実際、西区画の奥へ目を凝らしてみると、明らかに外装の異なる二階建ての家屋が見えた。

「だが愚かだな。それでもお前は逃げるべきだった」

戦闘の前に「準備」を行うのは何も魔女の専売特許ではない。
むしろ逆。強大な魔法に立ち向かう魔女狩りこそ、本来なら準備を強いられる側なのだ。

西区画の主要な出入り口には、既に瑞鉄の糸が張り巡らされていた。
脱出を図れば少なくともその動きを感知され、最悪の場合、体の一部を失う事になる。

魔力の枯渇は、術者の技量と才能にもよるが、体力よりもずっと早い。
陣を敷いて戦えば、補給の難もある。
限られた戦闘区域に留まる魔女は、ヴィクトルにとっては得手とする相手だった。

まさしくスラム街といった風情の西区画は立ち入る者も、出て行く者も少ない。
何も知らない哀れな子羊達への事故も「最小限」で済む。
それが零である必要は、ヴィクトルにはなかった。

前方には妖獣、黒狼が闊歩している。
魔女を追い詰めるにあたって邪魔になる存在だ。

回避するか、始末するか。
一人で仕事をするなら前者を選んでいたが、今回は二人の同行者がいる。
自分へのリスクは最小限に、不確定要素を削り取る事は可能だった。

「まずはそこの犬畜生を始末するぞ」

エルフは魔法と狩りに長けた種族である。
彼は風魔法の応用で己の気配を隠し、また逆に自分の声を風に乗せて遠くへ届ける事が出来た。

「『城塞』の方はどうにでもなる」

魔女狩りであるヴィクトルは、少女とは『城塞』に対する認識が違っていた。
勿論、攻め落とすのが困難である事は言うまでもない。
だが魔女を相手に、相手の領域で、正面から戦いを挑む事自体が彼からすれば下策なのだ。

91 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/23(月) 00:33:20.43 0
ヴィクトルは長弓に再度矢を番え、黒狼を見据える。
眼と鼻を機能不全にされながらも黒狼は少女達へと距離を詰めていく。

「はっ、馬鹿な飼い主に首輪を繋がれて可哀想にな」

ヴィクトルは黒狼が遠隔操作を受けている事を察していた。
魔女の魔力を感知したからではない。
その行動があまりに非合理だったからだ。

魔女側は勝負を急ぎ過ぎている。
城塞化の魔法を用いているのなら、戦闘力の低下した黒狼を一時撤退させるという選択肢があった筈なのだ。

少しでも脅威を近づけたくないという思考故に抗戦の指令を出したのだろうが――下策である。

目も鼻も利かない状況で察知し、防御出来るほど、エルフの征矢は鈍くない。
盲目の状態で歩みを進める黒狼目掛け、銀閃が奔る。
狙いは脚だ。妖獣相手では、頭部への小さな損傷が致命傷になるかは分からない。
足を止め、大男の手で大質量による完全な破壊を援助するのが最適を判断した。

更にヴィクトルは新たな矢を三本用意。
鏃に左手を近づけ――魔法による炎が灯された。
それを同時に弓に番え、『城塞化』された家屋へと射掛けた。

三本同時の発射でありながら、火矢は的確に窓の鉄格子の隙間を抜け、屋内へと突き刺さる。
石造りの建物であっても、自重の関係上、屋根や床まで石材を使う事は少ない。
教会などの公共施設は総石造りの物が殆どだが、スラム街の建物がそうである可能性は低い。

『城塞化』されているとは言え、建造物の組成を一から十まで鉄材に置き換えるのは無駄が過ぎる。
木材部分は十分に残されているだろう。
全焼に至らずとも、基礎となる木材が燃えれば多くの仕掛けは露呈するか、崩落による機能不全を起こす筈だ。

放火は死罪に相当する大罪だが、魔女狩りならばそれが許される。
文字通り、魔女を炙り出す為の術だった。

「……間違っても焼け死んでくれるなよ、堕廃の魔女。
 呪法で本人特定を行うには時間も手間も金も掛かる。
 それに……出来る事なら、お前は生け捕りが好ましい」

92 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/23(月) 11:02:30.96 O
―――意識覚醒。
酒場での虚から、戦場の実へと、一気に飛ぶ。
筋肉が鳴動し、生きているという実感がひしひしと湧いてくる。

>「まずはそこの犬畜生を始末するぞ」
「OKボス」

―――遠方のエルフの声が間近に聴こえたので、指をたて、短く頷く。
すぐに魔法による遠話だと気付いた。
綿密な事前の打ち合わせをする時間などはなかったが、遠話により連携行動を執ることは、戦場ではそう珍しくない。

―――前にも言ったが、彼が属していた騎士団の主な任務は要人警護である。
要人警護は警護対象者にべったりくっつき行動するのが当然と思われがちだが、そうでもない。
要人の中には、自身が始終警護されるのを忌む者も多いのだ。
その対策として、一定の距離を保ち、可能な限り気付かれぬよう警護するという作戦も必要となってくる。
その際、出来る限り遠巻きに警護するわけだが。作戦遂行時は指先と首ふりによるサインで仲間どうし会話する事となる。
しかし、視界の塞がれた場所での作戦行動を強いられる事もままある。
その際には外部から遠話の魔法を使える術者を雇い入れ、連絡をとるのが必須なのだ。

―――ところで、鎧は動くと金属の音擦れで目立つ。
しかし作戦行動に於き、鎧の音を最小限度までに抑える事は、ベテランにならば充分可能なのである。
無論、気配を完全に絶つアサシンや盗賊などと比肩するまでには至らぬ。だが、余程警戒してる者でもなければ対処に遅れる。

―――ましてや現在のドラクマは、事前に施されたエルフの魔法により、鎧を鏡とし風景と同化する付与が与えられていた。
これはエルフによりほんの短い合間に与えられた、簡素な作戦に依るものだった。

―――無論、相手が魔女ならば、すぐに位置を看破されたであろう。
しかし、現在相対するは魔女本人ではない。
魔女に使役されしファミリア、若しくはサーヴァントの類いだ。しかも、遠隔操作。
例え、位置を看破されたにしても、遠隔で操るには一定の齟齬が生まれる。
そこに賭けたのであろう。
無論、ドラクマの行動など、猜疑心の塊であるエルフの異端審問官にとっては、単なる保険の一環に過ぎぬのだろうが。

【ヴィクトルさん。
勝手にステルスかけて頂いた事にしました。
一応、謝っておきますね。ごめんなさい】
【続く】

93 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/23(月) 15:39:03.14 O
―――前方に二人の影。
まず禿頭が、もんどりうって倒れた。
エルフの攻撃に違いない。
次いで、奥にいた獣人が警戒、武器を身構えた瞬間、視界上空から何かが落下。
突如爆発的に煙が発生し、吸い込んだ黒狼が激しくむせび始める。
これは上の道を行くラウテの仕業だろう。
更なる、エルフの矢が放たれる。
矢が黒狼の足に突き立つのとほぼ同時に、不可視の術式から解き放たれた。
突如、獣人の目前に姿を現すドラクマ。
ドラクマは複雑な細かい動きは苦手だが、大雑把な直線上の動きでなら他の二人にも負けない速さで動ける自信がある。
なのでエルフをいつでもカバーリング出来るよう、円形範囲内に陣どっていたのだ。

―――背には、城塞攻略用の破壊槌。
先程酒場で使ったウォーハンマーの事だ。
腰には分厚い両刃のバスタードソードをぶら下げていた。
刀身は、はがねでできている。
これは両手でも片手でも使える優れもので、使いやすいが為に、騎士の標準装備となっている武器だ。

―――黒狼目掛け、土煙を巻き上げ突進する!
接敵するや否や、天空高く剣を掲げ、竜巻の如く激しく回転!
その勢いのまま、袈裟懸け気味に剣を打ち下ろす!
鎧袖一触!
真っ向から真っ二つに、叩き斬った!
……いや、少し違う。
斬ったというよりも、回転のうねりを活かして分厚い鉄塊で叩き潰したというのが正しいのであろう。

―――回転は停まらず。鎧とハンマーの重さのせいでよろけ、倒れかかるドラクマ。
そこでいきなり、バスタードソードの刃先をいきなり地面へと突き刺す!
剣から激しく火花が散り、急激にブレーキが掛かる。おかげでようやく停まった。

「ガーッハッハッハッ!拍子抜けしたぞ、コラッ!単なる見掛け倒しかキサマ」

―――しかし、黒狼はまだ死んではいなかった!
背後に脈打つ心臓の音が聴こえる。
伝説の魔獣・人狼は、満月の時期には不死だという。
そういえば、そろそろ満月期だった筈。
この黒狼も、きっと月の加護を受け生命力に溢れているのであろう。
下手をすれば、人狼の如き不死者なのやもしれぬ。
だがそうだとて、最早何もできまい。
黒狼は既に背後で体真っ二つの上、接断面は潰され、手酷い損壊状態なのだから。

94 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/24(火) 00:38:59.64 0
連携はうまく取れた。ラウテが目鼻を潰し、ヴィクトルが足止めし、ドラクマがとどめを刺す。
ドラクマが突入した際、おそらく侵入者迎撃用だろう、矢が数本飛んできたが、鎧に身を包んだドラクマは意に留めていない様子だった。
と、まだ黒狼に息があることにラウテは気付く。
再生能力は低いようだが、もし復活されたら厄介だ。
ラウテはダガーに魔力を込め、半分肉塊と化した黒狼に投げつける。
刺さった部位から、肉の焼けるような音が響く。魔力体が浄化されているのだ。

ラウテの持つダガーは強力な聖属性を帯びている。
柄に彫られた聖なる紋章、刀身に刻まれた聖句、込められた膨大な祈りの力。
これらはほんの少し魔力を流し込むだけで息を吹き返し、その効果を発揮する。
そして多くのモンスターや召還獣は、この聖属性に対して非常に相性が悪いのだ。
こと闇色に染められた黒狼には相当効くのだろう。刃を受けた黒狼は、やがて消滅した。
纏っていた鎧や剣、弓は地面に当たり軽く音を響かせると、同じく消滅する。
それにしてもこちらが三人程度だと分かっているはずなのに召還獣一体で対応させるだなんて、魔力でも枯渇しているのだろうか?

ふと見ると、暗くてよく見えなかった奥の建物から微かに火の手が上がっていた。
ほんのり薄紫にも見える、魔術特有の焔。ヴィクトルが放ったものだろう。
こんなところで火災が発生したら、死傷者は多数出るだろうが……魔女狩りの権限でもみ消せるのだろうか?
魔術による焔は、通常の消火手段ではほとんど効果がないことが知られている。
水や氷雪系の魔法でなら相殺出来るが、おそらくかなり消耗するだろう。
はっきり言って、火消しに奔走するくらいなら逃げ出したほうがマシなレベルだ。
火災に乗じて突入するか、それとも燻り出されて現れるのを待つか。
そこまで考えたとき、ラウテはドラクマに注意を促していない事を思い出した。

「おじさん、そこ……多分前に進むと射られるよ」

と、一応言うべきことを話してから、ラウテは笛の音を奏でる。
召還したのは三体のスケアクロウ、文字通り案山子に化けたモンスターだ。
ほとんど動かず近寄った生物を捕食する程度の脅威だが、特別な特徴を備えている。
それは、ほぼ不死であること。斬っても燃やされても死ぬことはない。
教会の尼僧による聖歌はよく効くほうなのだが……それでも消滅しないのが特徴だ。
これを捕まえるに至ったのは本当に難儀したのだが……まぁ、コツを掴めば簡単だった訳で。

ラウテは魔笛を奏で、三体のスケアクロウをゆっくりと前進させる。
たちまちそれを狙って降って来る矢の雨、しかしそんなものは意にも介さない。
ケタケタと笑いながら矢を受け前進する様は、非常に不気味な光景だった。
……少し進んだ辺りで、様子が変わった。敵の用意した地雷を踏んだのだ。
辺りに爆発音が轟き、煙が上がる。スケアクロウは弾き飛ばされたが、全く問題はなかった。
しかし地雷とは、相手もずいぶんと用意に気合を入れてくれたものだと感心する。
そんな罠を徹底的に潰され、しかも火まで射掛けられるとは災難な話だ。
しかし魔女狩りともなると手加減は出来ない。プロとしては当然の心構えだ。

矢も尽き、地雷の音も完全に止んだのを確認し、ラウテはスケアクロウを帰した。
地雷が残っている可能性はあるが、スケアクロウの足跡を辿れば問題ないだろう。
さて、これで突入の用意は整った。相手も死に物狂いで掛かってくる……そう思うと嬉しくなった。

「…ところで、魔女は殺しちゃっていいの? 生け捕り?」

笛の音に指向性を持たせて声を飛ばす。相手はもちろん屋根から見下ろすヴィクトルだ。
ネコがネズミをいたぶるように、ゆっくり虐めてから殺せれば良いな、とラウテは思った。

95 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/25(水) 09:02:12.86 0
黒狼による音だよりの吶喊。
しかしそれは、第一歩目から出鼻を挫かれた。太もものあたりに一閃の矢が突き刺さる。
短足エルフの矢だ。黒狼の甲冑は消音性を確保する為に通常よりも薄く、矢はたやすく貫通した。
治癒や障壁の援護魔法を――そう判断して実行するより速く、黒狼の眼前の景色がブレる。
闇を引き剥がすようにして現れたのは、三人の魔女狩りの一人、重装甲の大男。

「隠匿魔法――!?」

これほど目立つ巨体なら、動きがあればすぐわかる。
そう高をくくっていた・・・リタリンの鼻っ柱が真っ向からブチ折られる。
鎧男はその分厚い装甲から想像できないほど静かに、なめらかに、そして迅速に、大剣を振りかぶった。
接近を感知した城塞から放たれる無数の矢、しかしその一本たりとも男の鎧を貫けはしない。
金属がぶつかり合い小さな閃光に包まれながら、男は斬撃を敢行する。
捻りを加えた回転はさながら竜巻の如く、その一撃はまさしく鋼の大瀑布。
脳天から股下まで、斬撃というにはあまりに鈍くそして重たい破壊の線が駆け抜ける。
火花を散らしながら大男が停止した時、頭から二分割された黒狼は真っ黒な血反吐と臓物を撒き散らして石畳に沈んでいた。

>「ガーッハッハッハッ!拍子抜けしたぞ、コラッ!単なる見掛け倒しかキサマ」

大男の勝鬨が冷たい路地裏に響き渡る。
黒狼が見かけ倒しと言うならば、この大男こそはまさに見た目通りの看板に偽りなしだ。
見かけどおりに、タフで、力があり――ただただ強い。
真っ二つになった黒狼、しかし完全に消滅したというわけではない。
もともとこの軍用召喚獣は、戦火のさなかや過酷な環境での偵察斥候を目的に設計されたものだ。
本来の頑健さに加え、防御力や治癒力、おしなべて言えば生存能力に特化した改造を施されている。
スタンドアロンでも不死身に近いタフさを誇るが、従軍魔導師が帯同し支援を行えば継戦能力においても折り紙付きの実力を持つ。
ドーピングで魔力の底上げを行っているリタリンなら、もう一度戦闘可能な状態まで瞬時再生することも可能なはずだ。
魔導書のページを手繰り、呪文を詠唱しようとしたその瞬間。
言ってみればリタリンが戦況から眼を離したほんの一瞬の隙間をついて。
窓から火矢が飛び込んできた。

「(声も出ないほどの愕然)」

打ち込まれた矢は三射。
鉄格子の合間を縫うという神業じみた狙撃によって送り込まれた三本の矢は、いずれも炎を纏っていた。
魔法使いのリタリンにはそれが魔法によるものだとすぐにわかった。
次いで理解できる事実は、この火は魔法故に通常の手段では鎮火できないということだ。
木製の床や机に突き刺さった矢からほとばしる炎、一気呵成に燃え広がる。

「信じらんない・・・この密集した街中で民家に火を放つなんて!」

ここは廃屋だが、隣接している民家には普通に人が住んでいる。
しかも現時刻は夜半、住民のほとんどは眠っている時間帯だ。
このまま炎が燃え広がり、延焼すれば、計り知れない犠牲者が出ることになる。
故にリタリン自身の安全はともかく、この火を消し止めることは第一優先の急務だ。
しかし魔法の火はただ水をかけるだけでは消せない。
炎を構成している魔素を中和する一般的な解呪は、リタリンには使えない(勉強不足で)。
しばしの逡巡のあと、堕廃の魔女は苦肉の選択をした。

『形容する――"鉄塊"と!』

床と机、火が燃え移った家具へ向けて形容魔法を行使。対象は鉄塊と同質に変化し、故に炎は燃え広がらない。
依然として種火は燃え上がったままだが、延焼するよりかはずっとマシになった。
しかし、それでほっと一段落というわけにはいかない。
ミシミシと小気味の悪い音とともにリタリンの立つ床が軋み始めた。
家具やら床やらを鉄塊化した為に、木造建築の梁が重みに耐え切れなくなって崩壊を始めたのだ。
形容魔法は原理が単純で燃費に優れる反面、細かいところで融通の効かないデメリットがある。
具体的には、対象を形容したものの性質に丸々置き換える為、
今回のように不燃の性質が欲しいだけなのに付随して鉄塊の持つ硬度や重量もエンチャントされてしまう点だ。
ごろつきに手配した豪炎の剣も空気を遮断すると燃えなくなるのはこれが原因である。

96 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/25(水) 09:02:43.33 0
木材の砕ける音と共に、床が傾き沈んでいく・・・リタリンは窓枠にしがみついて必死に堪えた。
被害は二階の床が抜けて一階に崩れ落ちたところで収束した。
おかげで一階部分に構築していた迎撃トラップのほとんどが駄目になってしまった。
なんのことはない、城塞攻略に火計は非常に有効な手であるという当然の帰結だった。

「まだ・・・まだ外側の迎撃装置がある・・・!」

屋根のクロスボウと地雷原だけでも十分に防衛能力は発揮できる。
籠城を続け、時間を稼いで更に大規模な魔法を行使できれば逆転のチャンスはある。
どうにか残った床部分に這い登ったリタリンは、水晶球を確認。
禿にかけていた千里眼は禿の死亡と同時に解除されている。さすが魔女狩り、抜け目がない。
そして黒狼とのコネクトも切れてしまっていた。
何事かと外から見えない死角に位置どって窓の外を覗くと同時、宵闇の向こうで爆音が轟き、火柱が上がった。
地雷魔法の爆発だ。

「かかった・・・?」

地雷原のどまんなかで炎に包まれた三つの人影が爆風に煽られ踊っている。
接近感知したクロスボウの連射に晒され、人影は瞬く間にハリネズミのように変わっていく。
しかし魔女でるリタリンは、それが人間の魔力構成でないと判別できた。
やがて炎が消え、その向こうの人影が明らかになる。
地雷を踏んだのは三体のスケアクロウ。人型器物擬態系の魔物だ。

「新手の使い魔!」

スケアクロウ達は地雷原を前進する。
一歩二歩ごとに爆炎に包まれるが、その歩みを止めることはない。
クロスボウに至ってはすでに上半身の原型がわからないほどに矢が突き立てられているが、なお止まらない。
スケアクロウの種族特性・・・それは黒狼よりも遥かに完全な『不死身』である。
不死身の肉体に任せ、地雷原を強引に踏破しているのだ。

「いや、来ないで、止まれ止まれ止まれ止まれ!」

必死の抵抗を嘲笑うかのように、無表情な案山子達は陣地を蹂躙し、縦断していく。
この段階に及んで新たな使い魔、それも城塞攻略に誂えたような魔物の召喚は想定外であった。
リタリンが迎撃の尖兵に直接戦闘力で劣る黒狼を選んだのは、黒狼が戦闘だけでなく索敵にも秀でた召喚獣だからだ。
逆に言えば、対峙する魔女狩り達のように戦闘専門・索敵専門の使い魔をそれぞれ用意する余裕がなかったのである。
ブーストした魔力リソースの殆どを城塞化に割いたリタリンが、必死に捻出してようやく召喚できた一体なのだ。
状況に応じて最適な使い魔を選択し逐次投入できる、敵の魔力量は底が知れない。
ことここに至り、リタリンの脳裏に鮮明な死のイメージが固着を始めた。
地雷は発動を続け、爆音が連続して轟き、多少の騒音では我関せずを貫くスラムの住民達も何事かと起きだしてくる。
路地のさらに小道から、路上生活の子どもたちが煤に包まれながら逃げ出していく。
そして、不死身の案山子はとうとう地雷原を突破し城塞の入り口へ辿り着いた。

「城塞が・・・こんな方法で・・・」

黒狼は討滅され、屋敷には火が放たれ、迎撃兵装は突破された。
十重二十重に構築していたすべての防衛戦が亡き者となり、もうリタリンには何ものこっていない。
何も。己の五体以外の何もだ。もう引き返せない、直接戦闘だけが彼女に残された最後の隘路だ。
静かに、魔法の火の玉を5,6発生成し、いつでも発射できるよう左手にまとわせるように滞空させる。
そして己を空気と形容することでステルスをかけ、二階の窓の桟上に潜む。
廃屋に突入した魔女狩り達は、倒壊して落ちてきた二階の床とその上で燃え上がる炎を見るだろう。
露呈した落とし穴、不発の吊り天井、破壊された忍び矢なども見て取れるはずだ。
魔女狩り達が屋敷に入ってきた瞬間、リタリンは爆発魔法を仕込んだ火の玉を叩き込む。
これは瓦礫の影や下を経由させて出処がわからないように工夫をしてある。
彼女が倒壊した二階の窓枠にしがみついて隠れていることなど、そう簡単にはわかるまい。

97 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/26(木) 03:05:39.13 0
>「おじさん、そこ……多分前に進むと射られるよ」

「……黙ってりゃいいものを。何の為の壁だってんだよ」

エルフの鋭敏な聴覚で少女の制止を聴きとったヴィクトルは忌々しげに呟いた。
ともあれ少女が召喚した案山子によって罠の数々が無力化されたのを確認。
屋根から屋根へと飛び移り、二人の付近にまで前進する。

>「…ところで、魔女は殺しちゃっていいの? 生け捕り?」

「生け捕りだ。もし殺したら報酬は六対四だ。俺が六で、お前達が四。分かったな」

実際の所、異端審問所の意向として魔女を生け捕りにする必要は全くない。
ないのだが、そんな事は少女も大男も知る由もない。ヴィクトルは平然と無理難題を提示した。
さておき一行は魔女の砦の前まで辿り着いた。
ヴィクトルは屋根から降りて二人と合流――大男にドアを破るよう、顎の仕草で示す。

「なかなか洒落たインテリアだな」

二階の床の殆どが抜け、一階の仕掛けを押し潰している惨状を見て、ヴィクトルは笑う。
延焼は既に止まっているが、効果は十分だった。
そして直後、彼の視界外から火球が迫る。ヴィクトルは気流と熱気、魔力の気配によってそれを察知。
細剣が閃光と化して煌めき――火球の軌道が歪んだ。

それは恐ろしい剣速と、刀身が帯びた風魔法による空気の断層が生み出した現象だった。
屈曲した火球は大男の脇腹に命中――爆音と共に業火が爆ぜる。
決して悪意のみによる行動ではない。
魔女狩りの戦闘において、敵の攻撃を『受ける』という行為は下策なのだ。
接触時にどんな魔法を付与されるかも、その攻撃はどのような性質を秘めているのか。
それらは完全に未知数なのだから。
実際、もし瑞鉄の盾を形成し火球を受け止めていたら、ヴィクトルは猛烈な勢いで壁へと叩き付けられていただろう。

「……おいおい、どうした。隠れんぼのつもりか?こりゃ困ったぜ。なぁクソガキ」

魔女狩りは軽薄な笑みを浮かべて少女を見下ろした。
彼女にもまた、魔女を燻り出す術があると知った上で。

エルフは魔法と狩りの種族である。
彼らは例え裸一貫で迷いの森に放り出されても、自活が出来るほどの能力がある。
即ち魔物ですら逃げ切れない俊敏性と、狩りと生活を成立させるだけの魔法の才が。

二階に揺れる残り火は気流を――風を生み出している。
エルフにとってそれは、獲物を探し出す為の道具として、必要十分だった。

「いやぁ、困っちまうなぁ。一体どこにいんのかさっぱり検討が付かねえぞ。仕方ねえなぁ」

ヴィクトルは粘り気を帯びた声音で二階を見回す。

「聞こえてんだろ、堕廃の魔女。降りてこいよ。降伏しろ。お前には生きる価値がある。
 殺すよりも、生かした方が金になる。お前だってそうだろ?」

そして酒場での拷問の時と同じように、静やかな声でそう呼びかけた。

「死ぬよりも、最悪な事なんてありゃしねえ。そうだろ?二階にいるぞ。揺さぶり落とせ」

最後の一言は、少女と大男にしか聞こえなかっただろう。風魔法による遠話の応用だ。
魔女への説得は嘘ではない。生かしておけるなら、そのようにして利用した方が好ましい。
だがそれは、何も説得によってのみ成立しなければならない事象でもなかった。
力ずくで制圧して、意のままにしてしまえるなら、彼はそれで構わないのだ。

98 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/27(金) 23:41:34.15 O
―――ドラクマが黒狼相手に勝利の雄叫びをあげたとたんに、続けて風切り音がした。
誰かが矢を放ったに違いない。目前の城塞が天蓋から燃え出す。
あれはどう見ても尋常な焔ではない。魔法の焔だ。
「今のは、エルフか?」
―――疑問を感じる。

「はて?妙な?今の音は明らかに上からだ。
アイツは、俺さまの横に並んでいたはず」

―――だが、実際にはそんな事実はないのだ。

>「おじさん、そこ……多分前に進むと射られるよ」

―――考えながら前進すると、不意に背後から声をかけられ意識が戻される。
「おっと!?」

―――城塞より放たれたクロスボウの矢は強力な軍隊相手を想定してのものと見え、非常に長く太かった。
だが、超重騎士の鎧は単なる鋼の塊ではない。
全体的に丸みを帯びており、殆んどの物理的な攻撃の威力を減じるのだ。
角度を考え、うまく当たりに行きさえすれば、攻撃を反らす事も可能だ。

―――ドラクマは背後にいるのが誰であるか気付くと首を傾げた。

「小娘、いつの間に降りた?」

―――何故か今までラウテは上にいると思い込んでいたドラクマ。
しかし、不意に飛んできた矢の前にその疑問は霧散する。
無造作に手を伸ばし、飛んできた矢を目前で掴みとる。

「カッカッカッ!
忠告傷みいる。一応礼は言うぞ、小娘!」

「だが、覚えとけ!
この程度の矢、我が無敵のアーマーの前には、かすり傷ひとつ負わせる事すらかなわねぇよ!」

―――ドラクマは手にとった矢をへし折り、ゆっくりと着実に前進する。
矢継ぎ早に矢が飛んでくるが、丸みと光沢を帯びた分厚い金属の装甲が、それら全てを跳ね返していく。
だが、衝撃を完全に殺せてる訳でもなく、痛いには痛い。
しばらく前進するうち、背後から美しい旋律がついてきた。
ラウテの笛の音だ。
背後から何らかの気配が迫り来るのも感じたが、決して振り向くことはない。
酒場での出来事から、だいたい予想がついたからだ。
背後から迫りきた気配はすぐにドラクマを抜き去り、身代りに矢を受け始めた。
それは田舎育ちのドラクマには馴染み深い、三体の案山子だった。
案山子を先頭にしての、時間的にそう長くはない、奇妙なパレードが、まさに今、幕を開けた。
【続く】

99 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/27(金) 23:43:41.89 O
―――実はドラクマは、先程から意識が朦朧としていた。
黒狼に突撃する際、嗅覚鋭い妖獣の勘により、至近距離で山刀の一撃を喰らい胸の辺りを火傷していたのだ。
斬撃そのものは、鋼の装甲で弾いて防いではいたがエンチャントされていた雷撃は素通しだった。
黒狼に対し回転したのも、斬撃に対し角度をずらしていなすという長年の経験にて培われた動きを体が反射的にしたのがひとつ。
もうひとつは、雷が半身を麻痺させてしまったので片足が痺れてしまい、踏切らざるを得なかったからである。
回転力を殺す時に自重を自力で踏ん張りきれなかったのも、麻痺がとれず半身がうまく動かなかったから。
剣を地面に突き刺したのも、単なるブレーキではなく、体に帯電した雷エネルギーを地面に逃す為でもあった。

―――ドラクマの怪我はそれだけではない。
酒場での魔女の刺客に両脇から差し込まれたエンチャントされた武器により、両脇腹の表皮が酷く焼け焦げていた。
エルフにより受けた瞼の傷も、ラウテのくれた軟膏により一応血が流れずにはいるが、何らかの衝撃を受ければ今一度破れる可能性もある。
それに、戦場を含め、以前から受けてきた数えきれない古傷もある。
あの酒場でも、無法者の客相手に今まで完全な無傷でいられたわけではなかったわけで、実は完治してない傷も多いのだ。

―――とはいえ、彼自身の肉体じたいは実は人間の肉体の範疇だし、魔法の素養すら無い。
そんな彼が、不死身と見間違う程のタフネスぶりを周囲に示しているのは事実。
だがその理由は、単に彼が痩せ我慢が得意というだけではなかった。
それは彼が超重騎士団で長く騎士を努めてきた事にも秘密があった。

―――騎士団時代に精神的なマインドコントロールを施されてる事がその最大の理由であるのは確かだ。
だが、それだけではない肉体的な理由もある。
それを完全に理解をするには少々複雑な説明を要するわけだが、一言で言えば、様々な種類の薬剤の投与や魔法付与を長年受け続けてきたせいで、彼の体は複合型ジャンキーそのものとなっていたのである。
あの非合法な酒場で黒服として働いていたのも決して偶然ではない。
ドラッグ或いは魔法薬を入手し、採り続ける為だったのだ。
一端、それが途切れてしまえば、どんな副作用が襲ってくるのかさえ想像するだに恐ろしかった。
【続く】

100 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/27(金) 23:45:24.05 O
―――矢の雨が尽きた後もしばらくパレードは続いた。
案山子とのラストを飾るイベントは地雷源通過だった。
矢には鉄壁さを誇るドラクマ自慢のアーマーでさえ、地雷をまともに、しかも連鎖的に食らえばひとたまりもない。
いや、より正確に言えばアーマーは無事であろうが、肝心の中身の人間が無事では済まないであろう。
―――しかし、にも関わらず、ドラクマ達の行進は止まることがない。
後から来てほぼ横並びに並んだラウテの笛の演奏も、気のせいか熱を帯びてきたように感じる。
地雷は、前方の三体の案山子たちが全て代わりに引き受けてくれた。
つまり、あの案山子たちには、見掛けによらず、地雷が反応するだけの自重があったのだろう。
爆発という派手な花火が次々とあがっていく。
その全てを踏破した後、ラウテの笛の演奏終了と共に、案山子たちは役割を終え、消えていった。

>「…ところで、魔女は殺しちゃっていいの? 生け捕り?」
>「生け捕りだ。もし殺したら報酬は六対四だ。俺が六で、お前達が四。分かったな」

「うむ。覚えておこう」
(……ふむ?お優しいこって)

―――二人の遠話内容に実は内心、ホッとしていた。
酒場のマスターによる搾取っぷりはこんなもんじゃ無かったからだ。
エルフは自身の辛辣さを際立てたいと思ったのかもしれないが、劣悪な環境を見てきたドラクマにとってはまだまだ常識の範疇だった。
だが、わざわざエルフにそんな余計な話を降って自分から進んで貰える額を減らす事もあるまい。
だから敢えて口を挟まずにおいた。
その程度の処世術はあった。

―――ラウテと並び、城塞の前まで辿り着く。
炎と煙に包まれてるとはいえ、立派な佇まいだ。
魔法に一切素養のない自分にとっては不思議で仕方がない
城門を上から下へ右へ、左へと、しげしげと眺める。
この場所にあったのはごく普通の廃屋に過ぎなかった筈だ。

「魔女の力恐るべし……と言ったところか」

―――しきりに感心していると、屋根からエルフが飛び降り、合流してきた。
【続く】

101 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/28(土) 00:06:23.05 O
―――エルフが顎で門扉を暗に示す。
それに対し、やはり顎で了解したと返す。
するといきなり、破壊槌を大きく振りかぶり、思いっきり城門に叩きつけた。
あれだけ堅固そうに見えた城門が、たったの一撃で崩れ墜ちる。

―――破壊された城門をどかし侵入すると、中は既に鎮火しつつあった。
一応、煙を吸い込まないよう息を潜める。
どうやら火事の影響により、二階部分が床ごと抜け落ちてるようだ。

―――しかし、何かがおかしい。
あんなに燃えていたのに、煙もろくにない。
とはいえ、濡れてはないし蒸気も上がってはいないので、水で消火されたわけでも無さそうだ。
魔法の焔だから特殊なんだと説明されてしまうとそこまでなのだが、とにかく何かがおかしかった。

―――エルフは後ろを気にせずどんどん先へと行ってしまう。

「フン。勝手な野郎だ。軍隊ではとても勤まらんな」

―――仕方なく、ラウテを警護しつつ、上から垂れ下がっている二階の床材を破壊槌の棒の先でつついてみる。
木目調なのに、金属的な音がする。やはり、何かがおかしい。

―――次に、警戒しながらエルフの後を追い、奥へと進む。
すると、さっき前方に行ったとばかり思っていたエルフが横に居て、思案顔だった。
不意に、こちらを見て冷笑したような気がした。
……とても嫌な予感がした。
次の刹那!不意に何処からかエルフ目掛け火球が飛んだのが見えた!
……かと思えば、その火球は不意にエルフの斬撃に弾かれ、急遽進路を変え、凄まじいスピードでこちらに向かってきた!
全く予測してなかったのでこれは避けられそうにない!
防御の薄いわき腹部分に直撃した!
火球は爆発し、そのまま壁まで吹き飛ばされる!

(野郎ーッ!油断したッ!まさか、いきなり味方から攻撃を食らうとは……!?)

―――爆発の勢いで弾き飛ばされ、まともに壁に叩きつけられてしまう。
これはまず、即死コースだろう。
ドラクマは人形の如く倒れた後、口からあり得ないくらいの大量の血反吐を吐き、そのままいっさいの動きを止め

102 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/28(土) 00:49:23.44 O
―――だが、少し休むとあっさりと起きあがる。

―――見ると、エルフは魔女に優しげに語りかけている。
御存じ、“飴と鞭作戦”に違いない。

「フン……。いかにもゲスな野郎のやり口だな。気に食わねぇ」

―――そう呟きながらも、ドラクマは口許に笑みを浮かべている自分に気付いていた。
こういう頭のいいやり方は自分からはできないが、作戦としては決して嫌いではないのだ。

>「二階にいるぞ。揺さぶり落とせ」

「イエッサー!」

―――エルフの命令を受け、生き生きとしだすドラクマ。
途端にそこらの壁や柱を片っ端からハンマーで殴り付けはじめた。
揺れる館全体。パラパラと落ちてくる砂埃。
これだけでも魔女の心拍数はかなりあがったことだろう。
しかし、それだけでは済ませない。

―――ある程度館を揺さぶり終えると、今度はおもむろに背中からもう一本の武器を抜き出す。
これはハンマーと同じく、城塞攻略にはとても役に立つ武器だ。
長い槍の先に斧のついたポールウェポンの一種、ハルバードである。
この武器にはさまざまな種類があり、一概には言えないが、大抵は斧の逆側にカギ爪が付いており、これらを応用すれば、館の解体作業などに最適な道具と言えよう。

―――ドラクマは、城塞の柱という柱を、ハルバードで切りつけ倒しつつ、木製の壁は槍で突き刺し穴を開け、カギ爪を引っ掛け壁をグイグイと引っ剥がしていく。

―――無論、石や金属でできている部分は、破壊槌で破砕する。
そうして、短時間のうちに魔女の潜んでいる場所以外の殆んど全てを解体していった。

―――魔女の居場所を敢えて残したのは、もちろん、性格の悪いエルフの作戦指示を受け、尚且つ、わざとであった。

103 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/28(土) 22:09:37.43 0
どうやら魔女は殺してはいけないらしい。まぁそれはそれで良いのだが。
ラウテは幼いながらも、その身に潜む残虐性を開花させつつあった。
魔笛の継承者として幼い頃からそう育てられ、命を屠ることに何の抵抗もない。
魔笛の本質は、そこに封じられた悪魔だ。悪魔は人の心に悪意を植えつける。
果たして魔笛がその原因かは不明だが、ラウテの精神が悪魔に影響を受けたのは間違いない。

敵の罠を突破するために三体ものモンスターを召還したが、ラウテに疲れは見えなかった。
ラウテの生まれ持っての魔力量も大したものだが、彼女の使う召還魔法は低コストなのだ。
多元世界から魔素を抽出して魔物の形を形成する面倒な方法は用いない。
魔笛のテリトリーである空間にモンスターを封じるか、野生そのままに放置する場合もある。
魔力によって形成されたタグを頼りに、空間転移で呼び出すだけなのだから簡単なのだ。
もっとも大量のモンスターを保存出来るだけの空間を用意するのは容易ではない。
魔笛の特殊性故による大規模な魔法が構築されているには違いない訳だ。
ラウテの魔笛に封印されたモンスターの数は、一個小隊を軽く飲み込めるまでに成長していた。

トラップも解除しいざと飛び込んだ廃屋の中は、無残な有り様であった。
二階部分はほぼ崩れ去り、一階に仕掛けられていたのであろう罠が露見している。
ラウテはそこに魔法の気配を感じ取る。何らかの中規模の魔法により、鎮火と崩壊が同時に起こったのだろう。
爆発による消火か、それとも重力系の魔法か……ラウテは不思議そうに首を傾げた。
その答えはすぐに分かった。ドラクマが二階の床材を突いてくれたからだ。
見た目は木材なのに金属音……今回の魔女が得意とする形容魔法によるものだろう。
二階の延焼しそうな木材を全て金属に変換したのなら、崩壊した理由も分かる。
そしておそらくは、これまでの仕掛けや召還獣などから考えて魔女の魔力は枯渇寸前だと言う事だ。
魔力に余裕があるのだったら召還獣ももっと大量に用意しただろうし、床が崩壊するような魔法の使い方もしない。
魔力の枯渇した魔女は最早敵ではない。おそらくまだ反撃の手段は持っているだろうが、その質は期待出来ない。
可哀想に、とラウテは呟き、くすくすと笑ってみせた。

周囲を一応警戒していたところ、瓦礫の間から火球が飛び出し、こちらへ迫る。
その数六発。この手の魔法は珍しいものではないため、セオリー通りに対処出来る。
奏でたのは魔笛ではない、先程まで背負っていた古びたリュートだ。
音楽魔法は、フルートのような単音ではなくギターのような和音の方がより効果を発揮する。
召還魔法を扱うなら魔笛でなければならないが、ただの音楽魔法ならリュートのほうが効果的なのだ。
かき鳴らした一節で、四箇所の空間そのものの魔素を空中に固定し、飛来する火球を止める。
次の一節で火球を弾き飛ばし、廃屋の天井にぶち当て爆発させた。
二発は見逃したが、ヴィクトルが剣捌きでどうにか……あ、ドラクマに当たった。
見事に弾け飛んだドラクマであったが、少ししたら普通に起き上がってきたところを見るに大丈夫らしい。
あとで治癒の魔法を掛けてあげようと思いながら、更なる攻撃がないかと警戒していた。しかし。

>「二階にいるぞ。揺さぶり落とせ」

ヴィクトルは既に敵の居場所を感知していたようだ。
力仕事は任せろとばかりに、ドラクマが張り切って廃屋を破壊し始めた。
崩壊した二階にいるのなら、あの窓の桟くらいしか身を潜める場所はあるまい。
それをドラクマも把握しているのだろう。その窓を残し、他の部分から崩壊させてゆく。
しかしドラクマの働きは恐れ入る。あれではまるで重機のようではないか。
何らかの魔術的処置で身体を鍛えた形跡はあるものの、ほとんど彼の実力だろう。
ラウテは彼の破壊音に合わせるようにリュートをかき鳴らし、新たな術式を展開する。
蜘蛛の糸、と呼ばれる捕縛式だ。網のように空間に張り巡らせ、動く相手を捕獲出来る。
魔法故に登録された者だけはすり抜ける事が出来るため、非常に有用な魔法だったりする。
仮に魔女が飛行魔法を(使うなら莫大な魔力が必要だが)使ったとしても、逃がさない処置である。
窓枠から落下して死なれるのも困る、という処置だったりもするのだが。

104 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/30(月) 05:39:50.56 0
魔女狩り達が城門を破り、廃屋へ踏み込んできた。
眼下に見える人影は三つ、酒場で私兵を屠ったのと同じ者達で間違いない。
甲冑姿の大男と、足の短いエルフと、銀髪紅眼の少女だ。
予定通り、リタリンは六発の火の玉を様々な軌道で撃ち放つ。
当たれば爆裂し、吹き飛ばし、遁走の為の隙を作り出す魔法だ。
少女がリュートをかき鳴らす。その波動が大気を伝わって空間の魔素を固定し、障壁をつくる。
酒場でエンチャントを解呪した音楽魔法の応用版だ。
返す刀で鳴らされた一音により弾き返された火の玉が四発、天井に着弾して破片がリタリンの方まで飛んできた。
残り二発の火の玉はエルフへと殺到。あろうことか彼はそれを『斬った』。
否、正確には剣圧と風魔法により極挟の真空をつくり、魔法の軌道を変えたのだ。
弾かれた魔法は鎧男の脇腹へと命中し、爆裂。

(やった――!?)

吹き飛ばされ瓦礫の山へ叩きつけられた大男は、今度こそ意識を失ったかのように見えた。
しかしほんの数秒で何事もなかったかのように起き上がる。
使い魔なんぞより、こいつらの方がよっぽど化物だ。

>「聞こえてんだろ、堕廃の魔女。降りてこいよ。降伏しろ。お前には生きる価値がある。
 殺すよりも、生かした方が金になる。お前だってそうだろ?」

階下でエルフが水音のしそうなくらいねっとりとした口調で投降を勧告する。
その提案は今のリタリンにとり非常に魅力的に思えたが、それが口車であると彼女は知っている。
生きる価値がなきゃ生きられない。そこに生はあっても自由はない。
価値の分だけ絞り尽くされて、なくなったら改めて殺される、それじゃただの家畜だ。

>「死ぬよりも、最悪な事なんてありゃしねえ。そうだろ?

とどのつまり、それは『死ぬ以外のすべての苦痛』を与える宣告に他ならなかった。
それこそ死んだほうがマシに思えるような――
冷や汗が頬をつたう。リタリンはそれを舌を伸ばして舐め取って、ゆっくりと嚥下した。
何事かエルフから指示をされた大男が鷹揚に了解を示して動き出す。
なにをするかと思えば、背負っていたハンマーで壁や柱を殴り始めたのだ。
城塞化されている廃屋の支えは堅牢で、ちょっとやそっとの打撃では倒壊することはない。
しかし、その衝撃は窓枠にしがみついているリタリンをダイレクトに揺さぶった。

「ひっ……!」

大男は何度も柱を殴りつける。
そのたびに両腕で窓枠を掴んでいるだけのリタリンは放り出されそうになる。
桟にかけていた足がすべり、踏み外し、腕だけで宙吊りになる。
そして金属のひしゃげるような、絶望の音が聞こえた。大男の槌が柱をついに破壊したのだ。
それにとどまらず、漆喰の壁は残らず粉砕され、窓も柱も木も鋼ものべつ幕なく解体されていく。
やがて、リタリンの潜む一角を残して、殆どの構造物が破壊され尽くしてしまった。

(絶対バレてる、居場所……!)

こうも都合よくリタリンの隠れた場所を残して更地にされれば、いくら戦闘勘に欠ける彼女でも気づく。
なんらかの探知式で、ステルス越しにリタリンの居所を把握しての凶行だろう。
少女がリュートをかき鳴らし、さらなる魔法を展開。
張り巡らされたのは魔力で構築された糸……設置型の捕縛式だ。
こうなってはもうここを動くことすら叶わない。退路を完全に断たれ、状況は詰みであった。
冷酷にして残虐なる三つの視線に晒され、魔女の心臓は早鐘のように脈打つ。こめかみが鼓動する。

「はぁーっ、はぁーっ、うう……」

意図せずして呼吸が大きくなってしまい、手で覆ってどうにかおさえつける。
この状況は膠着ではない。魔女狩り達の一人でも気まぐれを起こせば、たやすく魔女の命を奪い得る。
自分の命の残り残高が、あと五秒か十秒か……恐れのあまり歯の根が合わず、寒中のように息は凍えた。
投降というほんの僅かな仮初の安息に、おもわずすがりついてしまいそうになる。

105 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/11/30(月) 05:42:37.18 0
(だけど……)

仮にこの場で命はとられなくとも、リタリンは再犯、量刑は更に重いものとなるだろう。
良くて何年も懲役、悪ければ売買ルートを拷問で吐かされてそのまま絞首台へ直行もあり得る。
それでなくとも、4年前に捕縛された時は、本当に地獄だった。
囚兵として従軍させられ、辺境の開拓団に混じって危険な現生種との戦いの日々。
安全の確保された拠点の内側で眠れるのは正規兵だけで、日雇いの冒険者やリタリン達のような囚兵は危険な外側で夜を明かした。
闇の向こうからいつ敵が襲ってくるかも知れず、まともに眠れた夜はない。
食事も配給の乾燥食以外は危険な原生林をかき分けて自己調達しなければならず、渇きを凌ぐために泥水さえも啜った。
現住民族との抗争や、不潔な住環境、不衛生な食事による中毒……
一夜、一夜と日が登る度に仲間は減り、墓は増え、やがて生き残ってしまったことを後悔さえするようになる。
あの頃に比べれば、そして釈放後の今日までの日々を思えば、今こうして三名の魔女狩りに囲まれている現状など――

(――ピンチのうちにも入らない!)

殆ど強引な自己暗示だが、それでも覚悟は決まった。
震えはない。呼吸も安定している。心拍数は少しだけ高鳴っているが、諦める理由には程遠い。
三人の魔女狩り、先ほどの攻防ではエルフの曲げた魔法が鎧男に直撃していた。
連携が不完全、おそらくは街の酒場で結成した急ごしらえのパーティなのだ。
魔女狩りのような高報酬高難度のミッションは、こうした臨時の協定で頭数を確保することも珍しくない。
付け入るスキがあるとしたら、そこ。

リタリンは一度大きく息を吸って、深く深く肺の中身をすべて吐き出した。
唱えるのは城塞の呪文の一節。スペルの意味するところは『状況終了』。
城塞化が解除され、柱も壁ももとの木造建築のものへと再変換される。
結果発生するのは、屋敷の大部分を破壊されたことによる自然倒壊。
鋼の柱と鉄壁で辛うじて支えていた自重、木造の剛性では耐え切れない。
窓枠にしがみつくリタリンをくっつけたまま、残りの壁が倒れていく。
その真下にいるのは先程まで解体作業をしていた鎧の男だ。
彼の耐久力は確かに脅威だが、殴るのではなく『生き埋め』にされればどうだろう。

一方リタリンはステルス状態のまま二階の高さから空中に放り出された。
姿を隠しているとは言え、蜘蛛の糸に触れればその瞬間ステルスを剥がされ術者に居所が知れるだろう。
そして糸が巻きつき、捕縛……。だがリタリンは、敢えて糸のかかった場所へと飛び込んだ。
肩から糸に触れる。ステルスが解除される。自由落下する苔色の塊は糸に絡め取られて減速する。
しかし糸が捉えたのはリタリンの濃緑のローブのみ。鎖帷子を着込んだ中身は地面へと着地した。
蜘蛛の糸に引っかかり広がるローブをブラインドとして、エルフ目掛けて3つの布袋を投擲する。
手のひらサイズのそれは、普通に香りの良いハーブを詰めたいわゆるただのポプリ。
当たったところで意味はない。しかしエルフは警戒するはずだ。
堕廃の魔女と呼ばれた魔法使いが、ただの香草袋を投げつけてくるはずがないと。
楽師の少女が使った煙玉を見ているなら、なおのことその印象は強まる。
だからこのポプリは、エルフの対応力、集中力を使わせるための言わばデコイ。
本命は既に練り上げていた。翻るローブ越しにエルフを指差して、呪文を唱えた。

『形容する――"傀儡"と!』

リタリンの得意とする形容魔術は、対象が近くにありさえすれば杖や火の玉などで接触する必要はない。
術者から放たれる魔力の波動で対象の性質を『押し流し』、強引に書き換えるのだ。
いかにエルフが魔法を斬れようとも、城塞化を切って確保したリソースは強烈だ。回避にも防御にも限界がある。
形容したのは『傀儡』。しかし今のリタリンにエルフを傀儡人形の如く操る余裕はない。
ではどうなるか――糸の切れた操り人形のごとく、四肢が脱力して動かなくなるのだ。

振り向きながらリタリンは杖の機構を操作。先端の水晶球と柄をつなぐソケットが分離。
振り回せば遠心力で水晶球が鎖の尾を引きながら飛ぶ、棘なしのモーニングスター。

「っあああああああっ!!」

己を鼓舞する叫びを上げながら、堕廃の魔女は円を描くようにモーニングスターを振るった。
背後にいる魔笛の少女へ、振り向きざまに横殴りの一撃を見舞う。
完全な不意打ちだ。頭にヒットすれば意識を刈り飛ばし、腕に当たれば骨も砕けるリタリン窮地の一矢である。

106 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/11/30(月) 14:45:20.71 0
【俺だ。今回のターンに限り、投下順を後回しにしてもらいたい
 具体的にはラウテ嬢の後だ。彼女への直接攻撃がロールされている為、俺が先に動くのは……やりにくい
 ドラクマ、ラウテ嬢、俺という順番になるのか、そうでないのかは……悪いがそっちで決めてくれ】

107 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/11/30(月) 16:22:48.94 O
―――解体作業は順調。
現場でこういった肉体作業をすることは多々あったので、これくらいは全然苦にもならない。
それにしてもエルフの状況判断力には凄いものがあるとドラクマは密かに感心していた。

―――実はドラクマも密かに魔女の居所をだいたいは察知していたのだ。
スラム女特有の得も言えぬすえた匂いがしたからだ。
それは普通なら判らない程度の微香であり、他の匂いにかき消されてはいたのだが、ドラクマには匂った。
ハウンドドッグ並みの嗅覚を持つドラクマにとって嗅ぎ分けることじたいは可能なのだ。
では何故ドラクマは最初から魔女の居る場所を目指さなかったのかという疑問がわいてこよう。
簡単に言うと、誰にも指示されなかったからだ。
もうひとつ、匂いと魔女との関連性を疑わなかったせいでもある。
気分がハイになっていたが為に、細かな事にはいっさい気が回らなかったのだ。
なので当然、その瞬間を見逃した。

―――不意に金属の壁が木製へ変動。魔女が性質変化の魔法を解いたのだ。
よく見てさえいれば、その変化は顕著であった。
金属特有の光沢が失われ、弾性も変わり、硬度低下も引き起こったのだから。
この瞬間を察知し、逃げ出すだけの機知があればなんて事はなかったろう。既に周りの壁はほぼ取っ払ってあったのだから、避難場所はあった。
だが、ドラクマは逃げ出さなかった。
何故ならば超重騎士団に於いて、逃走という概念はいっさい無いからだ。
その場から逃れ出る事はあるっても、それはあくまで戦略的撤退の場合のみである。
作戦によりその場を退くか、或いは警護対象を庇う場合だ。
それを訓練で身体の隅から隅まで徹底的に叩き込まれていた。
だからこそ、超重騎士は死亡率が高かったのだ。ドラクマは落ちてくる瓦礫の山に対し、逃げ出さず果敢にもハンマーで攻撃を仕掛けた。
瓦礫の一端を天高く弾き飛ばす。
―――しかし、それになんの意味があろうか。
ドラクマの鎧姿は、たちまち落下物の雨に呑み込まれ、轟音と共に姿を消してしまう。
後に残るは、たくさんの塵や埃と、建物の瓦礫の堆積物の山だけだった。
【終劇】

―――長い間ありがとうございました。
ドラクマ先生の次回作に御期待下さい。

108 :名無しになりきれ:2015/11/30(月) 16:25:58.67 0
滑ってはるで

109 :名無しになりきれ:2015/11/30(月) 17:58:46.29 0
勝ったッ第三部完!!

110 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/11/30(月) 22:33:23.65 0
ラウテは油断していた。敵は間もなく二階から振り落とされ、その姿を露見させることだろう。
そうなればラウテの仕事は終わったも同じだ。二人が捕縛し、何処へなりとも連れて行けば良い。
だから気付かなかった。崩壊する建物がそのスピードを増したことに。
術式の展開であればラウテも気付いたであろうが、行われたのは術式の解除。
注意深く辺りを見ていたのなら普通の人間でも気付いたであろうが、ラウテは良く見ていなかった。
建物が崩壊することで、張り巡らされた糸が縺れ感知も難しくなる。
だから気付かなかった、魔女が既に地上へ降り立っていた事に。

ラウテが気にしていたのは、建物の崩壊の様子だった。
急激に崩れ始めたそれは、瞬く間にドラクマを巻き込んで堆積する。
舞い上がった埃で辺りは良く見えない。ドラクマは無事だろうか?
手にしていたリュートの音で辺りの埃を吹き飛ばそうとし、ようやく気付く。
形容魔法の気配、それがヴィクトルに放たれたこと。そして自らの身にも危険が迫っていることに。

>「っあああああああっ!!」

放たれたのは魔法の杖に仕込まれたモーニングスターのような一撃。
この手の武器は魔法使いより僧侶が好むとされている。
彼らは戒律により血を流す事を是としないためだ。代表的な武器はメイスだろう。
しかし刺突や斬撃ではないとしても、その威力が驚異的なのは知っての通りだ。
肉は断てずとも骨を砕き、当たり所が悪ければ致命的な一撃となる。
そしてこの瞬間、ラウテの身にもその一撃が迫っていた。

振り下ろされたそれは、しかしラウテの身に当たることはなかった。
それを止めたのは、空中に浮かぶ銀の輝き。ラウテの魔笛だ。
水晶球に当てるのではなく、その手前の鎖に当たることで威力を殺し、止めたのだ。
ラウテが振り返ったのは、まさに振り下ろされる瞬間だ。防御が間に合うはずはない。
それでは何故笛で攻撃を止めることが出来たのだろうか?

「…ありがとう、アムドゥスキアス。ラウテを守ってくれたのね」

そう、彼女の魔笛はただの道具ではない。悪魔が封印された超一級の魔道具だ。
悪魔が自らの意思を以って、持ち主を守ろうと働きかけることが可能なのだった。
ちなみに実際のフルートはかなり精密に作られていて脆いが、魔笛にその常識は当てはまらない。
ドワーフの槌の一撃でさえも、魔笛ならば耐えることが可能なのである。

かくして、魔女の放った渾身の一撃は儚くも止められた。しかし、それで終わりではない。
ラウテの判断は魔女のそれよりも早かった。ダガーを抜き放ち、相手の懐に飛び込む。
鋭い銀閃が走る。ラウテが狙ったのは魔女の左腕、杖を持つその手首だ。
零距離から放たれた一撃は、寸分違わず魔女の腕の腱を切断した。

「あなたの負けよ。…大人しく投降しないなら、ラウテも本気を出す」

再び距離を取ったラウテであったが、その両手にはダガーが構えられている。
音楽魔法とはあらゆる楽器を媒体として魔法を発動するシステムだ。
そしてそれは奏でられるのであれば、楽器である必要すらない。
彼女にとっての奥の手は、まだ出してはいないのだ。

【順番変更、受理しました。今回限りと言うことで、次からは元の順に戻します】

111 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/01(火) 22:33:54.20 0
>「イエッサー!」

大男が暴れ出す。
堕廃の魔女の居場所だけは崩さぬように残す、豪快かつ精密な破壊活動だった。
ふと、ヴィクトルの視線が少女へと落ちる。彼女は――くすくすと笑っていた。

「……歪んだガキは嫌いだぜ」

彼は舌打ちと共に小さく吐き捨てた。
理由は言うまでもなく、自分自身がその沿線上にいるからだ。

と、少女が笑うのをやめ、弦楽器を奏でる。
その音律がまるで虚空に記譜されるかのように、発光を帯びた蜘蛛の糸が床のやや上方に顕現された。

「……おい、だんまりか?悪いようにはしないと約束するぜ」

ヴィクトルもそれを受けて、魔女へ再び呼びかけを行う。
返答は――言葉ではなかった。
音だ。家屋が軋み、梁や柱がへし折れる悲鳴が屋内に響く。

「……まぁ、好きにしろ。どの道お前の運命は変わらねえ」

彼がそう呟いた直後、魔女が二階から飛び降りた。
彼女はそのまま捕縛術式に囚われ――しかしローブを脱ぎ捨てる事でそこから離脱。
ブラインドと化したローブ越しに小さな布袋をヴィクトルへと投擲する。

だが一流の魔女狩りの不意を突くにはあまりに緩やかな軌道。
細剣は目にも留まらぬ疾風のごとく布袋を切り裂く。

その直後だった。
崩落によって乱れた気流が落ち着き――ローブの向こう側の魔女が、自分に狙いを定めているとヴィクトルが気付いたのは。

>『形容する――"傀儡"と!』

魔女が呪文を唱え、魔力の波動が迸る。
彼は全身から力を失ったかのようにその場に跪いた。

>「っあああああああっ!!」

しかし魔女の奮闘もそこまで。
渾身の力で放ったモーニングスターの一撃は、魔笛の「計らい」により防がれる。
そのまま一瞬の内に彼女は腕の腱を切断され――その喉元には刃が添えられていた。

>「あなたの負けよ。…大人しく投降しないなら、ラウテも本気を出す」

刃は、少女のものではない。
彼女は魔女から距離を取っており、得物はダガーナイフだ。

「……どうした。幽霊でも見たような顔しやがって」

細く鋭いその刃は、紛れも無くヴィクトルの細剣だった。

彼の言葉と同時、魔女の背後に「あった」その場に跪くヴィクトルの姿が消えた。
ぱしゃり、と小さな水音を残して。

ヴィクトルは形容魔法を回避していた。
更にその際に、魔法によって形成した虚像をその場に残していたのだ。
大男の鎧に付与した隠密術――水を鏡面化させる魔法の応用だ。
その上で、自身は姿を隠し――あたかも形容魔法をまともに受けたかのように見せかけた。

112 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/01(火) 22:34:43.59 0
だがどのようにして彼は形成魔法を躱したのか。
答えは――非常に単純だ。

ヴィクトル・シャルフリヒターの身長は低い。
154センチメートル――14歳の少女と12センチしか変わらない。
だが体重は62キログラム――彼の低い身長にしては、非常に重い。
これは十分な栄養状態なら、170センチ弱の人間の適切な体重だ。

さりとて、彼の体型は決して肥満気味という訳ではない。むしろ細身ですらある。
つまり――彼は非常に高密度で、強靭な筋肉を有しているという事だ。

形容魔法を躱した術は、ただただ俊敏極まる跳躍だった。

「……さっきは説得の仕方が悪かったな。言い方を変えよう」

ヴィクトルは緩やかな歩調で魔女の側方から背後へと回りつつ、語り出す。

「お前に死ぬ自由はない。お前にある選択肢は俺に従うか……」

そして彼女の膝を蹴っ飛ばし、跪かせる。

「苦痛と共に全ての名誉を失って……その後で俺に従うかだ」

目線よりも下にまで落ちてきた彼女の左肩を抑え込む。
そして――白い肌が帷子もろとも削ぎ取られた。
しかし削ぎ取ったのは細剣ではない。

「こんな風にな」

ヴィクトルの口元が、血で濡れていた。
帷子の切れ端を、彼が吐き捨てる。
魔女の皮膚を削ぎ取ったのは、彼の歯だ。噛み千切ったのだ。

処刑人は、死刑囚をただ殺すだけの仕事ではない。
時には静謐で穏やかな死を与え、時には拷問によってあらゆる名誉を奪い去り、殺す。
その名誉を奪うという観点において、捕食という行為は極めて効果的だった。
拷問は人間の受けるものだが、捕食は最早その域にすらない。
苦痛だけでなく多大な生理的嫌悪感を与える術として非常に優秀だろう。

だが、だとしても、処刑人達が死刑囚を捕食しろなどと教育を受ける事は決してない。
ましてや彼が優れた筋骨格を持っていようと、帷子を噛み切るなど通常の人間には――無論エルフにも不可能だ。
その行為はヴィクトル固有の――「歪み」によるものだった。

「いいか、聞け。お前は金のなる木だ。
 以前捕縛された時は僻地開拓の最前線に駆り出されたそうだが、俺はそんな事はさせない」

ヴィクトルの声色は淡々としていたが、同時に偽りの気配もそこにはなかった。

「お前が望むなら、お前の人生を、多少はまともな道に戻してやったっていい」

ヴィクトルは、笑みを浮かべようとしていた。
冷徹な拷問吏の笑みではなく――穏やかな微笑みだ。
まるで、生まれた時から奴隷だった少年を救った、魔女狩りの男が浮かべるような、笑みを。

とは言え「それ」を完全に真似するには、彼はあまりに歪み過ぎていた。
ほんの一瞬だけ浮かんだ微笑みは、すぐに皮肉げで、険のある表情の中に溶けて消えた。

「俺はこの世の何もかもが嫌いだが……不幸な奴だけは、嫌いじゃない」

113 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/02(水) 03:28:42.16 0
鋭い円弧を描いて魔笛の少女へ迫る水晶。
しかし骨折必至の質量攻撃は少女の鼻先をかすめる軌道で小さな弧をつくり、引き返した。
ギャリィッ!と鋼の擦れ合う音と共に魔笛が鎖にぶち当たり、振り子を途中で摘むように錘の動きを止めたのである。
その挙動に誰より驚きを示しているのはほかならぬ少女であった。魔笛はひとりでに動き、少女を救ったのだ。

「そんな……!」

魔女は絶望に呻く。返答は銀の一閃。
少女が抜き放ったダガー、その鋭利な先端はモーニングスターを戻しきれないリタリンの左腕を切り裂いた。
手首に赤い線が走り、血が吹き出す……柄を握る手に力が入らず、魔女は杖を取り落とした。
出血はひどくはないが、左手の腱を切られた。もう武器を持つことは叶わない。

>「あなたの負けよ。…大人しく投降しないなら、ラウテも本気を出す」

距離をとりながら油断なく宣言する少女。
リタリンは左手首を抑えながら痛みに耐え、脂汗の浮かんだ双眸で魔笛の少女を睨めつけた。
とんでもなく手練ではあるが、まだ甘さがある。魔法使い相手に四肢をぶった斬って安心できることなどないのだ。
この喉笛を食いちぎられないかぎり、呪文は唱えられる。
大男は瓦礫の下、エルフはあと半刻は指先ひとつ動かせまい。残る敵は魔笛の少女ただ一人。
こいつさえどうにかできれば、この廃屋から逃げおおせる見込みだってあるのだ。
短縮詠唱――多大な集中力と威力の減衰を免れないものの、リタリンにだって奥の手はある。
気取られぬよう、静かに、普通の呼吸に上乗せして詠唱用の呼気を溜めていく……
その喉元に、白刃が突きつけられた。

「ぴょっ!?」

驚きのあまり呼気が漏れて変な声が出てしまった。
リタリンの白い喉に切っ先を向けているレイピア……その柄を握るのは、傀儡へと変えたはずのエルフだった。

>「……どうした。幽霊でも見たような顔しやがって」

そんな馬鹿な、と視線だけで背後を確認する。四肢を脱力し膝をつくエルフの姿は確かにある。
エルフが二人――その異質を把握する前に、跪いた方のエルフが溶けるように崩壊した。

(水魔法の、幻影……!)

だが、半端者とは言えリタリンの魔女としての眼は確かだ。
幻術、デコイ、それら見当識の欺瞞を引き起こす魔法を見抜く術もまた魔法使いの範疇。
確かに、形容魔法をかけた段階ではエルフは生身であったはず。
――つまり、エルフは魔法を見てから躱したのだ。

(どういう身体能力してるの……!!)

これで二対一。それも前後を抑えられている。
逃げようにも、完璧なタイミングで放たれた形容魔法を回避できるエルフの敏捷性から逃げ切れる気はしなかった。

>「……さっきは説得の仕方が悪かったな。言い方を変えよう」
>「お前に死ぬ自由はない。お前にある選択肢は俺に従うか……」
>「苦痛と共に全ての名誉を失って……その後で俺に従うかだ」

膝を後ろから蹴られ、支えを失って跪く。
瞬間、肩口に灼熱感。思わず悲鳴を上げて手で抑えると、鎖帷子に穴が空き肉がえぐり取られていた。
まるで狼にでも食らいつかれたかのように。

114 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/02(水) 03:29:22.67 0
>「こんな風にな」

エルフが何かを口から吐き出す。
埃っぽい廃屋の床に転がったのは、鎖帷子の切れ端と、リタリンの皮と肉。
エルフの口元が血に濡れていた。リタリンは文字通り肩口をエルフに『喰われた』のだ。

「〜〜〜〜〜〜ッッ!!」

痛みよりも驚愕、そして恐怖に思考が塗りつぶされた。
あり得ない、とかどういう歯をしてるのか、とか疑問と怖れで頭がいっぱいになる。
ただひとつだけ一貫しているのは、自分はこの狂人に敵うはずがないという絶対の事実であった。

>「いいか、聞け。お前は金のなる木だ。
 以前捕縛された時は僻地開拓の最前線に駆り出されたそうだが、俺はそんな事はさせない」
>「お前が望むなら、お前の人生を、多少はまともな道に戻してやったっていい」

それは。
最上の恐怖と、痛みと、そしてこれからもっと酷いことが起きるという予感。
そしてそれを取り除いてくれるかもしれないという至上の報酬。
世界最強の飴と鞭が、同時にリタリンに降ってきた。

>「俺はこの世の何もかもが嫌いだが……不幸な奴だけは、嫌いじゃない」

魔女狩りが嗤う。狂った笑み。しかしまるでたった今咲いたばかりの花のような、清廉な微笑み。
それはすぐにしかめっ面の中に溶け、魔女を見下ろす睥睨の視線に変わった。
リタリンは向こう一生分かあろうかという冷や汗と脂汗を流し切って、震える唇で呟いた。

「"堕廃の魔女"、リタリン・アサナギ・フェニデート。……貴方の元に降ります」

無事な方の右手で杖を置く。
魔女にとって己の名を、特にフルネームを相手に伝えることは最大級の降伏を示す。
前述の通り呪術には相手を名で縛るものが多く、本質に近い名前を知っていればいるほどその効力は強まる。
当局に剥奪されていたミドルネームは、彼女がどこの里のドルイドかを表すもの。
つまり、出身から家系、伝承する魔法の形質まで全て知ることが可能な名前だ。
『アサナギ』は、薬草学に長け様々なハーブ、ポーション、ドラッグに至るまでを継承する氏族である。
呪術師にフルネームを伝えれば、千里離れたところからリタリンの息の根を止めることすら可能。
故に魔女狩りは、対象となる魔女のフルネームを(拷問で)聞き出すことを成功条件としている。

そして己の生殺与奪の全てを差し出して――
リタリンは、投降した。

115 :ドラクマ・ヴァン=グリオン ◆8POXhzUz6nBJ :2015/12/02(水) 12:57:07.69 O
―――一方その頃ドラクマは、分厚い瓦礫に埋もれ、全方位から圧されていた。
鋼のアーマーを着込んでいる為に直接潰されるという事態だけは避けられていたが、身動きはいっさいとれなかった。

(なぁに、これくらいなんてことないぜ。すぐ抜け出してやるさ)

―――はじめはそう、軽く考えていた。
だが、力を入れようにも全身が瓦礫にくまなく圧されている。
身体を動かすにはそれなりの溜めが必要だ。
だがここには溜めをつくるだけのスペースがない。
如何に常識を越えた筋肉を誇るとはいえ、筋肉に力を入れるにも呼吸というものが必要だ。
だが、ここでは肺が圧され、うまく呼吸ができない。

―――おまけに暗い。眠くなってきた。
極めつけは、圧されていたが為に全身の傷口という傷口から手酷い出血が始まっていた。
そのせいで、倦怠感と共に、急速に意識が遠のいていく。

(ククク。なんてこった……最高にハイな気分だぜ!)

―――ドラクマにはそれが逆に気持ち良かった。
ジャンキー特有のフラッシュバック現象も重なり、脳内が痒く熱くなってきた。
―――やがてドラクマは意識が徐々に薄れていき―――それにいっさい抗うのを辞めた。
【無】【闇】【死】

116 : ◆8POXhzUz6nBJ :2015/12/02(水) 20:10:01.52 O
【同僚の皆さんドラクマはこれで完全に死にました。蘇ったとしてもNPCでしょう。
年末はリアルが忙しいのでこれ以上参加するのは無理そうです。
短い間でしたがありがとうございました。
では、さようなら】

117 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/02(水) 20:17:16.90 0
お疲れ様、短い間だったが俺はアンタとの時間を楽しめたよ
また気が向いたら遊びに来てくれ

118 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/02(水) 21:12:43.62 0
【忙しい中参加して頂きありがとうございました。機会があればまたよろしくお願いします】

【順序は変わりましたが、今ターンではヴィクトルさん先にお願いします】

119 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/02(水) 21:16:37.38 0
【>>ドラクマさん  お疲れ様でした。
 またぜひご一緒したいと思います。ここで、あるいはどこかでお会いできたら嬉しいです。】

120 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/03(木) 04:30:25.83 0
>「"堕廃の魔女"、リタリン・アサナギ・フェニデート。……貴方の元に降ります」

「……それでいい」

ヴィクトルは小さく頷いた。

「お前は正しい選択をした。俺は魔女でも悪魔でもないからな。嘘は吐かない。
 約束通り……お前を金にして、ついでにお前の人生を少しだけましにしてやる」

そして魔女の右肩に手を翳す――治癒魔法が施される。
彼はエルフであり魔女狩りである――小規模な負傷程度なら魔法による治療が可能だった。

「今回、異端審問所に『密告』をしてきたのはこの街の裏側を牛耳るゴミ共だ。
 つまり冒険をするよりも、他人を食い物にした方が楽で稼げると気付いた賢い連中だ」

次にヴィクトルは手にした細剣で床を切り刻み始めた。

「だがコイツら『も』また別の連中によって異端審問所に密告されている。
 組織がでかくなって、金を稼いで、気が緩んだか。恨みすら残らないよう徹底する事を怠った」

精密な動作で刻み込まれた傷跡は、三日月と十字を重ね合わせたような模様を描いていた。

「とは言え、奴らがこの街のどこに居を構えているのかすら俺達は知らない。
 下調べから始めるんじゃ、手間も時間も掛かり過ぎる。そんな仕事は誰も受けようとしなかった」

『闇に紛れ眠れる信仰』を象徴する異端審問所の記章である。
異端審問所には元々、教会の聖堂騎士が人身御供のように出向していた過去がある。
穢れた戦いに敢えて身を投じる事で、その自己犠牲によって信仰を確立させる為に。

「つまり……お前はお誂え向きって訳だ」

何が言いたいのか分かるだろう、と尋ねるようにヴィクトルは魔女を見た。

「お前を餌にすれば、奴らの尻尾を掴める。街中の需要を掻っ攫っていった調合師だ。
 魔女狩りの玩具になって殺されるのを見過ごすのは勿体無いよな」

彼女がどんな表情をしていようとも、彼は悪辣な笑みを浮かべるだろう。

121 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/03(木) 04:33:55.43 0
「上手く頭だけ切り落とせりゃ、奴らの組織をまるごと掻っ攫ってやれるかもな。
 不労所得ってのは大事だぜ。お前にも一枚噛ませてやったっていいぜ、クソガキ。
 まぁ……具体的にどう釣り上げるかは、これから考える事になるが」

と、不意にヴィクトルは床に刻んだ異端審問所の記章を剣先で叩く。

「で、どこに刻んで欲しいんだ、これ」

そして――魔女を睨み上げるようにして、そう尋ねた。

「……あぁ、説明がまだだったな。お前には魔女狩りになってもらう。
 まともな人生を送るには職が必要だよな。
 実入りはいいし、横柄に振る舞っても誰にも咎められない、いい仕事だぜ」

それに、とヴィクトルは続ける。

「大抵の魔女は、死んだら何も喋れなくなる。
 お前が死んだら、あの火事はお前の仕業になる予定だった。
 ……お前も同じ事が出来るって訳だ。つまり」

一拍の間を置いて、彼は次の言葉を紡ぐ。

「四年前を、無かった事に出来る。お前程度の魔女が、
 もっと才能のある魔女の傀儡にされたとしても、それは罪でも恥でもない……
 俺の言っている意味が分かるな」

細剣の切先が、魔女に突き付けられる。
ヴィクトルの声音は、視線は、嗜虐の精神を宿してはいなかった。
平時の振る舞いからは想像が出来ないだろうほど真剣に、彼は魔女の今後を語っていた。

「もう一度聞くぞ。どこに刻んで欲しい」



【不労所得の獲得は書く事が少なすぎて悩んだ末の「こんなのも面白いんじゃないか」程度のものでしかない
 既に今後の展望があるならもちろん、無かったとしても、別に拾ってくれなくても構わないし
 仮に拾われたとしても俺が話を主導するつもりはない事を明言しておく】

122 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/03(木) 23:40:32.13 0
魔女はヴィクトルの不意打ちに敗れ、そして投降した。
それを見定めたラウテは、ダガーを鞘に収め振り返る。
彼女が気にしていたのは、他でもない。瓦礫に飲み込まれたドラクマだった。
ラウテの能力、及び召還出来る使い魔の中には、この瓦礫をどうにか出来る方法はない。
それでも何とかしようと、彼女は召還の笛の音を響かせた。
現れたのは、一頭の何の変哲もない大型犬。ラウテはその犬に語りかける。

「お願い、ドラクマのおじさんを探して。あなたなら分かるでしょ?」

犬は忠実にその命令に従い、瓦礫に登り匂いを嗅ぐ。
やがて何かを発見したのか犬は一声吠え、彼女の元へと戻ってきた。

「……そう、死んでるのね。ありがとう、もう帰りなさい」

犬は死臭には敏感だ。匂いだけで相手の生死を知るのは造作もない。
ドラクマはこの瓦礫の中で息を引き取ったのだ。今更どうする事も出来ないだろう。
仲間を失ったのは手痛い。しかし、冒険者たるもの何時何処で死んでもおかしくはないのだ。
埋まってはいるが、死体が残る死に方をしただけでも僥倖と言えよう。
ラウテはせめて安らかな死であるようにと小さく祈ると、それっきり瓦礫を振り返ることはなかった。

彼女が瓦礫を気にしている間に、ヴィクトルは驚いた事に魔女を……リタリンを異端審問官に勧誘していた。
彼女の魔法の腕前はまだ未熟に思えたが、判断力は悪くない。鍛え上げればそれなりに使えると見越したのだろう。
別に恨みを持つラウテではないため、彼女がこちら側に来ることは別に厭わない。
ドラクマは弱かったのだ。だからどうとも思わないラウテである。

「左腕、出して。今ならまだくっつく。痛いけど我慢してね」

そう短く告げたラウテは、笛を仕舞いリュートに持ち替えると、それを奏で始めた。
しかし、それでは切断された腱を修復するには至らない。だから彼女は「歌った」。
そもそも呪文詠唱は言葉、声によるものだ。最も原始的な音楽魔法は歌から生まれたものである。
言葉の羅列だけでなく歌に乗せる事で効果を倍加する。それが音楽魔法の真髄なのだ。
更にリュートの伴奏が付く事で、複雑な魔法陣を描くのと同等の効果も現れる。
ラウテの歌は、最早人間に出せる音域に留まらなかった。異様な音階を発声している。
それが彼女にとっての奥の手、最大級の音楽魔法だった。

123 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/03(木) 23:41:27.92 0
奏でられる音と共に、リタリンの傷口が開き、縮んだ腱が無理やり引き伸ばされる。
それはかなりの苦痛を伴うものだったが、ラウテが音楽魔法を止めることはなかった。
切断された腱が治癒され、傷口もだんだん塞がって来た頃には痛みもなくなるだろう。
最後の一節まで歌いきったラウテは、懐から軟膏と包帯を取り出し処置をした。
そもそもラウテはずっと一人旅をしてきたのだ。怪我をすることなど珍しくもない。
手早く傷の処置を終えた彼女は、魔力の限界を感じその場にしゃがみこんだ。
声による高度な治癒魔法はかなりの魔力を消耗する。音楽魔法が楽器を主体とするのはそのためだ。
だがラウテは若い。一休みもすれば魔力もすぐ回復することだろう。

>「上手く頭だけ切り落とせりゃ、奴らの組織をまるごと掻っ攫ってやれるかもな。
> 不労所得ってのは大事だぜ。お前にも一枚噛ませてやったっていいぜ、クソガキ。
> まぁ……具体的にどう釣り上げるかは、これから考える事になるが」

「…引渡しを偽装して、幹部を捕らえて吐かせる、じゃダメかな?
 リタリンが重大な情報を握っている事にすれば、多少なりともなんとかなる、かも?」

言葉に纏められる程簡単な作戦ではないが、組織を一つ潰すつもりなら徹底的にやる必要があるだろう。
もちろん参加する事にラウテは異存はない。どうせ乗りかかった船なのだから。
森などに好んで潜り込んではモンスターと戦う日々を暮らしてきたラウテである。
長期に渡る戦闘などは慣れっこだ。この程度の修羅場は幾度となく乗り越えている。
魔力こそ消耗しているが、戦いの道具に傷みはないしまだ戦える余地はあった。

「下っ端の幹部でも情報を吐かせて、少しでも上の連中を狙えるなら…なんとかならない?」

実のところラウテはあまり真面目に考えてはいなかった。基本頭脳労働は苦手なタチだ。
ついでに夜も更けて少し眠い。体を動かすか何か食べてないと、居眠りをしそうな気分だ。
そこでラウテは思い出し、持って来ていた荷物から三つの包みを取り出した。

「ふぁ…ところでシミットがあるけど、食べる? 酒場で包んで貰ったの」

シミットはドーナツ状のぱりっとしたパンだ。携帯食にはもってこいだろう。
激しい戦闘のあとにすぐ食事というのも如何なものかと思うが、彼女はまだ育ち盛りだ。
戦いで消耗したときは何かを食べるに限る。それがラウテの持論でもあった。

124 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/04(金) 04:42:07.37 0
>「お前は正しい選択をした。俺は魔女でも悪魔でもないからな。嘘は吐かない。
 約束通り……お前を金にして、ついでにお前の人生を少しだけましにしてやる」

膝を地につけたままの魔女に、魔女狩りは穏やかに言った。
食い千切られた肩に慈温を帯びた光が射し、痛みと共に傷口がすうっと消えていく。
治癒の魔法だ。

>「左腕、出して。今ならまだくっつく。痛いけど我慢してね」

同様に、切られた左の腱は斬った本人が治してくれた。音律による詠唱、音楽魔法。奏でるのは笛でも弦でもなく、少女自身の声だ。
聖歌隊の一糸乱れぬ斉唱のように静謐で、どこかこの世のものでないかのような悍ましさが共存する歌声。
悪魔――誰に言われるでもなく、ましてや治癒の魔法を受けているにもかかわらず、そんな印象が過ぎる。

「……っつう」

創傷の過程を逆廻しにするように、強烈な痛みと共に傷口が修復されていった。
しかし切断された腱を元通りにするのだからそれなりのリスクは承知の上。
瓦礫の下に埋もれた『三人目』のことを、忘れているわけではない。
軟膏と包帯による処置が終われば、負傷前と遜色なく杖を握れるようになった。

「……あ、ありがとう」

傷を負わされた張本人に言うのもどうかと思ったが、お礼は自然に口を出た。
それはきっと、詠唱を終えた途端人が変わったように眠そうな眼に戻った少女を見て、毒気を抜かれたからかもしれない。

>「今回、異端審問所に『密告』をしてきたのはこの街の裏側を牛耳るゴミ共だ。
 つまり冒険をするよりも、他人を食い物にした方が楽で稼げると気付いた賢い連中だ」

「ああ、やっぱりバレてたのね」

エルフの言は、リタリンの腑にストンと落ちた。
得意先のごろつき共からか、あるいは別の経路か、やはりリタリンという魔女の情報は漏れていた。
おおかた街で無遠慮にキメているところを見られたか、端金で顧客に売られたかのどちらかだ。
いくら用心深く立ちまわったところで、究極的には戸を立てられないのが人の口。
結局、リタリンが魔女狩りの標的になるのは時間の問題だったのだろう。
エルフは地面に何事か絵図を描きながら、今回の案件の前後関係を説明する。
リタリンと同じように、『商売敵』――この街の暗部も魔女狩りの対象になっていること。
そしてその組織を釣り出す餌として、リタリンが有用であるということ。

>「…引渡しを偽装して、幹部を捕らえて吐かせる、じゃダメかな?
 リタリンが重大な情報を握っている事にすれば、多少なりともなんとかなる、かも?」

魔笛の少女も乗り気のようで、具体的なプランを固める方向へ話を進めている。

「ちょ、ちょっと待って」

リタリンはいきなり反駁した。大事なことをまだ聞いてない。

「私の人生をまともにする方のプランは――?」

思わず身を乗り出すリタリンに、ずいと差し出される包みが一つ。
魔笛の少女が持ちだしたのは、輪っか状に焼き締められた硬いパンだ。
表面を覆うゴマが香ばしく、片手で立ち歩きながら喫食できるようになっている。
リタリンは開拓地にいた頃配給食として似たようなものを食べたことがある。
ろくに兵站の通らぬ未開の地で長く保存できるよう極限まで水分を抜いてあり、固くてふやかさないと食べられたものじゃない。
しかしろくな味付けもないなか綺麗とは言えない生水でふやかしたこれは、この世で最もまずいものの一つだとリタリンは回顧する。
生臭く、ぼそぼそとした食感で、噛むと渋く異臭のする液体がじわりと染み出すあの味……。
思い出すだけで病気になりそうだ。家畜でももっと良いものを食っている。ろくに食べられたものではなかった。
そんな思い出から差し出されたシミットを真っ青な顔で見ていたリタリンだったが、魔法の連発で消耗しているのは彼女とて同じ。
倒壊に巻き込まれて備蓄の食料もお釈迦になった手前の空腹には耐えかね、ままよとひとかじりしてびっくり。

125 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/04(金) 04:43:02.80 0
「美味しい」

焼きあげてからそう時間が経っていないのかまだ温かく、さっくりと歯が通りゴマの香りが溢れだす。
そもそも保存性をそこまで必要としない為か、中身はしっとりとしていて小麦の甘みとほんのりと塩気も感じる。
開拓地で口にしたアレと同じ食べ物だとはまるで信じられなかった。

>「で、どこに刻んで欲しいんだ、これ」

「ええ?」

シミットに舌鼓を打ったところにエルフがレイピアを手遊びしながら聞いてきた。
剣先が示しているのは先程から地面に刻んでいた図面だ。異端審問当局を示すエムブレム。それを図式化したものだった。

>「……あぁ、説明がまだだったな。お前には魔女狩りになってもらう。
 まともな人生を送るには職が必要だよな。
 実入りはいいし、横柄に振る舞っても誰にも咎められない、いい仕事だぜ」

「あの、私、魔女……」

魔女を狩る魔女など前代未聞だ。魔女というものは『同業者』である以上に『同胞』という意識が強い。
修行の制度が師弟関係に近い為魔女同士の間柄が緊密なのはもちろん理由の一つであるが、
何より異端審問という脅威に対して立ち向かうあるいは逃げ隠れるには固く団結する必要があったからだ。
だから魔女は絶対に他の魔女を売らない。拷問にも屈しない。
というより、拷問や自白魔法などで自ら情報を漏らさないように強固な封印を自身にかける。
これは魔法の専門家である魔女が全霊の才能を掛け歴史による洗練を経たもので、高位の魔女にすら解呪は不可能。
然るに、それだけの封印を『掛けざるを得ない』のが魔女同士の繋がりというものなのだ。

その禁を破り、魔女を狩る。前人未到の極悪非道、人非人の外道と謗られても言い訳の聞かぬ最低の背信行為だ。
少なくとも二度と魔女と名のつく者とは関われないし、噂が広がれば往来で呪い殺されても文句は言えまい。
そんな業を背負うだけの利が、果たしてあるのか――

>「大抵の魔女は、死んだら何も喋れなくなる。お前が死んだら、あの火事はお前の仕業になる予定だった。
 ……お前も同じ事が出来るって訳だ。つまり」
>「四年前を、無かった事に出来る。お前程度の魔女が、
 もっと才能のある魔女の傀儡にされたとしても、それは罪でも恥でもない……俺の言っている意味が分かるな」

四年前、人里をまるごと一つ廃人の巣窟に変えた、あの事件。
リタリンが『堕廃の魔女』の烙印を刻まれた過去を、もっと凶悪な別の魔女におっかぶせ、帳消しにできる。
かつて魔女であったという事実を消してしまえるのだ。
それは、この四年間リタリンが死ぬ思いをしてまで欲した、『普通の人の人生』を取り戻せることを意味する――!

>「もう一度聞くぞ。どこに刻んで欲しい」

再びの問いに、答えはもう決まっていた。

「ここに」

リタリンは鎖帷子の襟口をぐいと下げて、白い首筋を露出させた。
側面に刻まれているのは、四年前当局によって押された『堕廃の魔女』の烙印だ。
特殊な染料で洗っても消えず、簡単な魔法で服越しにでも存在を確認できるその刻印。
その上に、刻んで欲しいとリタリンは答えた。

「魔女でありながら、魔女を狩る者。その背信の戒めとして」

烙印の上に魔女狩りの紋章だ。誰が見たって裏切り者は一目瞭然。
それこそ、この先出会う人の全てから嫌悪され、後ろ指さされ石を投げられることすら甘んじて受け入れなければなるまい。
どこか別の場所に刻んで、烙印を隠してしまうことだってできるだろう。
しかしリタリンはそれを良しとしなかった。その先にある光を手にする為に、背けてはいけない真実だ。

「私は私の尻を拭うわ」

126 :リタリン ◆77DMiRtfME :2015/12/04(金) 04:43:29.33 0
さて、リタリンの首級を持って行くはいいが、相手の陣容について魔女狩り達は知らないことばかりだ。
だがリタリンはこの街に根を張ってもう一年になる。
堕廃の魔女は自堕落で臆病だが、臆病故に敵対する可能性のある者の調査は怠慢しなかった。

「この街の裏を取り仕切ってるのはオメルタっていう地上げ屋でね。
 元々は不動産を取り扱う商会の親分だったんだけど、妹を市長の嫁に出してから特権濫用でやりたい放題。
 強引な立ち退きからの土地転がしで種銭つくって、違法薬物から奴隷商まで法の外にあるものは片っ端からね。
 この街のお店は――あの酒場ももちろん――全部連中の傘下と思っていいわ」

と、ここまではリタリンでなくともこの街に長く住む者なら誰でも知っていることだ。
では、魔法という強大な力を持ちながらリタリンがずっと逃げ隠れしつつこそこそと営業しなければならなかったのは何故か。
――純粋に、連中が強いからである。
それは権力という意味であり、武力という意味であり、もっと単純化するならば、兵力だ。

「連中、護衛に冒険者をしこたま雇っているのよ。調べがついてるだけでも協会認定の乙種冒険者が十人弱。
 あとこれは未確定だけど、"甲種"までいるって話も聞いたことがあるわ」

冒険者協会は、正式認定(つまり会費を納め、仕事の優先的な斡旋を受けている『まっとうな冒険者』達)の格付けを行っている。
上から順に甲種、乙種、丙種とされたこのクラスは、仕事の実績や戦闘の実力などを加味して厳正に箔押しがされている。
つまり、戦力の指標として極めて実情に則した信頼できる格付けというわけだ。

駆け出しや実戦経験の少ない若手を丙種冒険者と言う。
これはごく普通の傭兵、王国の一般兵卒と同等の実力を持つ。
リタリンの雇った私兵、酒場のごろつき達もここにあたり、実際丙種認定を持つ者もいた。

熟練者、駆け出しが順当に実績を積んだ先にあるのが乙種冒険者というクラスだ。
正規訓練を受けた一個分隊並の実力を持ち、大型の魔獣を数人で討伐できるレベルである。
大規模な任務では指揮官を担うことも多く、一般的な冒険者の多くはこの乙種まで登って引退を迎える。

そして冒険者の中でも精鋭、一線級の実力者が甲種冒険者である。
このクラスになると英雄とも呼ばれ、村ひとつ救って伝説を残している者も少なくない。
王都の宮廷武官の門戸さえ開かれる、全ての冒険者が最後の極致として目指す高みだ。

いち地上げ屋の私兵にするには過剰なほどの戦力を、しかし彼らはものにしている。
オメルタがそれほどの立場と財力を持ち――この街の冒険者協会と癒着している何よりの証左だった。

「私をエサに釣り出すのは良いけど、喰らいつかれないようにねぇ」

それから、とリタリンは思い出したように言った。

「名前も教えてもらってないじゃない。
 あぁー安心して、呪いに使ったりしないから」

【職業:無職→魔女狩り】

127 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/06(日) 00:27:05.15 0
>「ここに」

二度目の問いへの答えはすぐに返ってきた。
魔女が差し出した、魔女の刻印が浮かぶ白い首筋に、ヴィクトルは小さく首肯。
細剣の切っ先を左手で包み込むようにして魔力を篭め――剣閃。
精緻を極める斬撃が魔女の首筋が走り――傷口から滲み出た血が魔女狩りの刻印を描き出す。

「リタリン・アサナギ・フェニデート。今この瞬間より、お前の存在は書き換わる」

水の魔法の応用。
それは性質的にはただ小規模な水を操るだけの単純な魔法。
たが、ヴィクトルは彼女の真名を知っている。
ゆえにその魔法は彼女という存在そのものに刻み込まれる。
本職の魔女であっても、最早その刻印を消し去る事は叶わない。

「次は、お前の番だ。お前の人生は……お前自身の手で書き換えろ」

ヴィクトルは細剣を鞘に納めつつ、そう言った。
静かな、だが真に迫る言葉――捨て切れない人間性。
より正確には何度捨てても何処からともなく湧いてくる感情。
ヴィクトルが表情を顰める――その感情が、彼は嫌いだった。
それは、歪み切れない、過去に囚われ続ける自分が存在している何よりの証左だからだ。

「……何してる。今のはさっさと俺の役に立てって意味だ」

自己嫌悪を他者への嫌悪に挿げ替えるように、ヴィクトルは魔女を睨んだ。

>「この街の裏を取り仕切ってるのはオメルタっていう地上げ屋でね。

「……なるほどな、嫌いなタイプだ」

ヴィクトルが吐き捨てた嫌悪からは平時の如き「装い」の雰囲気が薄れていた。
彼は生まれた時から奴隷だった。他人を食い物にするような悪党が、彼は心底嫌いだった。

「連中、護衛に冒険者をしこたま雇っているのよ。調べがついてるだけでも協会認定の乙種冒険者が十人弱。

だからどうした、と言わんばかりにヴィクトルは鼻で笑った。
地上げ屋がどれほどの兵力を有していようと、彼らは『守勢』だ。
利益を、その為の地盤を守らなくてはならない。
それは即ち、先ほどまでの堕廃の魔女と同じだ。
陣を敷き、そこに留まる者――ヴィクトルが最も得手とする獲物だ。。

> あとこれは未確定だけど、"甲種"までいるって話も聞いたことがあるわ」

「……なんだと?」

しかし魔女の口から「甲種」の存在が示唆された瞬間、彼の表情が一変した。

「……やりにくいな」

近くに倒れた柱の残骸に深く腰かけ、苦い表情で右手を顎に添える。
ヴィクトルはかつて一度、甲種の戦いを見た事がある。

死灰の魔女――魔法の深奥を極める為、不老不死の研究に没頭し、村一つを吸血鬼の巣窟と変えた魔法使い。
その征伐を請け負った時の事だ。
彼が魔女の潜伏しているとされる村に到着した時には、既に先客が暴れ回っていた。
ヴィクトルの眼をもってしても追い切れない、爆撃の如き高速剣。それを実現する体捌き。
切り裂かれようと灰と化して飛散、再生する吸血鬼を、灰未満にまで切り刻み無力化する精密性。
まさしく絵空事の中に出てくる英雄の如き戦闘を、ヴィクトルは目の当たりにした。

128 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/06(日) 00:28:34.97 0
甲種の中にも優劣があるとは言え、決して楽観視出来る相手ではなかった。

>「私をエサに釣り出すのは良いけど、喰らいつかれないようにねぇ」

「……そうだな。最悪の場合は、お前を生贄に何とか逃げる事にするさ」

魔女の揶揄めいた台詞を皮肉げに鼻で笑い飛ばし、ヴィクトルは軽口を叩いた。
まだ存在するかも分からない敵に、楽観視するのは言語道断だが、怯み過ぎるのも良くない。

奇しくも話を逸らすようなタイミングで、魔女がそういや、と声を発した。

>「名前も教えてもらってないじゃない。
 あぁー安心して、呪いに使ったりしないから」

「……ヴィクトルだ」

ヴィクトルは何の躊躇いもなく名を名乗った。
魔女を信頼しての選択ではない。
単にそれが、彼の本名ではないからだ。

「ヴィクトル・シャルフリヒター……まぁ、『グランドネーム』だがな」

しかし同時に、偽名という訳でもない。
魔女狩りは、かつては聖堂騎士達が人身御供として身を投じた組織。
彼らには不名誉な戦いに臨む前に、己の真名を教会に預ける習わしがあった。
魔女狩りに伴う穢れを浴びるのは「己ではない」名前である、とする為に。

教会に預けた名が返還されるのは、魔女狩りとしての生を終えた時だ。
浴び続けた穢れは仮の名前と共に葬り、神とこの世の為に尽くし続けた徳は己の真名の勲章とする。
そうする事で、聖堂騎士達は神の国へと召し上げられる。
誰しもがその事を信じていた訳ではないが――それでも建前が必要だったのだ。
神に尽くす筈だった人生を、非道に堕とすには、それなりの建前が。

『グランドネーム』とは地を這う為の名前であり――下界で生きる際の仮の名前、という意味だった。
もっとも、信心など持ち合わせていなくても仮名の使用は呪い対策に有効だ。
正式な儀式を介して与えられた二つ名は、それ自体が一つの形容魔法としても機能する。
故に現代の異端審問所にも、その風習は残されていた。

「……少なくとも、正面から仕掛けるのは無しだ。
 商談の時に、最強の護衛を引き連れてこない悪党はいない。俺は博打は嫌いだ」

ヴィクトルは立ち上がると同時にそう言った。

「だからまずは……」

そして、魔女を見る。

「やっぱりお前は処刑する事にするか」

129 : ◆xAR6oa9/33KJ :2015/12/06(日) 00:29:34.55 0
「……おい、そろそろ俺達は引き上げるぞ」

ふと、ヴィクトルが崩落した柱や屋根の下敷きになった大男へ声をかけた。
返事は、ない。

「……マジでくたばりやがったのか?」

やはり、返事はない。
ヴィクトルは小さく鼻を鳴らした。

「……すぐ死ぬ奴は嫌いだぜ。面白くねえ」



ヴィクトルは街の新聞社と公示人、演説家を用いて街中に噂を流させた。
街に混乱と怠惰を齎した魔女が捕縛され、その罪の重さから街の中央広場にて公開処刑にされる。
その無様な最期を衆目に晒すべく、処刑は翌日明朝に執行される、と。

公示人は識字率の高くない王国内で主に公報の流布を務める職。
演説家は政治家や企業の主張を広く民衆へ膾炙させる為の職業である。
つまり――新聞社も含め、街の支配を盤石にする為には絶対に押さえておくべき存在だ。
間違いなく地上げ屋の息が掛かっているとヴィクトルは踏んだ。

中央広場には街の消防隊に組み上げさせた仮説の処刑台。
そこに磔にされているのは――魔女ではない。
魔女を騙す事に失敗し、頭を射抜かれた冒険者の死体だ。
魔笛の少女がより適した魔物を召喚出来ると言うのなら、そっちになるかもしれないが。

目深にローブを着せてしまえば、暗がりでは容姿は確認出来ない。
水鏡の魔法を顔に被せて容姿を欺瞞する事も可能だ。
死臭も、ハーブ売りの魔女という事になっているのだ。ハーブで誤魔化してしまえばいい。

「人間、降って湧いた得には疑って掛かる……が、降って湧いた損は疑わない。
 遮二無二、形振り構わず潰しにかかってくる」

ヴィクトルは中央広場を、周囲の建物の屋根の上から見張っていた。

「まずは……善意の協力を募るとしよう」

130 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/06(日) 22:54:04.45 0
>「美味しい」

そのリタリンの声にラウテは微笑んだ。同じものを食べるというのは気分の良いものだ。
話の途中でもあったのか、性急に口に放り込んでしまうリタリンに対し、ラウテはのんびりとシミットを食べる。
傷も癒えお腹も満たされたリタリンは元気そうだ。敵だった相手とはいえ、勝負が付いてしまえば負の感情はない。
それに、これからヴィクトルが何をするつもりなのかは察していた。リタリンを「仲間」にするのだと。
人という存在そのものを憎みながらも、不幸な者に対して憎しみを持てないヴィクトルの性格を、ラウテは微笑ましく思う。
ラウテは困った人に手を差し伸べてやった経験はほとんどない。だが、その暖かさは知っている。
彼女の両親がそうであったように、寄り添う人というものは暖かいものなのだ。
その懐かしさを噛み締めながら、ラウテはシミットの最後の一口を放り込んだ。

>「この街の裏を取り仕切ってるのはオメルタっていう地上げ屋でね。
> 元々は不動産を取り扱う商会の親分だったんだけど、妹を市長の嫁に出してから特権濫用でやりたい放題。
> 強引な立ち退きからの土地転がしで種銭つくって、違法薬物から奴隷商まで法の外にあるものは片っ端からね。
> この街のお店は――あの酒場ももちろん――全部連中の傘下と思っていいわ」

「つまり、冒険者協会にも強い繋がりがある……ってこと?」

>「連中、護衛に冒険者をしこたま雇っているのよ。調べがついてるだけでも協会認定の乙種冒険者が十人弱。
> あとこれは未確定だけど、

131 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/06(日) 22:55:48.07 0
> あとこれは未確定だけど、"甲種"までいるって話も聞いたことがあるわ」

「甲種……一筋縄では勝てないね」

ラウテは幼く経験も浅いが、その実力を買われて乙種冒険者として登録されている。
乙種ともなると危険な仕事も多いが、それでも儲けは十分にあるため良い仕事になる。
多人数による大型魔獣の駆除など、バックアップを必要とする仕事を主に引き受けているラウテだ。
実力を積み、やがては巨大な魔獣を一人で狩れるようになるのが当面の目標だったりする。
正直なところ、ラウテの使役出来る魔獣はあまり役に立たないものが多い。
多人数による魔獣狩りでは抜け駆けする訳にも行かず、屈服の条件にもそぐわない。
魔獣はとにかく屈服させて契約を結ぶ必要があり、それはあまり人に見せたくもない。
なので今手元にいる魔獣は全て、ラウテが一人で狩れる程度の強さでしかないのだ。

>「名前も教えてもらってないじゃない。
> あぁー安心して、呪いに使ったりしないから」

「…ラウテ、ラウテ・パユだよ。よろしくリタリン」

それから夜を徹して、彼らは街の情報筋に偽の情報を流して行くことになった。
流すのは魔女の処刑が翌朝開かれるという事。
処刑というものは、案外それを見に来るギャラリーが多かったりする。
見ず知らずの他人が処刑される様を見て、一体何が楽しいのかラウテには分からない。
処刑をするなら自らが手を下すから楽しいのではないかと、彼女はそう考えていた。

132 :ラウテ ◆uUre4dQFyk :2015/12/06(日) 22:56:58.41 0
そして翌朝、街の中央広場にはたくさんの観衆が狙い通り集まっていた。
広場の一角には観覧席まで設けられ、そこを出入りする数人の人影も確認出来る。
そして広場の中央に据えられた処刑台に括り付けられた、リタリンの偽の死体。
昨晩リタリンに買われてラウテたちを襲撃したうちの一人である。
ラウテはそれが死体だと悟られぬよう、死体にある仕掛けを施していた。

……ゾンビ虫、それがラウテの使役した魔物だ。
生死を問わず人間の体に進入し、脳を食い荒らしてゾンビに変えてしまうのが特徴である。
ゾンビと化した人間は他の人間を襲うようになり、その過程でゾンビ虫は繁殖する。
ゾンビを倒すだけで簡単に使役出来る魔物のため、あまり役には立たないが大量に飼っている。
倒した魔物や魔獣はとにかく使役する、それがラウテならではの考え方だった。
ゾンビと言うだけあって、うめき声を上げながらのろのろと動く事しか出来ないが、縄で括られた状態なら疑われる心配も少ない。
ちなみに討伐手段はとにかく頭部を破壊すること。腕や足をいくら落とそうが意味はない。

ラウテは見晴らしの良い屋根の上で、ゾンビを操るために魔笛を奏でていた。
もちろん観衆には聞こえないよう、独特の調整を施した上でだ。
必要な命令を送り終えたラウテは、その横で広場を見下ろすヴィクトルに尋ねる。

「…処刑されるまでもがくようにしたよ。それで、これからどうするの?」

広場には人が集まり、騒ぎに乗じて観覧席を襲撃するのは容易いだろう。
だが、警備を破るのは難しいと思われる。下手をすれば指名手配を受ける恐れさえある。
殺るならば誰にも見つからないようにすべきだとラウテは思う。
否、おそらくヴィクトルは襲撃を狙っているのではないと感じた。
騒ぎに乗じて相手にこの処刑を潰させる気だろうか? 確かにリタリンは、彼らも欲している人材だ。
細かい作戦までは察することは出来ないが、おそらくヴィクトルは何かを狙っていると感じた。

とりあえずラウテは今回狙うべき相手、オメルタという人物を望遠鏡で観察する事にした。
眼下に見下ろすオメルタは、歳は50前だろうか。動きの鈍そうな小太りの男だ。
いかにも悪党という面構えに、ラウテは嫌悪感すら覚えた。
その周りには屈強な男たちが囲うように周囲を見張っている。
おそらく雇っている冒険者とは彼らに違いない。しかし、どの男も凡百に見える。

「甲種冒険者……いないみたいだね、隠れてるのかな?」

こんな騒がしい中だ、身を隠すだけなら容易いだろう。こちらも群集に紛れられたら見付けようもない。
優秀なSPは、周囲に悟られぬよう対象を守る事が出来ると聞く。相手もそうなのだろうか?

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